8cb07325-s91ec68b8-sマルコス大統領の訪中の後、中国海警局船が比漁船を威嚇する事態が2回発生した。最初は南沙諸島セカンドトーマス礁で、次にルソン島東沖のスカボロー礁だった。両礁とも、比の基線から200カイリの内側にあり、中国からは700カイリ離れている。それにもかかわらず、中国の武装船は比の民間船に対し、威嚇し、放水し、砲撃し、銃弾を浴びせようとする。
右の右図が、中国主張の領海で、国際的な200カイリを無視して一方的に九段線を引いて領海権拡大している。左は、南シナ海各国主張の領海で、フィリピンは緑色のライン。

screenshot(4)screenshot(7)2023年1月3~5日の訪中から帰国したマルコス大統領(前マルコス大統領長男)は「中国が比の漁業を止めないという合意に至った」と喧伝した。しかし、中国の威嚇を知るや、自信を失った様子で「中国側のカウンターパートがこの問題を習国家主席に報告することを期待する」とだけ述べた。

minamishinakai_hanketsu_2マルコス大統領は悟るべきだ。習近平は信用できない。中国は協定を破るのが常だ。相手の警戒心を解くために、見せかけだけの書類に署名する。そして、秘密裏に事を進める。習主席は陰謀渦巻く中国共産党のトップだと、マニラ新聞は書いている、、、中国はアセアン諸国と合意した、相互が南シナ海の平和維持に努力することの確認である「2002年南シナ海行動宣言」が在るにもかかわらず、南シナ海にある25カ所の岩礁や砂州を奪取、比のミスチーフ礁とベトナムのウッディー島を要塞化し、また2005~08年における比海底部の石油・鉱物の共同探査事業の結果を比に対し非公開にし、その調査結果を元に九段線を設定した。
こうした実効支配の拡大への試みだけでなく、中国は情報操作にも長けている。親中的なフィリピン国軍将校人事に影響を持つ中国人の存在にも注意せねばならない。参照記事

訪中前のマルコス大統領は中国批判を強めていたが、首脳会談では習近平国家主席に強い姿勢を直接示すことはなく、2国間のホットライン設置や友好的対話による協議の継続、海洋資源の開発再開などでの合意に留まった。
6129DC83-A6FC-48D1-8F74-F4526F0A7C31_w1023_r1_s南シナ海問題に関してマルコス大統領は首脳会談で「すでに抱えている問題以上の大きな誤解のきっかけとなる過ちを回避し、両国関係を前進させるために何ができるかを話し合った」と述べたが、この発言は南シナ海での中国による一方的な現状をフィリピンが追認したうえで、中国との間で新たな波風を立てることを避ける、という消極的姿勢の表明にほかならないと報道された。フィリピン船は、自国主張の領海内で、中国艦船に追い散らされ、放水され、当て逃げされているのが現状だ。 参照記事

中国外務省は「中国はフィリピンと協力して友好的協議を通じて海洋問題を適切に処理し続け、石油と天然ガスの探査に関する交渉を再開し、紛争のない地域での海洋資源探査に関する協力を促進する」との声明を発表し、マルコス大統領は大きな成果として、橋梁や洪水制御システムなどのインフラ整備に対して総額2億180万ドルの資金提供を受ける事で合意したと強調した。過去には、ドゥテルテ前大統領が、スカボロー礁に実効支配を拡大しないと約束した習近平国家主席を称賛した上で、「フィリピンを中国の一つの州にしよう。中華人民共和国、フィリピン州」と発言し国民のヒンシュクを買った事もあった。参照記事 、、、、フィリピンの政治家も軍人も、中国側の手練手管で丸め込まれている状況では、状況は悪化することは在って、改善など空(むな)しい夢だろう。台湾問題などをきっかけに、米中対立が険悪になれば、いづれ中立、まして中国寄りではいられなくなるのは明確で、フィリピンの将来に明るい兆しは見えない。尚、中国独自の領海に関して、2016年7月にオランダ・ハーグの国際常設仲裁裁判所(PCA:Permanent Court of Arbitration)の判決は、全員一致で南シナ海の大部分に対する中国の領有権主張を棄却している。過去ブログ:2020年7月見境なく他国の領土を紛争地化する中国の横暴と米中対立の先鋭化 2020年6月中国離れのインドネシア、海洋権益交渉も拒否 2019年5月乱獲と環境破壊が進む南シナ海、日本近海、南太平洋と中国 4月中国漁船の領海侵犯に「自爆部隊を送り込む」とフィリピン 2018年9月アジア開発銀行(ADB)がフィリピンへの融資決定 8月すでに中国に取り込まれたフィリピンの歯ぎしりが聞こえる 4月南シナ海で完成に近づく中国の環礁空母化とフィリピン  2014年9月領海問題で中国人襲撃相次ぐ 1名死亡 フィリピン  
  
2023年2月9日:マルコス大統領は1月4日に中国の習近平(シーチンピン)国家主席、オースティン米国防長官と相次いで会談。2月8日からは大統領として初めて訪日している。
0a01150f-40e5-4c65-b571-a7bdfce07f9bフィリピンのデラサール大学De La Salle Universityのレナート・デ・カストロRenato de Castro教授(フィリピン外交・安全保障):左 はインタビューで、「マルコス政権の外交政策は非常にナイーブです。「すべては友、敵はなし」。ただ、それが理にかなっているかは別問題です。、、マルコス氏はこれらの地域紛争に巻き込まれることを望んでいませんが、それは困難です。、、中国は(1月4日の会談で)再生可能エネルギーなど計228億ドル(約3兆円)の投資を約束しましたが、これもまだ見通せない部分があります。中国に融和的な政策を取ったドゥテルテ(Rodrigo Duterte)前政権時代にも中国は多額の投資を約束しましたが、実現したのはほんの一部です。それは「約束のわな」でした。たくさんの約束がありましたが、実際には多くの実質的な成果は生まれませんでした。、、」と述べた。参照記事 、、、ウクライナ戦争を機に、露、中、北朝鮮が侵略を肯定する悪の枢軸であることをフィリピンも認識すべきで、マルコス氏には、2022年以前と国際状況が大きく変わった認識が乏しいのだろう。国際的に制裁を受ける国に宥和であることは、国際信用を大きく失う。 
GettyImages-1246733987-1024x6812023年2月11日:フィリピンは、米国軍が東南アジアのフィリピンでの活動範囲を広げることを認める予定だ。これは、台湾をめぐる対立を含め、中国に対抗するために、インド太平洋における軍事同盟の弧を強化する最新の動きである。写真は2023年2月2日、マニラでフィリピンのフェルディナンド・マルコス・ジュニア大統領(左)がロイド・オースティン米国国防長官を歓迎した際の物。
フィリピンのカルリト・ガルベス・ジュニア国防長官との記者会見で、オースティン長官は、フィリピンと米国が大規模な紛争で互いに防衛することを義務づける1951年の相互防衛条約は、「南シナ海のどこでも、我々の軍隊、公船、航空機のいずれかに対する武力攻撃に適用される」と語り、オースティン長官は、マルコス大統領に、米国軍がフィリピンでのプレゼンスを拡大することを許可したことに謝意を示し「私は常々、フィリピン、ひいてはアジア太平洋の将来には、米国が常に関与しなければならないように思える、と言ってきた」と述べた。 両国の防衛協力強化協定では、米国軍が指定されたキャンプ内に建設したバラックやその他の建物に交代で無期限に滞在することが認められている。参照記事     

nappi11 at 00:01│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

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