7a74b96f過去ブログ:2019年10月トルコがシリア北部で戦闘準備 米軍は撤退>9日トルコ攻撃開始 以降
すでに2019年10月9日から、トルコ軍によるクルド人居住地域への空爆、地上攻撃が確認されている。右図は公式ではないが、トルコ側の空爆が確認された地域。□は難民キャンプ、○はIS家族の収容施設で、北東部のIS兵士の家族が住むアルホル避難民キャンプ(Al-Hol Refugee Camp)だけで7万人(約半分が子供)が生活している。参照記事 過去ブログ:2019年3月SDFが3月17日戦況報告と収容所の悲惨な状況 シリア東部 
トルコの攻撃は予想されていた事で、クルディスタン労働者党PKKのシリアでの民兵組織
クルド人民防衛隊:YPG(People's Protection Units)はシリア北部へのトルコ軍の攻撃に備え、居住家屋を陣地に抵抗の構えで、Tal Abyadでは民兵らが民間の住居へ移動していると報道された。民兵らは市民の服装でオートバイなどで監視活動を行い、老人や女性は地域から避難を始めたが、若い市民には移動を制限しているとされ、トルコ側は市民を盾human shields にしていると非難している。
645x344-ypg-prepping-to-use-civilian-トルコ側はクルド民兵らをテロリストYPG/PKK terrorists と表記し、上級テロリストらは、自分の家族をRaqqaや Qamishli へ車で移動させているという。また、 Tal Abyad(Tell Abyad) やRas al-Aynには、Ayn al-Arab, Raqqa,  Deir El-Zour などから兵員や車両が終結しているとされ、同時に各地で兵員の強制募集が行われている。YPGはすでに2週間前から、20歳以上の若者を対象にリクルートを強化していた。ある若者は、YPGが急に自宅に現れ、兵役につかなければ父親を拘束すると脅されたと語った。YPGは集めimagesた若者をRaqqaのキャンプで軍事訓練をしている。左は、Tal Abyad でトルコ側を監視するクルド兵。クルド人の民族主義とその歴史
現地10日付の記事では、トルコ軍が地上で国境から約7キロTal Abyadへ向け進攻したとされる。トルコはシリア北部イドリブ圏の反政府支配地域の監視に「(シリア)国民軍 National Army(NA)またはSyrian National Army(SNA)」を組織しているが、越境進攻にはトルコ軍に伴い、この部隊も参加している。先に行われたトルコのF-16Turkish F-16 jetsによる空爆では、ユーフラテス川付近の、国境から30キロ離れたYPGの拠点も攻撃されたと報道されている。上の地図では、Ain-Issa辺りがその位置になる。参照記事

Screenshot(4)2016年からユーフラテス川西側でトルコ軍、トルコ支援のFSAはこれまで、ISを含むテロリスト排除の掃討作戦Olive Branch operationsを行ってきたが、ユーフラテス川東からのテロリストの攻撃が作戦への脅威だとして非難していた。すでにトルコは30年以上テロリストの脅威を受け、これまでに老人や女性を含む約4万人が犠牲なった事には、彼らを容認してきた米国、西側諸国に責任があるとしている。、、、以上は2019年10月10日付トルコ側メディアの報道の要約 参照記事 右写真は、戦車を先頭にTal Abyadに進攻するFSA民兵。FSAはマンビジュManbijへも進撃していると報道されている。 映像;Tell Abyad(Tal Abyad)地域に地上進行したFSA部隊  記録映像 
クルド人を主体とする民兵組織「シリア民主軍(SDF)」は国際社会に対し「差し迫った人道危機」から人々を守る措置として、飛行禁止区域を設定するよう要請した。トルコ軍の作戦開始を受け、西側諸国からは批判の声が上がっている。一方、エルドアン大統領は今回の作戦について、クルド人組織と過激派組織「ダーイシュ(イスラム国、IS)」の両方を標的にしたものと説明している。またトルコ政府は、国内のクルド人反政府勢力とつながりのあるSDFの勢力を弱めるために必要なものだと主張。
645x344-us-conducts-paトランプ米大統領は10月6日、これまで緩衝地帯となってきたトルコ・シリア国境周辺から米軍を撤退させると発表し、トルコによるシリアのクルド人攻撃を容認するものとして広く受け止められているが、トランプ大統領は米国と同盟関係にあるクルド人勢力を見捨てたわけではないと強調している。米国は2015年から、IS攻撃のクルド支援で2000人を駐留させ18箇所の基地を維持してきた。参照記事 参照記事

