AGM-114_R9X11b5e66466278f79d636ニューヨーク・タイムズ(2020年9月24日付)などによると、米統合特殊作戦軍はこのほど、国際テロ組織で過激派アルカイダのシリア分派「フラス・アルディン Hurras al-Din:イドリブ圏最大の反政府主流派HTS(Hayat Tahrir al-Sham:シャーム解放機構=旧ヌスラ戦線)とトルコ~ロシア間で締結したシリアでの停戦合意には反対の立場で、HTSとも対立」の幹部を、通称リーパー(死神)と呼ばれるドローン :R9X 搭載のヘルファイア・ミサイル、別称“忍者ミサイル:AGM-114R9X missile”で暗殺した。
Idlib-Khalid-al-Aruri-14-june-2020-AGM-R9Xこのミサイルは爆弾の代わりに長い回転刃で標的を切り刻むという特殊兵器。米軍はテロリストとの「影の戦争」に新兵器を本格投入し始めた。このミサイルによる2020年6月14日の左の攻撃写真では、撃ち込まれた車は切り刻まれて破壊され、外にその特殊刃が落ちているようだ。この攻撃で、会議に向かっていた同組織の事実上の指導者だったハリド・アルアルリ Khalid al-Aruri が、イドリブ市郊外で殺害された。英文記事
5bdc91400591f26f77223e39通常無人機:右 からのヘルファイア・ミサイルには弾頭に約9キロの爆薬が装着されているが、忍者ミサイルには弾頭を爆発させる代わりに、6枚の回転刃が付いた金属物体が付いていて、これによって標的はズタズタに切り刻まれる仕組みだ。
今回の攻撃は、国防総省スポークスマンによると2020年9月14日にシリア北西部イドリブ近くで実施された。米国の対テロ当局者や現地の人権監視団体などによると、殺害されたのは「フラス・アルディン」幹部のサイヤフ・チュンシ:Sayyaf al-Tunsi というチュニジア出身のテロリストで、西側への攻撃計画の首謀者とされる。英文記事 英文記事
この兵器はほぼ10年前に開発され、今回9月14日は最近の3カ月間で2度目の使用。この他、これまでに統合特殊作戦軍と中央情報局(CIA)がイエメンやシリアで過激派の暗殺に使ったが、実戦に投入された回数は6度ほどにとどまっている。 残虐とも思われるこの兵器は米軍の過激派攻撃で民間人の死傷者が増えたため、オバマ前大統領が民間人の巻き添えを最小限に食い止める兵器の開発を指示して生まれた。一般的に多数の過激派を一挙に掃討する場合は通常の爆弾搭載のヘルファイア・ミサイルが使われ、少数を標的にするケースに“忍者ミサイル”が使用されるという。
2993205238殺害された幹部が属している「フラス・アルディン Hurras al-Din」は米国が最凶のテロ組織として狙い続けてきたグループだ:左。同組織は元々、アフガニスタンに潜伏していると見られるアルカイダの指導者アイマン・ザワヒリが西側権益を攻撃させるためシリアに設置させたもので、当初は「ホラサン・グループ」と呼ばれた。シリアのアルカイダ分派だった旧ヌスラ戦線(現シリア解放委員会)がアルカイダと決別宣言した後、過激な思想を持つ面々が集まって2018年、「ホラサン・グループ」の後継組織として「フラス・アルディン」を立ち上げた。その後、米国の空爆によって大きな打撃を受けたものの、現在はイドリブ県に約2000人の戦闘員が残っているといわれる。シリア北西部はロシアが制空権を握っているため、米国の空爆に抑制が掛かったおかげで生き延びたようだ。
2c004382同組織の存在が知られるところとなったのは2019年10月、過激派組織「イスラム国」(IS)の指導者だったバグダディが米軍の急襲によりイドリブ県で殺害された時だ。バグダディIS leader Baghdadi 、Abu Bakr al-Baghdadiにイドリブ北西部に隠れ家を提供していたのが「フラス・アルディン」の司令官だったからだ。ISとは犬猿の仲だっただけに、見つかった領収書から、バグダディから用心棒代を受け取って匿っていたことに、世界中のテロ専門家らが仰天した。過去ブログ:2019年10月ISの指導者バグダディ 米軍の攻撃受けトンネルで自爆 シリア 
89840237イドリブ県内に立てこもる最大勢力はアルカイダとの関係を切ったと主張する「HTS:シャームの自由運動 、Ahrar al-Sham Movement:シリア解放委員会」で、その勢力は約3万人。またトルコが支援する反体制派「国家解放戦線NLF: National Liberation Front」も同程度の勢力規模だといわれる。「シリア解放委員会」は自分たちの占領地域をISと同様に「国家」と呼び、同県の支配体制の強化を図っている。最近では、外国人の過激派追放に乗り出し、「フラス・アルディン」との間で交戦に発展、緊張が高まっている。過去ブログ:2020年3月戦況が複雑化する一方のシリアとゲリラ化するIS、反政府組織
b09262474883419eb97cb38302e8b984_18シリアでは、内戦で家を失った難民が人口の半分以上の1400万人にも達し、イドリブ県の住民300万人のうち、100万人が難民化している悲惨な状況だ:左難民キャンプ。だが、トルコ軍がシリアに侵攻し、にらみを利かせているためアサド政権、ロシア、トルコが三すくみのような膠着状態が続き、同時に各勢力がそれぞれの権益確保に狂奔している現状では和平の展望は暗い。
5d6e3ae419c34a498eaf8f5431363d2b_6また、中東に介入し続け、現在の混乱の原因の一端を作った米国が逃げにかかっているのは無責任以外のなにものでもないだろうといわれる。現在米軍は、シリア北東部のクルドSDFに対する支援は継続している。各地でISの残党による小規模な攻撃は今も続き、ロシアは北西部への空爆を継続している。 参照記事 過去ブログ:2020年8月ダマスカス近郊のガスパイプライン攻撃?で首都が停電 シリア 8月シリアでロシア軍司令官が視察中に爆弾テロで死亡 8月シリアへ相反する米中の対応と中国の狙いとアサド政権の罪

nappi11 at 05:00│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

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