ロシア人元実業家のニコライ・グルシュコフ（Nikolai Glushkov）氏（68）が、英ロンドンの自宅で不審死を遂げたことが分かった。英ロ両国のメディアが2018年3月13日、報じた。報道によると、グルシュコフ氏は12日、ロンドン南西部ニューモールデン（New Malden）の自宅で、娘のナタリアさんによって発見された。ロシア紙コメルサント（Kommersant）は遺族の話として、同氏の遺体には「首絞の跡」があったとした上で、他殺か自殺かは今のところ不明と伝えている。同氏は、ロシアのウラジーミル・プーチン（Vladimir Putin）大統領反対派だった故ボリス・ベレゾフスキー（Boris Berezovsky）氏とつながりのある人物だった。グルシュコフ氏は2017年、ロシアで詐欺や資金洗浄の罪で禁固8年の実刑を宣告されたが、すでにロンドンに在住しており、英国から政治亡命political asylum認定を受けた。
英国紙は3月16日、ロンドン警視庁（Metropolitan Police、Scotland Yard）が、ニコライ・グルシュコフ氏が絞殺されていたと報じ、不審死は殺人事件になった。参照記事

英国では現在、2018年3月4日にイングランドで起きた、英国に亡命した元二重スパイのロシア人男性、セルゲイ・スクリパリ（Sergei Skripal：66歳）氏と娘のユリア（Yulia Skripal：33歳）さんが正体不明の物質（神経剤nerve agent）にさらされ重体となっている事件に関心が高まっており、英政府は過去に不審な死を遂げた14人のロシア関係者に関する再調査を行う意向を表明していた。
この事件は、第2次世界大戦（World War II）以降、欧州における最初の神経剤攻撃と考えられている。ロシアのセルゲイ・ラブロフ（Sergei Lavrov）外相は、「ロシアに罪はない」と主張し、英国に協力する用意はあるが、神経剤のサンプル提供の要請を拒否したとされる。一部報道では、スクリパリ氏が所有するＢＭＷのドアに致死性の猛毒が塗られていたと報じているが、猛毒に被爆した流れは特定できていない。娘さんは事件前日の3月３日にモスクワから戻ったばかりだった。
たとえば猛毒サリンは、少量が皮膚に付いても死に至るか、深刻な後遺症を起こす場合があるが、更に強力な神経剤が使われたと英国首相が12日に発言している。詳細は下記　
スクリパリ氏とユリアさんは、ウィルトシャーの州都ソールズベリー (Salisbury)にあるショッピングセンターの外のベンチで倒れているところを発見された。事件目撃者のジェイミー・ペインさんによると、女性は口から泡を吹き、目を「大きく開いて白目になって」気絶していた。男性は「体が硬直し、腕も動かなくなったが、それでもまっすぐ前を見据えていた」という。重体が続いているが、容体は安定しているという。倒れる前に二人がいたレストランとパブは閉店され、店内が洗浄されている。参照記事　参照記事　参照記事
ロシアで大きな影響力を持つ新興財閥（オリガルヒoligarch）だったベレゾフスキー（Boris Berezovsky）氏：写真左　は、一時はプーチン氏を支持していたものの、後に反プーチン派に転向し、チェチェン反政府勢力Chechen rebelsに個人的に資金支援していたとされる。2013年3月に、政治亡命していたロンドン郊外の自宅の浴室で首つり遺体で発見されている。ベレゾフスキー氏が所有していた航空大手アエロフロート（Aeroflot）や自動車大手アフトワズ（Avtovaz）で幹部を務めた経験がある、3月12日に不審死したグルシュコフ氏は当時、ベレゾフスキー氏は何者かに殺害されたとの見解を示していた。参照記事　参照記事　参照記事

ロンドンに集中する英国在住ロシア人の人口は約10万人。これは欧州諸国の首都の中で最も多い。彼らがロンドンに引き付けられる理由は、ロシアで最も人気のある外国語が英語であること、ビジネスがしやすく、また巨万の富を移動しやすいことなどが挙げられる。
モスクワ筋は、1959年以降暗殺指令はしていないというが、1978年ロンドンでのブルガリア人反体制活動家Georgi Markovの毒殺、2007年の前KGBメンバー アレキサンダー・リトビネンコ中佐Alexander Litvinenkoの放射性物質による毒殺はロシア側の暗殺と言われ、彼の残した遺書らしきものには、自分への暗殺命令はプーチン大統領だと書かれていた。参照記事　過去ブログ：2010年11月ロシア　裏切り者へ暗殺指令！
2018年3月14日：英国のメイ首相は12日、元二重スパイのロシア人男性、セルゲイ・スクリパリ（Sergei Skripal）氏（66）らへの犯行に使われた毒物が旧ソ連で開発された神経剤Nerve agent「ノビチョクNovichok」と特定されたことを明らかにしている。
