2022年02月16日  犯罪 メキシコ 中南米
3d7c6c26-s2022年2月16日;メキシコの麻薬犯罪組織の概要(2021年8月の記事より)過去ブログ:2020年9月メキシコ麻薬カルテル勢力分布図 2020年6月~ メキシコ 以降分布図を更新していないが、2020年以降、メキシコの麻薬組織は群雄割拠の状態で、支配地域に関するまとまった図がメディアに出ることがなかった為で、今回、比較的現状に近いと思われる図が在ったので「メキシコ麻薬組織勢力分布図:Mexico, Cartel fiefdoms 」として保存する。
メキシコでは現在、2つの大きな犯罪組織 シナロア・カルテルSinaloa Cartel(CDS)とハリスコ・ヌエバ・ジェネラシオン:新ハリスコ・カルテルNew Generation Jalisco Cartel:Cártel de Jalisco Nueva Generación(CJNG)が犯罪の現場を支配し、互いに残酷な縄張り抗争を繰り返している。 他に7つの影響力の大きい犯罪グループと、それほど危険ではないとされる約100の小さなグループがあり、多くは地域のギャングだが、危険な犯罪集団であるのは変わりない。
los-chapito_01ismael-zambada-garcia_01 シナロアとハリスコのグループは、シナロアのボス"El Mayo" Zambada;右の左端 の高齢化とチャポの息子(Jesús Alfredo Guzmán Salazar – Ovidio Guzmán López – Iván Archivaldo Guzmán)やNemesio-Oceguera_01弟の拘束、ハリスコのNemesio Oseguera Martínez, “El Mencho”:左 の病気疑惑により世代交代が進んでおり、どちらのケースもすでに後継者争いが起きている。近年0c4c7473-sシナロアの資金源となっている薬物は、一般総称オピノイドの一種・合成麻薬フェンタニルFentanylで、多くが北米へ密輸され、その原料の多くは中国からと言われている。過去ブログ:2021年10月メキシコ北部のカルテルの抗争多発 10月米国で「フェンタニル」過剰摂取や中国製麻薬での死亡急増 7月凶暴かつ残忍な麻薬組織CJNG兵士の素顔 メキシコ 5月勢いづくCJNGと報復殺人で犠牲になる警官 メキシコ太字 4月米国への進出が確認されたメキシコの麻薬組織CJNG
最上図の同じ色分けの中に複数の組織が在るが、その色分けの中での各組織は、同盟関係に在ったり抗争、分裂を繰り返し、厳密な縄張り範囲や相互の関係の詳細は常に流動的でつかめていないと思っていいだろう。各組織に関しては、過去の記事を参照してもらいたい。一時全土的に拡大した新ハリスコ・カルテルは、古株のシナロア、セタス、ガルフ・カルテルとの抗争で北部からは撤退したように見える。世界がCOVID-19の流行に神経を尖らせ、メキシコ政府が深刻な公衆衛生問題を優先させることに関心を持つ一方で、犯罪グループは活動を続け、違法薬物を活発に蔓延させているようだ。
カルテルCartelは、麻薬取引の面で、栽培、または製造の領域から販売の領域まで網羅する犯罪組織のことを指す。活動は麻薬の生産から、マネーロンダリング、人身売買、武器の購入、市場への投入など、多岐にわたる。その最大組織が、シナロアとハリスコで、多くの犯罪集団は、この2大カルテルに依存し、一部はカルテルの戦闘部隊(傭兵mercenary)として活動する。 自称カルテル・デル・マロCartel del Marroやカルテル・サンタ・ロサ・デ・リマCártel Santa Rosa de Lima(CSRL)は、大規模なカルテルではなく、燃料の窃盗や恐喝、強盗、誘拐などを目的とした犯罪組織であり、カルテルとしては認知されていない。
米麻薬取締局DEAが示すメキシコの主な麻薬カルテルは、シナロアとハリスコの他、以下の7つである。
フアレス・カルテルJuárez Cartel(別名Vicente Carrillo Fuentes Organizationからフエンテスと呼ぶ事もある)は、シナロア・カルテルとCJNGカルテルが行使したとされる支配権争いの中で、2016年から地位を失い、活動が弱体化したことが確認される国境沿いの組織。
アレラノ・フェリックス・カルテル:Cártel de los Arellano Félix(CAF)は、ボスが死亡してほぼ消滅したティファナ・カ ルテルTijuanaからの分派組織で、シナロアに制圧されていたが、シナロアがボスの逮捕などで弱体した際に復活したようだ。
