2022年02月09日 商業 経済


なぜリラ価値は暴落したのか?それはトルコの中央銀行が「利下げ」を繰り返しているためで、物価が上昇基調にあるときの金融政策の定石は、市場に出回るお金を絞るための「利上げ」です。世界的にインフレ圧力が強まる今、実際、イギリスや韓国、ニュージーランドなどの中央銀行が去年、相次いで利上げしていて、アメリカの中央銀行にあたるFRBも早ければ3月に「利上げ」に踏み切るとみられている。


もう1つ、利下げにこだわる理由が。それは来年に控えている大統領選挙です。イスラムで禁じられている「利子」と戦う姿勢を示すことは、エルドアン大統領自身の支持基盤である宗教保守層へのアピールにもつながります。そのため「イスラムの教えで求められていることを実行する」と訴えているという指摘もあります。参考:「利子」は禁止!世界を席巻するイスラム金融の仕組みとは


影響は、外国から進出した企業にも及び、トルコ国内に加え、ヨーロッパ向けに家電製品の防音材を製造するこちらの日系企業にも。本来、リラ安の恩恵を受けるはずが、あまりにも不安定なリラの相場に翻弄され、インフレの影響で去年11月には光熱費が、前の月の2倍以上に増えたほか、従業員(30人程)から「生活が立ちゆかない」として、3割から4割の賃上げを求められ、ことしは大幅な人件費の上昇が見込まれるとしている。また、リラ安が急激に進む影響で、工場に入れる設備の見積もりを取ったあと、本社の決裁を待つ間に為替レートが変わってしまい、見積もりを何度もやり直してもらうなど、対応を余儀なくされている。財務と経理を担当する高津幸城課長は「ここまで急激なリラの下落は想定していなかった。出ていく資金が大きくなるほか、1月からの予算を組み直すことになり、対応に苦心している」、、。
リラ安やインフレを容認してきたトルコ政府や中央銀行も、影響が深刻になるにともなって対応を迫られ、中銀は通貨防衛のためおよそ8年ぶりに為替に介入し、去年12月だけで5回、市場介入した。また、同じ月にトルコ政府は最低賃金を5割引き上げると発表。さらに打ち出したのが「リラ建ての預金保護」で、これは一部のリラ建ての定期預金に対し、為替の変動で利息を上回る損失が出た場合に、差額を国が補填するというもの。
リラの相場はいったん息を吹き返し、1ドル=10リラ台前半まで戻したが、持続性について、専門家からは疑問視する声も。トルコの財政運営を不安視する人がリラ売りに走れば、リラが下がって、さらに財政負担が膨れ上がる、負のスパイラルに陥りかねない。また、国庫が補填する費用をまかなうために中央銀行がお金を刷れば、市場に出回るお金が増え、インフレがさらに悪化することも懸念される。
そこでエルドアン大統領が国民に呼びかけたのが「枕の下から預金を出してリラを守ろう!」で、手元に置いている「タンス預金」のドルなどの外貨を売って、リラを買い、リラ安の抑制に力を貸して欲しいというもの。今や「実験」とも揶揄されるトルコの経済政策の先行きは極めて不透明だ。エルドアン大統領は現在エミネ夫人と共にオミクロン株に感染、症状は軽く大統領は在宅で職務を行っている。参照記事