ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の労働組合は2024年12月2日、ドイツ全土でストライキを実施した。同社初の国内工場閉鎖や給与カットを含む経費削減計画の撤回を要求。交渉担当者は「必要なら、これまでに見たことのない厳しい争議になる」と警告している。 労組によれば、中部ウォルフスブルクの本社工場を含む計9工場で時限ストを実施し、集会やデモを行う。労使協議は3回開かれたが、進展していない。
「ビートル」や「ゴルフ」といった人気の車を開発してグローバル企業へと成長。
2010年代以降はトヨタと生産台数で世界1位を競ってきたフォルクスワーゲンで何が?
フォルクスワーゲンは、2024年9月上旬、ヨーロッパ市場の需要の落ち込みや中国のEVメーカーとの激しい競争に勝ち抜くには大規模なコスト削減が必要だと発表。創業以来初めてとなる国内工場の閉鎖も検討し、ドイツ国内の6つの主要な工場で働く12万人の従業員の雇用を保障する協定も破棄。会社が今後も成長し続けるために従業員が大規模な人件費の削減を受け入れるよう迫っている。
これまでフォルクスワーゲンにとって中国は売り上げの多くを占めるいわゆる「ドル箱」の市場だった。ところが、その中国ではBYDなどのEVが急速にシェアを伸ばし、VW車の売れ行きが鈍っている。そして、急成長した中国のEVメーカーは低価格を売りにヨーロッパの市場にも攻勢を強め、中国だけでなく、おひざ元のヨーロッパ市場でも中国のEVメーカーとの価格競争を迫られるフォルクスワーゲン。
これまで中国からドイツのウォルフスブルク(=フォルクスワーゲンの本社)には多額の利益が送金されてきたが、競争相手(=中国メーカー)が中国内で販売シェアを拡大した結果、中国での売り上げが減少、それにより全社的最終利益が大きく減少し、ヨーロッパでの車の生産コストを減らさざるを得なくなったと説明されている。
フォルクスワーゲンは中国のEVメーカーとの競争だけではなく、ロシアのウクライナ侵攻後、ロシアからドイツへの安価な天然ガスの供給が途絶えたことによるエネルギー価格の高騰や割高な人件費という構造的な課題も抱えている。つまり問題の背景は、ドイツ経済を支えてきた中国などへの輸出の不振やエネルギー価格の高騰で、これまでのドイツの成長モデルが上手くいかなくなった結果だ。フォルクスワーゲンの苦境はドイツ経済の「映し鏡」ともいえる状況で、この苦境はほかのドイツ企業も陥る可能性があるとされる。ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、ヨーロッパ最大の経済大国ドイツ経済の減速はほかの国への波及や、政治の不安定化にもつながり、ドイツだけの問題にとどまらなくなりそうだ。参照記事 参照記事
ドイツ・フォルクスワーゲン(VW)のオリバー・ブルーメOliver Blume最高経営責任者(2022年9月よりCEO就任:ポルシェAGのCEO・会長は続投/56歳)は12月4日、労働組合が主催する本社の職場集会に出席した。独国内の工場閉鎖を回避する代わりに従業員の賃上げ反映を延期する労組の対案について「議論の出発点にはなるが、会社の将来を保証するのにはほど遠い。不十分だ」と否定的に語った。参照記事
「ビートル」や「ゴルフ」といった人気の車を開発してグローバル企業へと成長。
2010年代以降はトヨタと生産台数で世界1位を競ってきたフォルクスワーゲンで何が?
フォルクスワーゲンは、2024年9月上旬、ヨーロッパ市場の需要の落ち込みや中国のEVメーカーとの激しい競争に勝ち抜くには大規模なコスト削減が必要だと発表。創業以来初めてとなる国内工場の閉鎖も検討し、ドイツ国内の6つの主要な工場で働く12万人の従業員の雇用を保障する協定も破棄。会社が今後も成長し続けるために従業員が大規模な人件費の削減を受け入れるよう迫っている。
これまでフォルクスワーゲンにとって中国は売り上げの多くを占めるいわゆる「ドル箱」の市場だった。ところが、その中国ではBYDなどのEVが急速にシェアを伸ばし、VW車の売れ行きが鈍っている。そして、急成長した中国のEVメーカーは低価格を売りにヨーロッパの市場にも攻勢を強め、中国だけでなく、おひざ元のヨーロッパ市場でも中国のEVメーカーとの価格競争を迫られるフォルクスワーゲン。
これまで中国からドイツのウォルフスブルク(=フォルクスワーゲンの本社)には多額の利益が送金されてきたが、競争相手(=中国メーカー)が中国内で販売シェアを拡大した結果、中国での売り上げが減少、それにより全社的最終利益が大きく減少し、ヨーロッパでの車の生産コストを減らさざるを得なくなったと説明されている。
フォルクスワーゲンは中国のEVメーカーとの競争だけではなく、ロシアのウクライナ侵攻後、ロシアからドイツへの安価な天然ガスの供給が途絶えたことによるエネルギー価格の高騰や割高な人件費という構造的な課題も抱えている。つまり問題の背景は、ドイツ経済を支えてきた中国などへの輸出の不振やエネルギー価格の高騰で、これまでのドイツの成長モデルが上手くいかなくなった結果だ。フォルクスワーゲンの苦境はドイツ経済の「映し鏡」ともいえる状況で、この苦境はほかのドイツ企業も陥る可能性があるとされる。ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、ヨーロッパ最大の経済大国ドイツ経済の減速はほかの国への波及や、政治の不安定化にもつながり、ドイツだけの問題にとどまらなくなりそうだ。参照記事 参照記事
ドイツ・フォルクスワーゲン(VW)のオリバー・ブルーメOliver Blume最高経営責任者(2022年9月よりCEO就任:ポルシェAGのCEO・会長は続投/56歳)は12月4日、労働組合が主催する本社の職場集会に出席した。独国内の工場閉鎖を回避する代わりに従業員の賃上げ反映を延期する労組の対案について「議論の出発点にはなるが、会社の将来を保証するのにはほど遠い。不十分だ」と否定的に語った。参照記事