
事情に詳しい関係者2人によれば、ジョンソン首相は、EUによる英水域での年間漁獲高(金額ベース)を25%削減し、新たな取り決めの段階的導入期間を、EUが当初の要求の10年から7年に譲歩し、英側はこれまでの3年から5年半とする妥協案を受け入れた。漁獲高に関し、先週の段階では、資源保護の観点から、英国はUEへ60%削減の受け入れを主張していた。参照記事 参照記事
通常は英仏海峡を渡って、毎日5000台のトラックが英国に入っている。冬に英国民が消費する生鮮の果実・野菜はほぼすべて、これらのトラックが運んでくるものだ。スーパーマーケット大手J・セインズベリーは、数日中にレタス、ブロッコリー、カリフラワーなどの野菜が品切れになるとの見通しを出した。そうなれば、ジョンソン英首相は12月31日の期限前にEU離脱後の貿易協定に合意し、新型コロナ変異種に関する国境閉鎖を至急に解除するのが理にかなっている。現在、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、オーストリア、スイス、アイルランド、ベルギー、イスラエル、インド、カナダなどの各国は12月21日、英国からの入国停止を決め、フランス政府は英国からの入国を48時間停止したため、大型トラックが英ドーバー港から欧州大陸に向けて出発できなくなり、両国の製造業にも影響が出ている。参照記事 過去ブログ:2020年12月新型コロナ変異種で移動制限、流通混乱と英仏トヨタ操業停止 参考PDF:EUの結束政策の現状と今後の展望(2019年5月:欧州連合EU日本政府代表部)

【関税ゼロは維持 通関手続きは必要に】双方の貿易では来月以降もこれまでどおり関税ゼロが維持される。ただ、通関手続きは必要となり、双方の境界では混乱も予想される。
【イギリス海域での漁業権】イギリス海域での漁業権については、年明けから5年半の間「移行期間」を設け、この間、EU側の漁船はこれまでどおりイギリスの海域で操業できるが、EUが漁獲枠の25%(金額ベース。当初は80%だった)をイギリスに返す(EU側から見ると漁獲枠の25%減少、譲歩)としている。移行期間が終了したあとは、毎年協議を行う。、、この結果を英国では、英国の大幅譲歩と見て、英海域から他国漁船を排除したい保守的な漁業関係者からは不満の声が出ていると言う。一方EU側では、金額ベースで25%を上回る年間漁獲高の削減は、フランスやデンマークが受け入れ難いと主張していた。
【公平な競争 ルールを合わせる】EUは、イギリス政府が企業に多くの補助金を出したり、労働、環境などの規制を緩和したりすることで、EUの企業が不利になることを懸念し「公平な競争条件」を求めてきた。合意では双方がルールを合わせることで一致し、守られなかった場合には必要な措置をとるとしている。
また今後、双方間の移動の自由は制約される。英国人がEU加盟国に長期滞在(90日超過)するためには、ビザを取らなければならない。EU加盟国の国籍者も、英国に長期滞在するためにはビザを取らなければならない。双方の国民が相手先に留学に行ったり、事業を行うためには、不便を甘受しなければならない。参照記事 参照記事 参照記事