ガルフ・カルテルGulf Cartel(CDG: Cártel del Golfo)については、コカインとマリファナの取引で生き残っているが、ヘロインとメタンフェタミン(methamphetamine 別名アイス “ice” 、クリスタルメスCrystal meth、オピオイド系薬物)に進出し、麻薬輸送のほとんどを南テキサス州に密輸しているとDEAは主張している。
ロス・セタスLos Zetas Group (Groupo Bravo)の方は、北東カルテルとロス・セタス・ビエハ・エスクエラの結成につながる分裂によって断片化されているが、ラレド、ダラス、ニューオーリンズの流通センターを通じて、ヘロインとコカインを含む様々な麻薬の取引を続けている。
ベルトラン・レイバ・ファミリーBertlán Leiva・Organisation(BLO)は過去に多くの指導者が逮捕、殺害されたため崩壊の可能性が指摘されており、このため、この組織の反体制派は、国境を越えて麻薬を移送するためにCJNG、フアレス・カルテル、ロスセタスの一部と柔軟に連携していると推測される。
FireShot Webpage Screenshot #2172ロス・カバレロス・テンプラリオス:テンプル騎士団Knights Templarなどのミチョアカン州のグループについては、リーダーのセルバンド・ゴメス・マルティネス「ラ・トゥタ」が逮捕された後、弱体化した。また、ラ・ファミリア・ミチョアカナ: La Familia Michoacan cartel(La Familiaについては、解散した組織と思われていたが、ミチョアカン州とゲレロ州の両方で現在も活動しており、合成麻薬メタンフェタミンmethamphetamineの製造と密輸、その他の合成麻薬の密輸を長年専門としていることが報告されている。また、マリファナやコカインの取引も行っており、さらにヘロインの製造もしている。参照記事 日本での覚せい剤の主なものはメタンフェタミンで、ヒロポンとも呼ばれる。 参考:CDS Say They Are In Colima To Fight the CJNG & Name The CJNG Colima Leaders, Including Mencho's Son-In-Law
95bf8760-s2022年10月18日:シナロア・カルテルSinaloa Cartel(CDS)CJNGの幹部コマンダンテ ガンソを殺害し、メッセージを残す メキシコ サカテカス州Zacatecasとの記事から、勢力図の青で示したシナロアが勢力圏をサカテカス州Zacatecasにまで拡大しているようだ。10月18日、サカテカス州でカルテル ハリスコ ヌエバ ヘネラシオン(CJNG)のメンバーとされる通称エル コマンダンテ ガンソの死体が、メッセージとともに見つかり、メッセージには「ここにカルテル ハリスコ“CJNG”のコマンダンテ ガンソがいる。ハルディネロ・F25・JJのために働くもの全てに起きることである。サカテカスには支配者がおり、それはエル セニョール ソンブレロである。オペラティボMZ」と書かれていた。一方、サカテカス州ヘレス市ではCJNGの署名のある複数の麻薬横断幕が見つかっているので、サカテカス州で両巨大麻薬組織が過激な抗争を繰り返しているようだ。参照記事
d655f8192022年11月5日:メキシコ最大の犯罪組織カルテル ハリスコ ヌエバ ヘネラシオンNew Generation Jalisco Cartel:Cártel de Jalisco Nueva Generación(CJNG)とメキシコ第2の老舗犯罪組織カルテル デ シナロアSinaloa Cartel(CDS)が、メキシコではなくエクアドルで戦争を始めた。両組織はエクアドルの麻薬密売利権とコロンビア・エクアドル・太平洋の麻薬(コカイン)ルート利権をめぐり争っており、エクアドルでメキシコ麻薬カルテルの存在感が増し麻薬売買の増加に伴い、暴力行為も増加している。アメリカ合衆国国務省によれば、メキシコ麻薬組織はコロンビア人と組み、エクアドル最大のグアヤキル港やエクアドル各地にある秘密滑走路を使用して、コカインやその他麻薬を密輸している。「コロンビアとメキシコの麻薬カルテルがエクアドルの麻薬取引や違法行為を牛耳り、2021年のエクアドルの刑務所内でのギャング戦争が記録的レベルのまで達しています。」と国際麻薬統制戦略レポート2022は指摘している。 参照記事 この後の経過:2023年4月メキシコ麻薬カルテル勢力分布図2023 年3月~:  過去ブログ:2021年10月刑務所暴動で118人死亡 背後にメキシコ組織?エクアドル

nappi11 at 04:24│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

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