Iraq-US_Drawdown2020年12月28日:トランプ大統領は「果てしない戦争は終わらせる」として、アフガン駐留米軍を4500人から2500人、イラク駐留米軍を3000人から2500人に縮小し、ソマリア駐留米軍700人の大半を現地から撤退させる方針だ。世界のパワーバランスは大きく変化し、米国は中国やロシアとの覇権争いを最も重視する戦略に転換している。対中と対テロを同時並行で進められる政治的余裕やマンパワーがないのは明らかであり、トランプ大統領の決断には正当性があるともいえる。写真は、イラクの米軍駐留兵士
img_isil_02現状では、アフガニスタンではアルカイダのメンバーが数百人レベルで活動し、シリア・イラクではイスラム国(IS)が小規模ながらもテロを続けているとされるが、そのピークと比べると現在は見る影もない。だが、イエメンのアラビア半島のアルカイダ(AQAP)、北アフリカで活動するマグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)、ソマリアのアルシャバブ(Al Shabaab)、マリを中心にサハラ地域を拠点とするイスラムとムスリムの支援団(JNIM)、シリアのフッラース・アル・ディーン(Hurras al-Deen)など、アルカイダを支持する武装勢力は依然として現地で活動し、エジプトの「ISのシナイ州」やコンゴ、モザンビークの「ISの中央アフリカ州」、0de072d1ナイジェリアの、過激派ボコ・ハラムから分派したと言われる「イスラム国西アフリカ州(ISWAP)」写真右、フィリピンの「ISの東アジア州」などISを支持する組織も各地に点在し、住民惨殺、略奪などを繰り返している。一部は、以前ほどの攻撃能力はないとしても、「欧米諸国を攻撃する」という意思は依然として捨てていない。
o06360382148490315912020年11月10日の報道では、Al-Shababを名乗る、モザンビークのIS系過激派が、市民50人を斬首し、女性を拉致し、少年15人はサッカー場で処刑された。国連は、アフリカ南部のモザンビークで武装グループの活動が活発化して大量の避難民が発生し、90万人以上が食料不足に陥っているとして、国際社会に支援を呼びかけている。同国では、2017年以来2000人以上が殺され、半分以上が市民だという。12月25日には、エジプトのISがシナイ半島のガスパイプラインを爆破したと犯行声明を出した。記事と映像 参照記事 過去ブログ:2020年11月過激派ボコ・ハラム 農民110人を斬首等で殺害 ナイジェリア
米軍縮小・撤退における最大の問題は、各紛争国でパワーバランスが徐々に崩れはじめ、テロ組織優位の情勢に転換し、テロ組織の活動が活発化すると共に、テロ組織のモチベーションが一気に上がり、それによってテロ情勢が急激に悪化することだ。またイラクでは、テロ組織ではないが、イラク国軍に編入されたシーア派民兵らが反米、反政府的活動を活発化させている。これらの結果、現地の治安情勢がさらに悪化し、貧困や失業、経済格差などの社会経済的問題も深刻化し、一部の若者がテロの世界に入ってしまう悪循環の恐れがある。参照記事 参照記事: イラク・レバントのイスラム国(ISIL) 過去ブログ:2020年12月タリバンの見え透いた提案に浮かれるユニセフ アフガニスタン
l141_19761608868936こんな情勢下で、2020年12月25日、アフガンの情報部NDSが、首都カブールKabulで活動していた中国人スパイ10人を逮捕し、アジトから武器、弾薬、麻薬(Ketamine powder)が押収されたと報道された。
500px-Afghanistan_provinces_japanese記事によれば、工作員は、クナル州Kunarとバダフシャン州Badakhshanのアルカイダ、タリバン、ウイグル人Uighursに関する情報を収集する任務を負っていて、インドのヒンドゥスタンタイムズによると、少なくともメンバー2人は、タリバン系だが最右翼で、アフガン政府と和平を進めるタリバン主流派に批判的と言われるハッカーニネットワークHaqqani Networkと関係していたとされる。過去ブログ:2020年3月アフガン和平協議合意への不安>カタールで和平合意に署名
NDSはまた、スパイらとパキスタンとの関係も調査すると同時に、中国と拘束したスパイに関し協議をしているとも報道された。アフガン政府は、国内の銅資源開発権を中国へ渡すなど、中国とは親密な関係にあり、全ては内密に処理される可能性が高いと記事は書いている。
6a887403スクープしたのはインド系メディアで、北京は公表しないようガニ政権Ashraf Ghani government l141_19761608868993へ圧力を掛けていたとも書いている。別記事では、親中国のパキスタンの情報部が、テロ組織と中国スパイの仲介を行ったとも書かれている。アフガンは従来から、アフガンの反政府組織をパキスタン情報部が支援していると非難する立場だ。また過去には、中国でテロ活動するイスラム系ウイグル人兵士が、アフガンのイスラム過激派テロ組織から訓練を受けているとの報道もあった。  英文記事 英文記事

nappi11 at 00:43│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

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