
この研究チームは革新的な技術を用い、約6600万年前、現在のメキシコ・ユカタン半島(Yucatan Peninsula)沖に衝突し、地球史上最も直近の大量絶滅を引き起こした破滅的な天体が、木星軌道の外側に由来することを示した。チームはまた、チチュルブ(チクシュルーブ)衝突体が彗星(すいせい)だったという見解を否定している。
論文の主著者で独ケルン大学(University of Cologne)の地球化学者マリオ・フィッシャーゴッデ(フィッシャー=ゲッデ Mario Fischer-Godde)氏はAFPに対し、「今やこれらの知識に基づき、この小惑星が形成されたのは木星(軌道)の外側だということができる」と語った。
■サンプル:新しい発見は、中生代白亜紀と新生代古第三紀の間の時期に形成された堆積物サンプルの分析に基づいている。この時期は、チチュルブ衝突の影響で生物が大量絶滅したK-Pg境界に相当する。(日本では、北海道十勝郡浦幌町上浦幌・川流布(カワルップ)地区の道有林内を流れる茂川流布(モカワルップ)川に、6600万年前の古第三紀/白亜紀の境目地層「K/Pg境界」があり、この地層が見られるのは、東アジアでは浦幌町だけです。参照記事:写真左 因みに筆者が考古学少年時代を過ごした町で、記事のK/Pg境界で、すぐに思い出した。この地層、多くは地下深くに在り、隆起により地上で目視できるは非常に稀だ。)
研究チームは、ルテニウムという元素の同位体Ruthenium isotopeを測定した。ルテニウムは小惑星では珍しくないが、地球では非常にまれな元素だ。チチュルブ衝突によるがれきが堆積した幾つもの地層を調査したところ、検出されたルテニウムは「100%、この小惑星に由来する」ことが確認できた。小惑星の主要なグループには、太陽系の外側(小惑星帯を超えた、木星、土星、天王星、海王星を含む領域:外太陽系)で形成され、炭素を多く含む「C型小惑星」と、太陽系の内側(太陽に近い水星、金星、地球、火星から小惑星帯までの領域:内太陽系)で形成され、ケイ酸鉄やケイ酸マグネシウムなどの石質の物質を主成分とするケイ酸塩を多く含む「S型小惑星」があるが、ルテニウム同位体はこの二つを区別するために使用することができる。参考:太陽系の歴史ひもとく地下物質分析と小惑星:
直径10~14kmもある巨大な小惑星のチチュルブ衝突は巨大地震を引き起こし、地球規模の冬をもたらし、恐竜や他の多くの生命体を絶滅させたが、今回の研究はその原因となった天体が、木星の外側で形成された外太陽系「C型小惑星」だったことを確認する結果となった。
20年前の研究でもそうした仮説は立てられていたが、当時は現在よりもはるかに確実性が低かった。 フィッシャーゴッデ氏によると、地球に落下する小惑星の破片たる隕石(いんせき)のほとんどはS型小惑星のものであるため、この結論は非常に驚くべきものだと述べた。参照記事 参照記事:過去ブログ:2022年10月追記:隕石と恐竜絶滅:
幸いなことに、恐竜を絶滅させたような小惑星が地球に衝突するのは、1億年に1度程度とそうそう起こることではない。しかも時折地球のそばを通過する危険な小惑星は、すでに90%以上が発見されている。それらが今世紀に衝突する可能性はほぼなく、次の1000年で衝突する可能性もかなり低いと推定されている。
一方、直径140mクラスの小惑星なら、1万~2万年ごとに衝突している。もし起きれば、その地域が壊滅的な打撃を受けるのは確かだ。それでも比較的最近、NASAは地球に飛来する小惑星のコースをそらす実験に成功している。 まだ改善の余地がある技術だが、いつか現実になるかもしれない危機から地球を守ってくれるはず。今はそう願おう。参照記事