e8f311ed2022年2月にロシアがウクライナに対する全面侵略を始めた数カ月後、フィンランドとスウェーデンはNATOへの加盟を申請した。フィンランドの加盟はわりとスムーズに進んだが、スウェーデンに関してはクルド人武装勢力をかくまっているとトルコが問題視してきたため、進捗が滞っていた。そのスウェーデンも2024年3月7日、正式に北大西洋条約機構(NATO)の32番目の加盟国となった。過去ブログ:2024年2月スウェーデンのNATO加盟が決定と周辺国、カリーニングラード
7b9138f3フィンランドの加盟によって、その現役兵2万4000人、軍用機100機、多数の艦船がNATOに加わった。スウェーデンの加盟で、さらに現役兵1万5000人、フィンランドとほぼ同規模の軍用機や艦船が加わることになった。
もっとも、NATOはすでに350万人規模の兵力を有するので、兵士の増加はそれほど重要ではない。それよりも重要なのは、地理的な変化だろう。51be0bbbフィンランドとスウェーデンの加盟によって、NATOの防衛範囲は約1300キロメートルにおよぶフィンランドとロシアの陸上国境沿いと、バルト海をほぼ取り囲むエリアに広がるからだ。とくに重要なのはバルト海の囲い込みのほうだ。NATO加盟国で最も攻撃を受けやすいラトビア、リトアニア、エストニアの3カ国は、ロシアと、その飛び地であるカリーニングラード人口約49万人2021年、Kaliningrad)に挟まれたかたちになっている。

フィンランドとスウェーデンの加盟によって、NATOはバルト3国の北方に多くの航空基地や港湾、補給線を確保できるようになる。
95c4f03992ec5591これはつまり、3国がロシアの攻撃を受けた場合に、NATOは迅速な増援をしやすくなるということだ。米外交問題評議会(CFR)はリポートで「NATOはバルト3国を防衛するために、フィンランドとスウェーデンに基地を置く権利を必要とするのはほぼ確実」とする西側軍事アナリストの見方を紹介している。参照記事 、、、恐らく、空軍基地はスウェーデン、地上基地はフィンランドになるのでは、、。 過去ブログ:2024年3月孤立する独裁国家ベラルーシ リトアニアは検問所閉鎖:2月フィンランド新大統領は対ロシア強硬派:2023年12月フィンランドがウクライナへの火砲弾薬生産量を増加計画:9月ロシアがフィンランド国境沿い北極圏の駐屯地増強:、、、、左図は、最近ロシアが強化したと言われるフィンランドに近い軍事基地とフィンランド側国境検問所。ほとんどが閉鎖状態。

3887a73d hgyスウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)加盟によって、バルト海Baltic Seaのほぼ全域が「NATOの海 Nato lake」と化し、バルト三国の防衛・抑止態勢も大幅に強化される見通しとなった。また、既加盟のノルウェー、デンマークに両国を加えた北欧4国がそろったことで、NATOは北欧~北極圏一帯を防衛する切れ目のない態勢を手にしたことになる。欧州の安全保障環境を大きく変える歴史的決定というだけではない。
FireShot Webpage Screenshot #776 - 'New shiとりわけ重要とされるのは、ロシアが戦略的に重視するバルト海が加盟国で包囲された「NATOの海」となることだ。これまでロシア海軍はバルト海に臨むサンクトペテルブルクSt. Petersburgと飛び地カリーニングラードKaliningradの2カ所に基地を持ち、バルト海経由で北大西洋へ向かう戦略拠点としてきた。
7806c8ff海底にはNATO加盟諸国の生命線ともいえる通信ケーブルや天然ガスパイプラインも多く敷設されている。その実情を熟知して国防に生かしてきたスウェーデンとフィンランドの加盟によって、加盟国全体の戦略的インフラの保全と防護態勢の飛躍的向上が期待されている。当然ながら、バルト海の制海・制空権も確保されることになり、ロシア軍の動向を海と空から監視する警戒・探査が拡充される。過去ブログ:2022年5月フィンランド、スウェーデンの戦力とウクライナ戦況:2021年1月フィンランドで予備役兵用に韓国製自動ライフル採用と日本
すでに米国は昨年末、両国との間でそれぞれ防衛協力協定を結び、米軍が両国の海・空軍基地を使用したり、有事に備えて米軍の武器や装備(核を除く)を備蓄したりできるようになり、北欧4国の空軍は既に昨2023年3月、防空態勢の連携強化を図る方針で合意した。
https _d1e00ek4eba米、英、仏、独などNATO主要国の首脳も一様にスウェーデンの加盟を歓迎、祝福している。すぐれた国産兵器の提供や地政学的優位、戦略要衝の確保などを通して、スウェーデンの国防専門家は「FireShot Webpage Screenshot #777 - 'New ship-スウェーデンの加盟は、NATOの抑止と防衛態勢の増強に大いに役立つだろう」と指摘している。 
今後、スウェーデンを軸とするNATOの多国籍部隊が編成され、バルト海のゴットランド島〈Gotland〉を拠点に海・空両面でバルト三国に支援部隊や救援物資を急速かつ安定して供給できるようになると期待されている。参照記事 英文記事 

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