
1. クリミア半島西海岸:25キロメートルにわたる海岸線Crimea's west coastにはいま、折り畳み椅子やパラソルではなく、ロシア軍が設置した防衛

海岸沿いに「竜の歯」と呼ばれるピラミッド形のコンクリートブロックがあるのが分かる。戦車などの軍用車両の前進を阻むのが狙いだ。その背後には塹壕が連なっており、迫りくる攻撃から身を守るのに使われる。塹壕沿いに、いくつかの格納施設も確認できる。
海岸に沿って、木材の山、掘削機、「竜の歯」の予備などがある。画像が撮影された3月には、建設作業がまだ行われていたことがうかがえる。軍事専門家の一部はロシアのこうした守備について、海からの攻撃を想定したものではなく、どちらかというと念のための措置である可能性が高いと指摘する。ウクライナは海軍力が低いからだ。
2. トクマク:トクマクTokmakは、ウクライナ南東部の主要道路が通る小さな街だ。ウクライナ軍にとっては、クリミアと他のロシア支配地域を分断させるうえで有用な場所だろう。この街に関しては、軍事要塞にするためにウクライナ人住民らを追い出していると報じられている。そうすることで、ロシア兵は物資と退却基地を得ることができる。
右の衛星画像では、トクマクの北側に塹壕が2本の線状に掘られているのが分かる。ウクライナの攻撃が予想される方向だ。これらの塹壕の背後では、街を囲むように要塞が配置されている。下の拡大した衛星画像では、守備が3層になっているのがはっきりと見て取れる。米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)のマーク・カンシアン氏は、トクマクの3層の防衛線の間には地雷が隠されている可能性が高いと言う。「地雷原はすべての防衛で標準となっている。ロシアはこの戦争で、広い範囲で地雷を使っている」
3. 幹線道路E105号線:トクマク Tokmakの西では35キロメートルにわたって続く幹線道路E105号線に沿って、対戦車の溝と塹壕が延びている。E105号線は、ロシアが掌握している南部メリトポリmelitopolと、ウクライナが保持している北部ハルキウKharkiv(ハリコフKharkov)を結ぶ、戦略的に重要な道路だ。これを押さえた側は、一帯で部隊を容易に移動できる。
もしウクライナ軍がこの道路を使おうとすれば、ロシアは防衛線の後ろから重砲で狙ってくる可能性が高い。ロシアの砲撃拠点は、近くの別の道路(T401号線)も射程内に収めており、こちらも狙ってくる可能性がある。「ロシアは、最近作られたウクライナの装甲部隊を気にかけている。もしそれらの部隊が幹線道路を走ることができれば、非常に迅速に移動できる」とCSISのカンシアン氏は言う。
4. マリウポリの北のリヴノピリ:港湾都市マリウポリは、東部のロシア占領地域と南部のクリミアを結ぶ戦略的な位置にある。また、街が包囲され、頑強な兵士らが数カ月間持ちこたえた時には、侵攻に対する抵抗の象徴になった。
ロシアは、ウクライナがこの都市の奪還を試みるだろうと想定している。そこでBBCは、マリウポリの周辺地域を調査。その結果、マリウポリの北55キロメートルにあるリヴノピリRivnopilという小さな村の付近では、円を描くように掘られた塹壕がいくつもあるのを発見した。円形の塹壕は、兵士が身を隠すとともに、迫撃砲を移動させてどの方向に対しても狙いを定めるのを可能にしている。しかし、一部のアナリストらは、ウクライナ軍が同様の衛星画像やドローンによる監視を活用することで、これらの守備隊の多くを特定し回避できると指摘している。衛星画像からは守備の状況が一目瞭然だが、それもロシアの計画の一部なのかもしれない。参照記事 英文記事 過去ブログ:2023年5月ウクライナ軍 長距離巡航ミサイル「ストームシャドー」使用:4月ロシア、ウクライナの攻勢に備え南部併合地を要塞化?:、、、、これほど長い防衛ラインを兵員、弾薬不足のロシア軍が維持できるのかという疑問はあるが、攻守それぞれ作戦が在るのだろう。ウクライナの最終目的はクリミア半島の奪還と言われており、ウクライナ軍を引き寄せるために、現在ロシア軍は東部で攻勢に出ているとの見方も在り、送り込まれたロシア兵は囮(おとり)といえる。
クリミアは、国連総会決議により、「ロシアにより占領されているウクライナ領」と認定されている。左図は、2014年のクリミア強制併合時のロシア軍の軍事行動。表向きは「住民投票」によるロシアへの併合とされているが、軍事侵略なのは疑う余地がない。右は、国際法上の領海区分。 過去ブログ:2023年3月国際制裁無視の世界のならず者中国の武器輸出と狙い: