





中国の「一帯一路」構想は東欧や南欧でも存在感を高めている。

「ともに経済成長を促進する」と、クロアチアのドブロブニクで4月12日に開催された「16+1」の首脳会議で、ギリシャのチプラス首相は連携強化に期待を示した。ギリシャは今回の会議で旧共産圏以外では初めて正式な参加国として認められたため、来年からは一カ国増えて「17+1」となる。
ギリシャは2018年、「一帯一路」に関する覚書にも署名、対中関係の強化を進める。背景には2009年に発覚した財政赤字隠しに端を発する経済危機がある。EUは融資と引き換えに厳しい財政再建を要求。国民の不満が高まり、反緊縮を訴えるチプラス政権が誕生した。2016年には国内最大のピレウス港が中国企業に買収されたが、国民の根強い反EU感情も中国への接近を後押しする。
EU加盟交渉中のモンテネグロでも、中国の融資で高速道路建設が進む。だが同国の債務は国内総生産(GDP)の八割に上るとされ、国際通貨基金(IMF)は事業継続は不可能と警告。米シンクタンク、世界開発センターは、パキスタンやモルディブなど、一帯一路に伴う債務負担で脆弱(ぜいじゃく)な財政状況に陥った八カ国の一つにあげる。
欧州メディアによると、一帯一路の覚書に署名したEU加盟国は計15カ国。EU主要国には中国の影響力が拡大し、欧州の分断につながるとの懸念がある。それでなくてもEUは、ロシアへの警戒や難民問題から右傾化しEUに反発するポーランド、ハンガリー、チェコなどとの問題をかかえる。EUは2019年3月、中国を「競争相手」と位置付け、対中戦略の見直しに着手。だが2019年3月23日、イタリアがG7では初めて「一帯一路」推進に協力する覚書を締結しフランスが反発する等、
加盟国が足並みをそろえるのは容易ではなさそうだ。EU加盟国情報
<「16+1」> 中国が旧共産圏の中東欧諸国と経済関係の強化を図る狙いで、2012年に創設した枠組み。EU加盟11カ国とEU加盟を目指す西バルカン地域の5カ国が参加する。中東欧地域は5億人を超えるEU市場への玄関口にあたり、中国は100億ドル(約1兆1000億円)規模の融資枠を設け、積極的なインフラ投資を進めてきた。参照記事 参照記事PDF:「一帯一路」戦略による中国の東ヨーロッパ進出-「16+1」をどう見るか- 過去ブログ:2019年4月日本からアフリカへ専門家を派遣し一帯一路「借金漬け」を把握 2018年11月ボスニアに集中する中東難民と劣悪な環境での越冬 11月右傾化するポーランド、なぜ欧州に背を向けたか 9月国粋主義台頭に懸念の欧州議会、ハンガリー制裁提案を採択 2016年11月ブルガリアの難民キャンプで暴動 6月英国のEU離脱と日本の政治家が見るべき点