

右の右図が、中国主張の領海で、国際的な200カイリを無視して一方的に九段線を引いて領海権拡大している。左は、南シナ海各国主張の領海で、フィリピンは緑色のライン。
2023年1月3~5日の訪中から帰国したマルコス大統領(前マルコス大統領長男)は「中国が比の漁業を止めないという合意に至った」と喧伝した。しかし、中国の威嚇を知るや、自信を失った様子で「中国側のカウンターパートがこの問題を習国家主席に報告することを期待する」とだけ述べた。

こうした実効支配の拡大への試みだけでなく、中国は情報操作にも長けている。親中的なフィリピン国軍将校人事に影響を持つ中国人の存在にも注意せねばならない。参照記事
訪中前のマルコス大統領は中国批判を強めていたが、首脳会談では習近平国家主席に強い姿勢を直接示すことはなく、2国間のホットライン設置や友好的対話による協議の継続、海洋資源の開発再開などでの合意に留まった。

中国外務省は「中国はフィリピンと協力して友好的協議を通じて海洋問題を適切に処理し続け、石油と天然ガスの探査に関する交渉を再開し、紛争のない地域での海洋資源探査に関する協力を促進する」との声明を発表し、マルコス大統領は大きな成果として、橋梁や洪水制御システムなどのインフラ整備に対して総額2億180万ドルの資金提供を受ける事で合意したと強調した。過去には、ドゥテルテ前大統領が、スカボロー礁に実効支配を拡大しないと約束した習近平国家主席を称賛した上で、「フィリピンを中国の一つの州にしよう。中華人民共和国、フィリピン州」と発言し国民のヒンシュクを買った事もあった。参照記事 、、、、フィリピンの政治家も軍人も、中国側の手練手管で丸め込まれている状況では、状況は悪化することは在って、改善など空(むな)しい夢だろう。台湾問題などをきっかけに、米中対立が険悪になれば、いづれ中立、まして中国寄りではいられなくなるのは明確で、フィリピンの将来に明るい兆しは見えない。尚、中国独自の領海に関して、2016年7月にオランダ・ハーグの国際常設仲裁裁判所(PCA:Permanent Court of Arbitration)の判決は、全員一致で南シナ海の大部分に対する中国の領有権主張を棄却している。過去ブログ:2020年7月見境なく他国の領土を紛争地化する中国の横暴と米中対立の先鋭化 2020年6月中国離れのインドネシア、海洋権益交渉も拒否 2019年5月乱獲と環境破壊が進む南シナ海、日本近海、南太平洋と中国 4月中国漁船の領海侵犯に「自爆部隊を送り込む」とフィリピン 2018年9月アジア開発銀行(ADB)がフィリピンへの融資決定 8月すでに中国に取り込まれたフィリピンの歯ぎしりが聞こえる 4月南シナ海で完成に近づく中国の環礁空母化とフィリピン 2014年9月領海問題で中国人襲撃相次ぐ 1名死亡 フィリピン
2023年2月9日:マルコス大統領は1月4日に中国の習近平(シーチンピン)国家主席、オースティン米国防長官と相次いで会談。2月8日からは大統領として初めて訪日している。


フィリピンのカルリト・ガルベス・ジュニア国防長官との記者会見で、オースティン長官は、フィリピンと米国が大規模な紛争で互いに防衛することを義務づける1951年の相互防衛条約は、「南シナ海のどこでも、我々の軍隊、公船、航空機のいずれかに対する武力攻撃に適用される」と語り、オースティン長官は、マルコス大統領に、米国軍がフィリピンでのプレゼンスを拡大することを許可したことに謝意を示し「私は常々、フィリピン、ひいてはアジア太平洋の将来には、米国が常に関与しなければならないように思える、と言ってきた」と述べた。 両国の防衛協力強化協定では、米国軍が指定されたキャンプ内に建設したバラックやその他の建物に交代で無期限に滞在することが認められている。参照記事