ccba48682019年10月11日;Tal Abyad とRas al-AynではクルドSDFとトルコ軍との軍事衝突が確認され、初めての地上戦でトルコ側に7人の死亡者が出たと報道された。カミシュリAl-Qamishli地域では現地10日夕方、双方が砲爆を行い、カミシュリ市民から負傷者が出ている。SDFは国境沿いのトルコ側へ砲爆を行っている。右は、シリア人権監視団Syrian Observatory for Human Rights:SOHRが10月9日確認した、トルコの空爆と攻撃地点 Tal Abyad とRas al-Aynからは、米軍はすでに撤退したとされる。緑色の逆三角が米軍基地、黒四角がIS兵士の収容所のある場所 
トラcivilians-fled-their-homes-in-vehicles-or-onンプ大統領がトルコとクルドの調停に乗り出したといわれる中、国連などでは、トルコの攻撃が強引Turkish assault was overwhelmingだとして対応が話し合われている。国連事務総長は、トルコの一方的軍事行動に懸念を表明している。国連事務所は、トルコの攻map-of-the-border-area-between-turkey-and撃で、約7万人が避難する状況になったと語った。
右下図は、トルコから9日砲爆を受けた地点(黄色丸)とトルコ主張の安全地帯"Safe zone,buffer zone"(総延長約400キロ)で、Tal Abyad とRas al-Ayn間で約120キロあり、国境から5キロ圏内に約45万人が居住しているといわれる 。トルコは安全地帯"safe zone,buffer zone"に、トルコ国内の360万人のシリア難民を移住させる計画を表明している。 参照記事 参照記事

