東レTorayは2023年3月17日、ドイツの100%子会社グリナリティ社(Greenerity GmbH:SolviCore GmbH&Co.KG=SolviCore社を買収し2015年に誕生した新会社)が、グリーン水素製造装置向け中核部材の生産を拡大すると発表した。
南部バイエルン州アルゼナウ(Alzenau)に水電解装置能力1ギガワット超の第3工場(左完成予想図)を設置し、触媒付き電解質膜(CCM:Catalyst Coated Membrane)の生産能力を3倍に拡大する。参考:2015年7月東レがドイツで燃料電社を買収
水素製造装置向け増産計画で は、電気分解で水素をつくる水電解装置の中核部品であるCCMの増産にも取り組む。水電解装置は再生可能エネルギーを使い、(CO2)を出さない「グリーン水素」を製造する際に使われる。水はCCMを通って電気分解され、水素と酸素に分かれる。東レは、2015年に買収したドイツ子会社の生産拠点に設備を新設し、東レは2023年にドイツ工場の生産能力を現在の3倍に引き上げ、この部材で50%以上の世界シェアを持つことを目指す。燃料電池車(FCV)の電池向け中核部材の増産も含めた投資額は100億円近くになると見られ、投資は世界的な脱炭素の流れを受けたグリーン水素の製造装置の需要増加に対応するためだ。
東レのドイツ子会社はCCMの先駆的企業であり、20年にわたり触媒技術とHC電解質膜研究開発に取り組み、触媒技術に強みを持つ。また東レは電解質膜:右 で主流のフッ素系膜より生産効率が高く、稼働時の安全性向上につながる炭化水素系(HC)電解質膜をすでに実用化している。ドイツで生産するCCMは現在はフッ素系膜を使うが、将来はすべて炭化水素系HC電解質膜に切り替えていく予定で、東レがこの分野で世界で最先端の位置に居る。
水素製造装置市場の拡大 国際エネルギー機関(IEA)によると、水電解装置の生産能力(消費電力ベース)は2021年に年約800万キロワット。2030年には6000万キロワット以上に伸びる見通し。
東レは、この急速に拡大する市場に対応するため、グリーン水素製造装置および水素製造装置向けのCCMの増産計画を進める。
グリーン水素は、太陽光発電など再生可能エネルギーを利用して製造されるため、CO2の排出量が極めて少なく、脱炭素社会の実現に向けた取り組みの一環として注目されている。参照記事 参照記事 参照記事 参照記事 参照記事 過去ブログ:2023年2月“排水から電気を作る”って?羽ばたけ日本の中小企業の技術!:1月フィンランド初のグリーン水素プラント着工と日本のガスタービン 2021年11月英国北部で進む再生可能エネルギーへの完全切り替え:10月水素エンジン車の技術実用化へ向かうトヨタとその理由: 参考映像記事:トヨタの水素燃料電池がヨーロッパで大人気!水素社会へ爆進!特許も解放