2021年8月23日:英最大の半導体ファウンドリー企業で、自動車向けパワー半導体に強みがあるニューポート・ウエハー・ファブ(Newport Wafer Fab,NWF)は2021年7月初旬に、中国聞泰科技(ウィングテック:WingTech・中国・西安拠点:左)傘下のオランダ半導体メーカー、ネクスペリア(Nexperia)によって買収された。ネクスペリアはすでにニューポートに一部出資しているが、株式を買い増して完全子会社にする。米CNBCは買収額が約6300万ポンド(約100億円)になると報じた。しかし、同取引は英政府に疑問視され、国家安全保障上の理由で英政府による調査を受けている。
NWFを買収したネクスペリアの親会社である中国・ウィングテック社は2021年8月16日、株主に対して「NWF社は今後の運営過程において、国内外の政策や経済環境などによる影響を受ける可能性がある」と投資者にリスクを警告した。参考:2018年10月中国ウイングテック、半導体メーカーのネクスペリア買収へ 4000億円超規模
これを受け、米ニュース専門放送局CNBCは、この発表から、同買収案に何らかのトラブルが発生した可能性があると推測した。同買収案に関しては現在、英国家安全保障担当補佐官のスティーブン・ラブグローブ卿が調査中であり、結論は数日中に発表される予定となっている。英当局は以前、買収案が白紙撤回になる可能性は排除できないと述べていた。
英サウスウェールズ州ニューポートにあるNWF:左は、従業員約400人を抱え、週に8000枚のウエハーを生産する英最大の半導体チップメーカーの1つである。英政府がこの買収の撤回を決定した場合、チップ業界の老舗、イマジネーション・テクノロジーズ(Imagination Technologies:過去に日本のデンソー(DENSO)との共同研究が公表されている。Imaginationの2020年の売上高は1億2500万米ドル(約138億円)で、前年比44%増加 参照記事)のロン・ブラック元最高経営責任者(CEO)は、NWFの買い戻しに意欲を見せている。
中国は半導体チップ技術、特に自動車向けパワー半導体において他国に大幅の遅れをとっているため、外国半導体メーカーの買収、政府系投資ファンドを通じて同業界の活性化を目指している。NWF社の100%の株式を間接的に保有するウィングテック社は中国大手通信機器メーカーでスマートフォンのODM(相手先ブランドによる設計・製造)大手であり、華為技術(ファーウェイ)の仕入先でもある。参照記事 参照記事、、、パワー半導体に関し、日本企業は、この方面の開発に力を入れていれ、台湾、欧米企業との共同研究も進んでいる。過去ブログ:2021年7月半導体と経済