中国共産党政府が世界的に影響を強める中、カナダを含む米国、英国、オーストラリア、ニュージーランドは各国諜報当局情報の相互協定UKUSA協定(ウクサ協定*通称ファイブ・アイズ:5-Eyes)の情報協力を強化している。ロイター通信2018年10月12日は、複数の国の政府関係者の話として、ファイブ・アイズの5カ国に加え、日本とドイツの諜報当局は協働して中国共産党の対外浸透工作について調査することで意見を一致させているという。日本政府は同取材に回答していない。*5-Eyesの始まりは古く、1946年にアメリカとイギリスが結んだUKUSA協定(United Kingdom – United States of America Agreement)がベースで、この協定は通信諜報、通信をスパイしてその情報を2カ国で共有するという内容だった。その後オーストラリア、カナダ、ニュージーランドが加盟して、計五カ国での協定が結ばれ、「5-Eyes」と呼ぶようになった。
この背景には、カナダのジャスティン・トルドーJustin Trudeau首相:左 が2018年11月30日から12月1日までブエノスアイレスで開かれたG20サミットで、中国とフェンタニル問題で協働していると従来通りの見解を示し、また、危機的状況はさらに悪化しているとの認識も明らかにした事がある。
この、一般総称オピオイド(opioid:ケシを材料にする麻薬性鎮痛薬やその関連合成鎮痛薬など化合物。鎮痛剤、医療用麻薬として医薬品名フェンタニル:Fentanylがある)による危機は米国でも深刻で、年間数万人の死者が出ている。2017年には非常事態宣言が発布された。米国が輸入するほぼすべての鎮痛薬は中国が製造する。過去ブログ:2018年3月トランプ氏、応援演説会で麻薬犯罪への死刑を強調する 2017年8月中国発の麻薬フェンタニル過剰摂取で年に数万人が死亡 米国 2016年6月プリンスの死因は鎮痛剤の過剰摂取と確定
カナダの外交情報筋によると、過剰摂取で死に至る鎮痛剤フェンタニルで安価な中国製がカナダに大量流入しており、両国の外交の上位課題であると位置づけていると同国メディア・グローバルニュースは12月1日に伝えた。
主に中国南部の工場で生産され、コンテナで海上輸送され、北米に中国から大量流入するフェンタニルは第二の「アヘン戦争」と例えられている。ヘロインよりも安価で入手しやすく、闇の薬品販売サイトで購入されている。日本では手術中や重大疾患の鎮痛薬として医療機関から限定的に処方される。カナダ当局の9月発表統計によると、2016年1月から2018年3月までにオピオイド関連
死は8000件以上にのぼり、「全国的に深刻な合成鎮痛薬(オピオイド)危機が続いており、家族や地域社会に破壊的な影響を及ぼしている」と書いている。左上の図は、中国からのフェンタニルやその原料の流通。フェンタニルには粉末や錠剤もあり、未加材料precursorsの一部
はカナダやメキシコで加工されて米国へ流れ、その逆もある。また、中国発の通販の存在もあり、密輸が簡単になり、中国発の犯罪は世界規模に拡散し摘発は困難となっている。米国におけるオピオイド中毒は、1980年代のクラック・コカインなど過去の薬物危機と比べ、過剰摂取による死者数も多く、その期間も長引いている。医療専門家は欧州への波及を危惧している。 参照記事 英文記事 英文記事