pan-sahel-mapウクライナ戦争とガザ戦争が既存の国際秩序に与えた波紋が、アフリカを揺るがしている。ウクライナ戦争に余念がないはずのロシアがアフリカで勢力を拡大し、ロシアを封じ込めようとFireShot Webpage Screenshot #1322 - 'アフリカの巨大する米国は守勢に追い込まれている。ブラックアフリカの入口であるサヘル地域Sahel region(東西方向に帯状に区切るサハラ砂漠の南側の周辺地帯)がその舞台だ。左、サヘル地域とイスラム主義武装勢力活動地域 

■ウクライナ戦争の状況下でも勢力拡大:米国とニジェールNigerは先月2024年5月19日、ニジェールに駐留する米軍を9月15日までに撤収することで合意した声明を発表した。昨年クーデターで政権を取ったニジェール軍事政権はすでに、旧植民宗主国のフランス軍の撤収を命じ、ロシア側に接近していた。ロシア軍は首都ニアメの国際空港である101空軍基地に配置され、米軍とこの基地を共有する前代未聞の事態が生じている。米国のロイド・オースティン国防長官は「ロシア軍は別の兵営におり、米軍もその施設に接近できない」とし、ロシア軍は米軍に「危険」を及ぼすことはないと言いつつ、当惑している状況を説明した。

171745448264_20240604ニジェールで米軍の駐留規模は1000人ほどだといわれている。米軍は駐留を続けようとしたが、ニジェール軍事政権は2024年3月、すべての米軍の撤収を命じた。軍事政権のアマドゥ・アブドラマン報道官は、ニジェールが選択した同盟に米国が反対を提起したとして非難した。昨年7月にニジェールでクーデターが起きた後、軍事政権はフランス軍に撤収を命じ、ロシアと密着するようになった。米国がニジェールとロシアの密着に反対したことで、ニジェール軍事政権が米軍の撤収を命じたのだ。写真;2024年4月21日(現地時間)ニジェールのアガデスで市民(?)が米軍撤収を要求するデモを行っている。

88b8ac99kh 今年初めのロイターの報道によると、ニジェールには60人ほどのロシアの軍事訓練要員が配置されている。29846782最近はその数がさらに増えたと推定される。ロシア正規軍に先立ち、ロシアの傭兵であるワグネル(Wagner)隊員は、ニジェールだけでなくマリMaliなどの各地に1000人あまりも配置され、対テロ戦を遂行している。中央アフリカでも確認されている。過去ブログ:2023年7月ワグネルの予定所在基地?をBBCが取材とアフリカ利権

 中東のシリアやイラクなどの東地中海沿岸地域で敗退したイスラム国(IS)やアルカイダなどのイスラム主義武装勢力にとって、サヘル地域は新たな中心地として浮上した。イスラム教徒が多いうえに、政府の統制力が及ばない地域が広大なためだ。ここでフランスと協力して対テロ戦争を遂行する米国にとって、ニジェールは最も重要な国だ。ニジェールはイスラム主義武装勢力の根源であるリビアと北に国境を接し、西アフリカの中心国家であり豊富な資源を持つナイジェリアNigeriaと南に国境を接するためだ。参照記事:追い出される米国、押し寄せるロシア…揺らぐアフリカ: 過去ブログ:2024年2月アフリカ西部、今もイスラム過激派の殺戮続く:2023年9月国連のマリ制裁延長、ロシアの拒否権で否決、中国棄権

ECOWAS米国としては当惑させられる事態の展開に違いない。イスラム主義武装勢力の拡大を阻止する米軍の撤収によって起こる力の空白を、ウクライナ戦争における米国の敵性国であるロシアが埋めているからだ。昨年ニジェールでクーデターが発生した後、西側諸国が支援する西アフリカ15カ国の地域機構「西アフリカ諸国経済共同体」(ECOWAS)は、加盟国ニジェールの軍部が憲政秩序を復旧しなければ武力介入すると警告した。しかし、ニジェール軍部はこれを一蹴し、むしろワグネルの傭兵を呼び入れるなどしてロシアに接近する逆風が吹いた。ECOWASの脅しに対し、軍事政権が成立したマリ、ブルキナファソ、ニジェール(図の赤い囲み)は昨2023年9月16日に同盟を結成し、反西側に歩み始めた。

Screenshot米国は西アフリカのサヘルでロシアの進出に対して防衛ラインを張るなどして、周辺の取り締まりに乗り出している。米国のジョー・バイデン大統領は先月5月23日、東アフリカの中心国家ケニアのウィリアム・ルト大統領をホワイトハウスに招き、ケニアをブラックアフリカ諸国では初めて「主要な非NATO同盟国」に指定した。アフリカ諸国の指導者が米国を国賓訪問したのは、15年ぶりのことだ。過去ブログ:2024年5月アフリカ東部の“アフリカの角”各国で状況悪化:2023年1月米バイデン政権が、イスラム過激派へ積極的攻撃に出る

ウクライナ戦争に続くガザ戦争は、各地で米国が主導する国際秩序と中ロが意図する多極化秩序が衝突と対決を繰り広げる「グレート・ゲーム」を目撃させ、アフリカでは、中国が巨大経済圏構想「一帯一路」を通じて影響力を広げているほか、西アフリカのマリ、ブルキナファソ、ニジェールでは2020年以降にクーデターが相次ぎ、実権を握った軍政がロシアとの関係を強めているとされる。とりわけ米国がこの地域でのイスラム過激派対策の拠点としてきたニジェールからは、2024年9月15日までに駐留する米軍約1000人が撤収することが決まっており、対テロ作戦の見直しが急務になっている。参照記事 参照記事 過去ブログ:2024年5月中央アフリカで中国企業運営の金鉱山をイスラム組織が襲撃とワグネル

3fc217a4547183af、、、、武器や支援がほしい軍事政権と、資源、同盟国がほしい中露のアフリカでの思惑が合致した結果、対応が中途半端な米国が居場所を失っている。米のケニア接近は、アフリカ東部、ケニアの隣国ソマリアに居るアルカイダ系過激派アル・シャバブThe al Qaeda-linked al Shabaab group対策か。過去ブログ:2023年1月米バイデン政権が、イスラム過激派へ積極的攻撃に出る

0dbf21bbアフリカに関して、大国の軍事覇権が話題になるが、中露に代表される資源獲得によるアフリカへの覇権に注目すべきだろう。これは合法的であるが、結果的に、その利権を狙う軍事政権、さらにそれを狙う過激組織の発生を招いている。同じようなことは世界中で起きており、テロ組織は国際的な反発を回避するために、敢えてイスラム主義や宗教組織である事を利用しているように見える。テロ組織の蛮行を黙認し、人命尊重や人権に疎(うと)いイスラム世界にも責任の一端が在ると筆者は思っている。 過去ブログ:2023年7月ワグネルの予定所在基地?をBBCが取材とアフリカ利権



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