ロシア語で「新参者」を意味するこのノビチョクが、極秘で開発が進められたのは米ソ冷戦時代の１９８０年代で、現在も、ロシアを除いてノビチョクを開発している国はないとみられる。英レディング大学で薬物学を専攻するギャリ―・スティーブンス教授によれば、ノビチョクの人体への危険性はサリンやＶＸガスといった他の神経剤を上回る。症状として心拍数の低下や気道狭窄（きょうさく）が起こり、多くの場合窒息の苦しみにさいなまれながらゆっくりと死を迎えるとされる。
治療法はなく、酸素や抗けいれん薬を投与するといった支持療法により延命を試みることになる。 ノビチョクは無色透明で臭いも味もしないため、運搬が容易だ。参照記事　参照記事
2018年３月15日：英国は１４日、英国の ジョナサン・アレン国連大使Mr. Jonathan Allen, Deputy Permanent Representative of the United Kingdom to the United Nationsが化学兵器禁止機関に対し、 ロシア連邦軍参謀本部情報総局の元大佐、セルゲイ・ スクリパリ氏とその娘ユーリヤ氏の服毒事件について自国が出した帰結を調べるよう要請する声明を表し、国連安保理は日本時間１５日、午前４時から会議を開始した。公開形式で実施されるはずだったが、現在は安保理メンバーらが非公開形式で協議を続けている。アレン大使はさらに、ロシア側は事件についての説明を行わなかったことから、英国はこれは「化学兵器拡散禁止に反対するため、国家が金を払ってやらせた行為」だったという結論に達したと断定している。参照記事
英国のメイ首相は１４日、英南西部ソールズベリーで今月、元二重スパイのロシア人男性とその娘に軍用神経剤が使用された事件を巡り「これはロシア政府による英国に対する違法な武力行使に相当する」と述べ、２３人のロシア外交官に国外退去を要請することを議会で明らかにし、6〜7月にロシアで開催されるサッカーのワールドカップ（W杯）への王室メンバー派遣を見送ることも明らかにした。参照記事　参照記事
ヘイリー米国連大使も１４日、ロシアに責任があるとの認識を示した。ヘイリー氏は国連安全保障理事会で「英国で２人に対し、軍用神経剤を用いた攻撃の責任はロシアにあると、米国は確信している」と述べた。ロシア側は、化学兵器剤は2007年にすべて破棄しており、英国情報部Ｍ１６は過去に、ロシア人スパイを雇い入れた事があると、陰謀説を主張している。　参照記事
2018年3月29日：ロンドン警視庁は２８日、ロシア連邦軍参謀本部情報総局（ＧＲＵ）のセルゲイ・スクリパリ元大佐（６６）と長女のユリアさん（３３）が神経剤nerve agentで襲撃され、重体となった事件で、元大佐の自宅表玄関のドアから「これまでで最も高濃度の神経剤の痕跡」が検出されたと発表。２人が表玄関のドアで最初に神経剤と接触した可能性があると明らかにした。長女は２０１４年まで英国で父と同居していたが、モスクワに戻り会社員として働いていた。２週間の休暇を取り事件前日の2018年3月３日に飛行機で英国に到着しており、ロンドン警視庁のテロ捜査対策班では３日から４日朝に元大佐の自宅を何者かが訪れ、表玄関から旧ソ連が開発した軍用神経剤「ノビチョク」を仕込ませたとの見方を強め、不審者の割り出しを急いでいる。
まだ入院している二人は、回復しても正常に戻るのは難しいといわれている中、親子が治療を受けている地元病院は29日、娘のユリア・スクリパリ（Yulia Skripal）さん（33）が重体の状態を脱したと発表した。この事件に絡み、米英露は互いに非難の応酬と外交官追放などの報復に出ている。この事件では後日、自宅で飼っていたモルモット2匹が死んでおり、毒物の影響を受けて苦しんでいた猫1匹は安楽死させたと公表されている。参照記事　英文記事　参照記事　参照記事
2018年4月6日：スクリパリ（ Skripal）氏の家の猫とモルモットが死亡したことで、動物の倫理的扱いを求める団体PETA（People for the Ethical Treatment of Animals）が、2度とこのような事があってはならないと、ペットを保護しなかった政府の対応を非難した。もう一匹猫が居たが、逃げ出して行方不明だとされている。参照記事
回復が不可能とまで言われたセルゲイ・スクリパリ（Sergei Skripal）氏は現在、急速に様態を回復し、危険な状態を脱したと報道された。娘さんも回復しつつあると先に報道されている。ロシアは、一貫して関与を否定している。参照記事
この事件には不明な点が多いまま、ロシア犯人説が流れている。英国防科学技術研究所（Defence Science and Technology Laboratory、Dstl）は2018年4月3日、ロシアの元スパイ毒殺未遂事件に使用された神経剤を分析した結果、ロシア製だと証明することはできなかったと明らかにしている。まだロシア説とする証拠が見つかっていないのが事実だ。参照記事