00_m一般に、通信速度の遅延はケーブルの長さにほぼ比例します。北極側は南極側に比べて大陸間の距離が近く、もし北極海を経由するケーブルを敷設できれば、これまでよりも高速な通信ができるようになると期待されています。分析の一例では、ロンドンと東京の間での通信は、エジプトを横断する既設ルートより30%~40%高速になる見込みで、音声・データ通信の速度の大幅な改善が期待されます。右は現在の海底ケーブル網。
cinia_fnf-map2-550x500fnf_map_211221米国・アラスカ州に本拠を置くFar North Digitalとフィンランドの通信会社・Cinia、そして日本のアルテリア・ネットワークスARTERIA Networksが取り組んでいるのが、北極海経由でアジアとヨーロッパを結ぶ光ファイバー海底ケーブル敷設プロジェクト(Far North Fiber)です。プロジェクトの規模は約10億ユーロ(約1300億円)で、ケーブルの総延長は約1万4000km。2023年から船舶を用いた調査を行い、2025年末までにサービス提供開始を予定しています。参照記事 英文記事 英文記事 右の図で行くと、日本側で北海道へ分岐する計画もあるようだ 拡大参照記事

2778309f一方、これとは別にロシアの政府と国営企業によるプロジェクトとして、モスクワの北2000kmにある北極圏最大の港湾都市ムルマンスクと、日本海に面する極東随一の都市・ウラジオストクを結ぶ北極海経由の海底ケーブル敷設計画「Полярный экспресс(Polar Express)」があります。ケーブルの総延長は1万2650kmで、コストは約650億ルーブル(計画当時で約1100億円)。ケーブルの運用を担当する国営企業Morsvyazsputnikによると、2021年8月6日にバレンツ海Barents SeaのほとりにあるムルマンスクMurmansk地方の村・テリベルカで敷設作業がスタート。2024年にシベリアまでの敷設を行い、2026年までの工事完了を目指しているとのことです。英文記事
quintillion-network-phase1ウォール・ストリート・ジャーナルによると、アラスカ沿岸部に1180マイル(約1900km)の海底ケーブルを保有するQuintillionのマット・ピーターソンCTOは「北極海に海底ケーブルを敷設するのは並大抵のことではありません。作業ができるのは氷に閉ざされない夏の間だけで、氷床が移動することでケーブルが切断される恐れもあります」と危険性を指摘しています。しかし、Quintillionも新たにアジアとヨーロッパを結ぶケーブルの敷設を計画しており、まずアジア~アラスカ間を3年かけて完成させたのち、カナダ~ヨーロッパ間に着手する予定だとのこと。
「Far North Fiber」プロジェクトに携わるFar North Digitalの共同創業者イーサン・バーコウィッツ氏は、北極海を横断する海底ケーブルは必要不可欠なインフラなので、海氷の減少が問題として取り上げられるようになる以前から考えていたとのこと。バーコウィッツ氏は、「海底ケーブルが切断される問題の多くは、船や、船が下ろしたいかりによって、海底が荒らされることで発生します。氷に覆われる北極海であれば、そのような問題は起きません」と語っています。過去ブログ:2021年6月豪州~南米間 光海底ケーブルの参加国増える 2021年5月米国、日本、豪州が海底ケーブル分野で連携強化 中国排除 参照記事


nappi11 at 00:03│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

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