jkjh402px-EPR_OLK3_TVO_fotomont_2_Vogelperspektive「原子力の安全に対する取り組みで見るべき国がある」。福島第一原発事故の検証の取材を続ける中で専門家たちから名前が挙がった国は、人口およそ550万人の小さな国だった。北欧・フィンランド。“原子力大国”として知られるアメリカやフランスに先駆けて新型(次世代、第三世代)原子炉「EPR:Evolutionary Power Reactor,European Pressurized Water Reactor 欧州加圧水型炉」の建設にも着手した。以下、NHK現地ルポ「フィンランドで見た「原発」との向き合い方 プロジェクトセンター笹川 陽一朗氏の取材レポートより抜粋、編集 右図、オルキルオト原子力発電所Olkiluoto Nuclear Power Plantのある、この島には、原発から出る放射性廃棄物を地下深くで保管する最終処分場「オンカロ Onkalo」が併設されている。過去ブログ:2023年1月1月フィンランド初のグリーン水素プラント着工と日本のガスタービン:2012年10月2025年までに石炭を止めるフィンランドとオンカロ

12年前に起きた、東京電力福島第一原発事故、、その後の
世界に目を向ければ、日本に先駆けて、「新型炉」と言われる原発の建設が各国で行われている。その一つが「EPR(ヨーロッパ加圧水型原子炉)」と呼ばれる原子炉。最初に着工したのは2005年のフィンランドだった。国の電力需要の3分の1以上を原発で賄っているフィンランド。現在、70年代から80年代にかけて運転を開始した4基の原発が稼働している。
K10014013941_2303201618_0320164145_01_06同国では1986年に起きたチェルノブイリ(チョルノービリ)原発事故の後、10年以上は原子力に対する否定派が多かったが、この数年でさらに肯定派の割合は増加し、最新の世論調査では、肯定派は60%に達する一方、否定派は10%程度にとどまっている。
K10014013941_2303201548_0320155241_01_06オルキルオト島Olkiluoto に建設された新型炉「EPR」は、ヘルシンキから、西へ直線距離で220kmあまりに在り、この距離は実は東京から福島第一原発までの距離とほぼ同じである。
FireShot Webpage Screenshot #708 - 'フィンラEPR最大の特徴は、安全設計にある。航空機落下にも耐えられるとする格納容器、さらに、「メルトダウン」した核燃料が原子炉を突き破ることを前提に、それに対応する装置として「コアキャッチャー」を設置した。EPRでは、原子炉の底から溶け落ちた核燃料は、緑色の部分の高い耐熱性を備えた道を通り、その先の部屋に誘導される。その後、大量に注がれた水が循環。上からも下からも核燃料を冷却する。その結果、格納容器の圧力上昇を抑え、放射性物質を内部に閉じ込める狙いだ。最大の特徴は、これら一連のシステムが、人の判断や電気を必要とせず、重力などの自然現象を利用し、自動で動く設計だ。事故が起きた際、運転員など人が対応できない事態に陥ることがあるという前提にたって作られている。
核燃料が溶ける事態。これは原子力の分野では「シビアアクシデント」という。この事態に対する備え方が、福島第一原発事故にいたる前から、日本とは大きく違っていた。日本ではシビアアクシデント対策は電力会社の自主対策に委ねられ、規制機関の審査事項ではなかった。
一方のフィンランドでは、スリーマイル島原発事故(1979年・アメリカ)を受けて、3年後には規制機関からシビアアクシデントに対する規制要件が出されていた。「YVL」と呼ばれるSTUKが作成した規制基準の中に、事故が起こった際の放射性物質の総放出量の規制も定められ、さらに、放射性物質の大量放出に至る発生確率も低く抑えるように要求している。この法律は1991年にすでに施行されていた。チョルノービリ(チェルノブイリ:1986年・旧ソビエト、現ウクライナ)原発事故の5年後である。
これらの要求はすでに稼働している、いわば“古い”原発に対しても、こうした基準を達成する努力を継続的に行うよう求めている。フィンランド南部にあるロヴィーサ原発。福島第一原発と同じく1970年代に運転を開始した。
この原発は旧ソビエトの設計。フィンランドの原発の規制を担うSTUK(放射線・原子力安全センター)は放射性物質を閉じ込めるための格納容器に脆弱性があると指摘した。しかし、巨大な構造物である格納容器の改修は容易ではない。
K10014013941_2303201842_0320184408_01_13それでも電力会社は、大規模な改修を決断。数十億円を投じ、2003年にかけて工事を行った。原子炉の下半分をワインクーラーのように水に浸し、冷却。核燃料が溶けても原子炉から格納容器に漏らさない設計に変えた。
この斬新な設計はどこかの原発を参考にしたのかと尋ねると、「自分たちの発電所が世界で最初に取り入れた設計です。私たちはそれをとても誇りに思っています。その後、アメリカで開発された新しい原子炉FireShot Webpage Screenshot #709 - 'フィンラ(AP1000)にもこの設計が取り入れられました」と、Fortum社 原子力安全担当 ミカ・ハーティさんは述べた。
ロヴィーサ原発はIVR導入後も毎年対策を重ね、事故の発生確率がこの20年で30分の1に減少。しかし規制機関STUKは、現在の対策だけでは、決して十分だとは考えていないという。
K10014013941_2303201458_0320155241_01_14東京電力は2022年10月、このFortum社と原子力分野に係る情報交換協定を結んだ。Fortum社が持つ、設備の維持管理におけるリスク情報の活用や経年劣化の評価手法など、海外から得られた知見を踏まえ、原子力発電所の更なる安全性、信頼性の向上に努めたい、としている。
実は、EPRは建設のトラブルが続き、2005年に着工され、2009年には完成予定だった。建設費も当初の予定を大幅に上回り、18年の建設期間を経て、ようやく今年2023年営業運転開始をめざし、現在試験運転中だ。
、、、当ブログを遡(さかのぼ)れば、フィンランドは2012年9月には欧州で最初の脱石炭消費国を公表している。当時筆者は、そのブログの末尾に「国策という名で無知と放漫と無責任がまかり通る(日本の)行政は、いつになったら改善されるのか?」と書いている。過去ブログ:2012年10月2025年までに石炭を止めるフィンランドとオンカロ
一旦公共施設等が出来てしまうと、余程のことが無い限り改善も修繕も行なわない。小さなことでは、我が家の横にある大型車も通る鉄骨の小さな橋だ。錆が浮き、溶接部分が腐食し始めている。傷が浅いうちになぜ直さないのかと聞くと、大規模な修繕の必要が出て、予算がつくまでこのままだと言う。いまなら費用も少なく修繕でき、その結果、長持ちもするだろうに、、。時間がたてば危険度が増し、修理も大がかりになる。相変わらず非合理的な役所仕事だ。

nappi11 at 00:03│Comments(1) このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

1. Posted by 甲東   2023年03月22日 05:20
EPRの初号機は中国の台山原発1号機のはず。2018年末に動き出したが、2021年には燃料棒の破損で大揉め。1年後に再稼働とか。おー、怖。
フランスも建設が遅れごそごそしている。
設計思想的には東電の物よりずっと安全なんでしょう。きっと・・・願望。

コメントする

名前
メール
URL
絵文字