2022年02月09日  商業 経済 
K10013434461_2201171539_2201171557_01_08トルコの人たちを苦しめているインフレは、日本からは想像がつかないほど急激で、統計局が発表した去年2021年12月の物価上昇率は36%。2021年はじめに1ドル=7リラ台だったのが、12月には一時、18リラ台に。リラの価値は1年で半分以下にまで下がった。(現在はドル安から1ドル13リラ台で推移し、2022年2月8日1ドル13.61リラ 1リラ約8.5円)。例えるなら「お正月にもらったお年玉をとっておK10013434461_2201171113_2201171236_01_05き、いざ、年の暮れに使おうと思ったら、予定していた半分以下の買い物しかできなくなっていた」という状況で、「毎日のようにすべてが値上がりしていく」ので「給料が足りず買い物ができない」と悲鳴が出ている。例えば、乳製品は前の月と比べ軒並み5割の値上げ。店主は「チーズはキロ買いが基本だったのに、今は250グラム単位で買う人もいる」、、。

なぜリラ価値は暴落したのか?それはトルコの中央銀行が「利下げ」を繰り返しているためで、物価が上昇基調にあるときの金融政策の定石は、市場に出回るお金を絞るための「利上げ」です。世界的にインフレ圧力が強まる今、実際、イギリスや韓国、ニュージーランドなどの中央銀行が去年、相次いで利上げしていて、アメリカの中央銀行にあたるFRBも早ければ3月に「利上げ」に踏み切るとみられている。

K10013434461_2201171300_2201171303_01_10ところがトルコの中央銀行は、2021年9月から12月まで4か月連続で「利下げ」を実施。19%だった政策金利は4か月で14%にまで引き下げられ、この“常識破り”の政策にともなってトルコ国内の物価が大きく上昇した。利下げの背景にあるのが「高金利は景気を冷やす」という、エルドアン大統領の「信念」です。その考え方を表したのが、この左図。

K10013434461_2201171538_2201171557_01_11金利が下がれば、国内ではお金が借りやすくなり、ビジネスが回りやすくなる。さらに、通貨リラが値下がりすれば、海外の観光客を呼び込みやすくなり、輸出もしやすくなる。そのためには、インフレという副作用は容認する方針なのです。
もう1つ、利下げにこだわる理由が。それは来年に控えている大統領選挙です。イスラムで禁じられている「利子」と戦う姿勢を示すことは、エルドアン大統領自身の支持基盤である宗教保守層へのアピールにもつながります。そのため「イスラムの教えで求められていることを実行する」と訴えているという指摘もあります。参考:「利子」は禁止!世界を席巻するイスラム金融の仕組みとは

FireShot Webpage Screenshot #1103 - 'ビジネス利下げ政策のもくろみは、ある面では当たります。オミクロン株が猛威を振るうなか、リラ安の恩恵を受けようと、ブルガリアやイランなど周辺国からの観光客がバスで乗りつけ、買い物を楽しむ様子が報じられました。一方で専門家からは「こうした『爆買い』こそが地元経済を疲弊させている」という指摘も。観光客が生活必需品を買い占めて品薄になるため、値上がりに拍車をかけているという。
K10013434461_2201171112_2201171236_01_12インフレが止まらない状況に、国民の我慢は限界に近づいています。労働組合による抗議デモが相次ぎ、経済界からも異論が噴出。ついにトルコ有数の経済団体までもが「今、試されている経済政策が目的を果たせないことは明らかで、一般的に認められている経済の原則に立ち戻るべきだ」とする声明を発表しました。
影響は、外国から進出した企業にも及び、トルコ国内に加え、ヨーロッパ向けに家電製品の防音材を製造するこちらの日系企業にも。本来、リラ安の恩恵を受けるはずが、あまりにも不安定なリラの相場に翻弄され、インフレの影響で去年11月には光熱費が、前の月の2倍以上に増えたほか、従業員(30人程)から「生活が立ちゆかない」として、3割から4割の賃上げを求められ、ことしは大幅な人件費の上昇が見込まれるとしている。また、リラ安が急激に進む影響で、工場に入れる設備の見積もりを取ったあと、本社の決裁を待つ間に為替レートが変わってしまい、見積もりを何度もやり直してもらうなど、対応を余儀なくされている。財務と経理を担当する高津幸城課長は「ここまで急激なリラの下落は想定していなかった。出ていく資金が大きくなるほか、1月からの予算を組み直すことになり、対応に苦心している」、、。
リラ安やインフレを容認してきたトルコ政府や中央銀行も、影響が深刻になるにともなって対応を迫られ、中銀は通貨防衛のためおよそ8年ぶりに為替に介入し、去年12月だけで5回、市場介入した。また、同じ月にトルコ政府は最低賃金を5割引き上げると発表。さらに打ち出したのが「リラ建ての預金保護」で、これは一部のリラ建ての定期預金に対し、為替の変動で利息を上回る損失が出た場合に、差額を国が補填するというもの。
リラの相場はいったん息を吹き返し、1ドル=10リラ台前半まで戻したが、持続性について、専門家からは疑問視する声も。トルコの財政運営を不安視する人がリラ売りに走れば、リラが下がって、さらに財政負担が膨れ上がる、負のスパイラルに陥りかねない。また、国庫が補填する費用をまかなうために中央銀行がお金を刷れば、市場に出回るお金が増え、インフレがさらに悪化することも懸念される。
そこでエルドアン大統領が国民に呼びかけたのが「枕の下から預金を出してリラを守ろう!」で、手元に置いている「タンス預金」のドルなどの外貨を売って、リラを買い、リラ安の抑制に力を貸して欲しいというもの。今や「実験」とも揶揄されるトルコの経済政策の先行きは極めて不透明だ。エルドアン大統領は現在エミネ夫人と共にオミクロン株に感染、症状は軽く大統領は在宅で職務を行っている。参照記事

nappi11 at 00:01│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

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