
注ぎ込む水量が減少したため、湖の塩分濃度は上昇し、豊富にいた淡水魚の数が減少し始め、20種の固有種が死滅し、

人々は仕事を求めて他の地域へ移住せざるを得なくなった。地元に残った人々も、干上がった湖底による砂嵐などの局地的な異常気象と、砂ぼこりに含まれる化学物質による健康被害に苦しめられた。
ソ連崩壊後、現在はソ連から独立したカザフスタンとウズベキスタンにまたがるアラル海は、わずか30年もたたないうちに元の面積の10分の1にまで縮小し、環境科学者をして史上最悪の環境破壊のひとつとまで言わしめた。

一方カザフスタンの北アラル海は、幸い世界銀行などからの支援を受けて、8600万ドルの環境回復プロジェクトに取り組んだ。周囲を取り巻く既存の堤防を修復して流出を防ぎ、全長13キロにも及ぶコクアラル(コカラル)・ダム(堤防)をシルダリヤ川の南に建設した。2005年夏に完成したダムは予想以上の効果を上げ、わずか7カ月で水位は3.4メートル上昇した。
当初は、この数字にたどり着くまで3年はかかると考えられていた。ダムが完成してからは1リットル当たり平均30グラムだった塩分濃度が8グラムまで低下し、おかげで約20種の淡水魚がシルダリヤ川から戻ってきた。

現在北アラル海の漁獲高は2006年の6倍に増加したという。
2006年当時、1360トンの漁獲高のほとんどはヒラメだったが、2016年の漁獲高は7106トンで、最も多く捕れたのはブリーム、次いでコイ科のローチ、そして人気のパイクパーチも捕れるようになった。2018年には、漁獲制限量が8200トンに設定されている。魚が戻ってきたことから、内陸の町アラリスクでは魚の加工工場や商業も活気を取り戻している。


だが、良いことばかりではない。魚の繁殖期にあたる5月から7月に、密漁が多発するようになったというのだ。アラリスク出身の漁師アルダンベク・ケリノフさんは、「昼間は検査官の目があるので、夜間に漁に出る人が多いです。ここにはほかに仕事もなく、漁が主な収入源なので、禁漁期間など関係なく漁に出る人が後を絶ちません」 と語る。写真:厳しい寒さのなかでの漁は大変な作業だが、稼ぎは良い。(PHOTOGRAPH BY TAYLOR WEIDMAN)参照記事 参照記事