イラン外務省は10日木曜、声明を発表してシリア領内でのトルコの軍事作戦に懸念を示すとともに、「軍事攻撃は、トルコの治安面での懸念を払拭する方法ではなく、人的・物的に甚大な被害を引き起こすことになる。このため、イランはこの行動に対する反対を表明する」とし、シリアとトルコの間に立って役割を果たす用意があり、現在もこの両国と連絡をとっている」とした。この声明ではまた、「発生した緊張の解消は、平和的な措置や、シリアの領土保全と国家主権への尊重、そしてアダナ合意の実施によってのみ可能だ」とされている。参照記事 アダナ合意については:過去ブログ:2019年10月トルコがシリア北部で戦闘準備 米軍は撤退>9日トルコ攻撃開始
e0d1358152144b468e15836ec22ad711_18日本時間10月11日午後4時ころのアルジャジーラ報道は、トルコ国防省が、戦闘3日目でクルド兵士277人を殺害したと公表したと報じた。一方クルドSDF側は、16人が死亡し33人が負傷したと公表した。トルコ側は自軍兵士1名が砲撃で死亡、3人が負傷としたが詳細は不明。米国はトルコに対しクルドとの仲介のほか、数千人規模の兵員の派兵による軍事的対応、財政的制裁を検討しているが、トルコが市民に対し、無差別攻撃や民族浄化などの非人道的対応をとった場合制裁処置を行うと表明した。写真はラス・アルアイン Ras al-Ainで、トルコ支援の反アサドの自由シリア軍FSAが市街地を制圧したと10月12日報道された。 参照記事 参照記事
2019年10月12日:アラブ連盟事務総長は、トルコのシリア進攻は、アラブ国家への主権の侵略だと非難し、イラク外相Mohamed Ali Alhakimもトルコの行為を非難した。トルコ側は、作戦開始からクルド兵士399人を無力化neutralised(殺害)し、自軍兵士29人が死亡したと語った。またトルコは、クルド地域にある米軍基地は攻撃対象にしないとしている。 参照記事
Abdi2019年10月13日:米CNNテレビは12日、クルド人主体の民兵組織「シリア民主軍」(SDF)のマズルム司令官SDF Commander General Mazlum Abdi:右 が10日、米国務省幹部と会合し「米国はわれわれを売った。われわれを見捨て、(トルコ軍に)虐殺させようとしている」と激怒したと報じた。SDFは過激派組織「イスラム国」(IS)掃討作戦で米軍に協力してきたクルド人勢力。
a0be9f6dトルコ軍による攻撃を黙認したトランプ大統領の対応に米国内でも「盟友への裏切り」と批判が高まっている。マズルム氏は、米国がトルコ軍の攻撃を中止させなければ、SDFはシリアのアサド政権や後ろ盾のロシアと協力し、トルコ軍に対抗すると主張した。参照記事 英文記事 参照記事 英文記事 参照記事:クルド関連 
9ea80509、、これまでのSDFとアサド政権はISとの攻撃で共闘してきており、クルドの主張は決して唐突ではないが、軍事的支配地域をめぐっては、シリア東部のユーフラテス川南北に油田、ガス田地帯が広がる事もあり軍事的衝突を繰り返したが、その都度両陣営は協議し、壊滅的な軍事衝突は避けてきた。 過去ブログ:2019年5月シリアの戦況2019年5月とシリアの宗派別分布と部族>戦況悪化 3月シリア東部抵抗続けるISとイラクでIS復活の兆し 3月SDFが3月17日戦況報告と収容所の悲惨な状況 シリア東部 3月SDFが最後の拠点への最終攻勢を開始 シリア 2月ロシア、イラン、トルコのシリア問題協議の4回目サミット終了 1月米軍撤収に向けトルコへの恫喝繰り返すトランプ シリア 2018年12月米軍シリア撤退へのトルコ、クルドの反応 12月紛争相次ぐデリゾール東岸油田地帯 シリア東部ISの抵抗 
5d9fccd601f2d273823e2019年10月13日:国際社会はトルコを非難しているが、長期政権の疲労感と経済難で支持率が以前ほどではないエルドアン大統領が支持率上昇のためにも強硬態度を簡単には止めないという観測も流れている。トランプ米大統領は「クルド人に被害が生じれば、トルコ経済を壊滅させる」と主張するが、シリア駐留米軍撤収中止のような実質的な措置を出す気配はない。戦闘では、兵器の攻撃能力でトルコ軍が圧倒的優位に立っており、SDF側の兵士に犠牲者が増え続けている。国連(UN)によれば、トルコの越境作戦によって、既に10万人が避難を余儀なくされている。参照記事 映像記録:トルコ兵によるクルド兵士の戦場での処刑など
トルコ共和国国防省はツイッター(Twitter)で、平和の泉作戦Operation Peace Springにおいて、地上と上空からの攻撃および無人航空機の支援により、分離主義テロ組織PKKのシリアにおける派生組織PYDとYPGのテロリスト480人が無力状態(死亡)になったと発表した。参照記事

nappi11 at 01:29│Comments(2) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

コメント

1. Posted by 甲東   2019年10月12日 09:14
日本の公安の記述は片手落ち。第1次大戦後のトルコは世俗化、西欧化まっしぐら。国内最大の敵は、トルコ人化への強制を拒む少数民族と、国を超えた連帯・平等を目指す共産主義者。シリアでは今でも共産党が議席を持っている。第2次大戦後は一層抑圧がひどくなった。勿論、ソ連も裏から随分チャチャを入れた。軍を筆頭とする世俗的(トルコ)民族主義者が無茶をするにつれ、前記2者の内の過激な(血気盛ん?)連中が共闘してPKK誕生。後は、現在に至るまでどっちもどっち状態。
どちらも、相手を完膚なきまでに潰そうとして互いに泥沼状態。いくらでも妥協の余地はあると思うのだが・・・
2. Posted by 甲東   2019年10月13日 07:26
日本のトルコ大好き研究者が今でも、PKKは共産主義者、と言っている。本当にそうだろうか。方便として共産主義、ひいてはソ連を利用しただけのような気がする。
1970年代初めのトルコのインフレ率は20%台だったが、79年には100%になったとか。そりゃ、万国の労働者、仕事のない若者は切れるだろう。一方で、トルコ人になれ、クルド文化は今すぐ潰してしまえと言う集団もいた。今でもいる。
異常に単一民族にこだわる理由の一つに、ロシア帝国に勝った日本もほんの少し影響しているかも。時間をかけて、ほんわりと取り込めば良いものを・・・

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