

これらの情報を国民に信じさせることができる、ロシアのプロパガンダがいかに強力か、ご理解いただけるだろう。このため、ウクライナ戦争の失敗についても「プーチンは、何の責任もない」とプロパガンダ工作することで、権力を保持し続ける可能性は確かにある。では、「プーチンに代わる人物」は誰になるのだろうか?プーチンには、大きく2つの支持層がある。「オリガルヒ:Russian olygarchs」(新興財閥:参照記事)と「シロビキ、シロヴィキ:Silovik」(諜報、軍、警察など)だ。プーチン政権支援の主なオリガルヒは、米国の制裁対象になっている。
プーチンにより近いのは「シロビキ」だ。「シロビキ」には、6人の「大物」がいる。ショイグ国防相、ゲラシモフ参謀総長(1月、総司令官に昇格)、ボルトニコフFSB(連邦保安局)長官、ナルイシキン対外情報庁長官、ゾロトフ・ロシア国家親衛隊隊長、パトルシェフ安全保障会議書記だ。ところが、ウクライナ侵攻で6人のうち5人までが、プーチンの信頼を失い「傷」を負ってしまった。
一人だけ「無傷」なのが、ニコライ・パトルシェフ(Nikolai Platonovich Patrushev, 1951年 7月11日 - )安全保障会議書記だ:右。プーチン政権の名目上のナンバー2は、首相のミシュスティンである。しかし、実質的なナンバー2は、このパトルシェフだ。1951年生まれで、プーチンと同じくレニングラード(現在のサンクトペテルブルク)に生まれ、レニングラード造船大学を卒業後、KGBに勤務する。99年8月、プーチンの後を継いで、FSB長官に。2008年からは、安全保障会議書記を務めている。彼は、プーチンと同じ市で生まれ、KGB、FSBで出世し、プーチンと同じ世界観を持っている。だから、プーチンが「現状最も信頼している男」なのだ。ところが、パトルシェフは次期大統領候補には挙がっていない。なぜだろうか?問題は年齢だ。パトルシェフは今年、71歳になる。ロシア人男性の平均寿命は68歳なので、彼は「平均寿命プラス3歳」だ。大統領になるには少々歳をとりすぎている。
そこで、「後継大統領候補」に浮上してきたのが、パトルシェフの長男、ドミトリー(Dmitry Patrushev: born 13 October 1977~)だ:左。現在45歳で、農業大臣という職にある。その前は、ロシアの大手銀行VTBの副頭取、ロスセリホズバンクの頭取、ガスプロムの取締役などを務めていた。要するに、ドミトリー・パトルシェフを大統領にして、プーチンとニコライ・パトルシェフが「院政」を行うというシナリオだ。
その他にも、メドベージェフ前大統領、キリエンコ元首相、ソビャニンモスクワ市長、ミシュスティン首相などが、「後継者候補」といわれている。だが、プーチン最大の支持基盤は「シロビキ」であり、「シロビキ」最大の大物がパトルシェフであること、そしてプーチンが彼を最も信頼していることを考えると、パトルシェフファミリーが「権力の座」に最も近い」といえるだろう。過去ブログ:2023年1月プーチンは「3月までにドネツク州を制圧しろ」と命じた