ワシントン・ポスト(WP)が、アメリカの当局者によれば、トランプ大統領が、シリアのバッシャール・アル・アサド政権と戦っている“穏健”シリア反政府派に武器を与え、訓練するCIAの秘密プログラムをやめると決定したと2017年7月19日報じた。現在に至る米国の反シリア政府穏健派支援プログラムは、トランプの前任者オバマ大統領が2013年に承認したものだ。今回のこの動きをマスコミは、ロシアに対する譲歩で「これは容易ならざる決定だ«This is a momentous decision,»」として報じている。リンジー・グラハムLindsey Graham 共和党上院議員はツイートで“もし本当なら、そうではないと願っているが、アサドとロシアとイランに対する完全降伏だ”。とつぶやいた。だがこれは本当に譲歩や、大きな政策変更なのだろうか?
と、翻訳記事は書いている。結論からいえば、どうやらトランプ氏のいつもの軽口を、WP紙が大きく報じたのが真相のようだ。この状況をウォール・ストリート・ジャーナル紙は、「トランプは支離滅裂だ:Trump is losing its coherence」と書いている。 米国防省の流れや今後の米国の対シリアの出方などが英文記事で書かれているが、文章の構成が複雑で、結果的に翻訳文を読んでも分かりづらい。以下に筆者が引用、編集し直した内容を下記に書きとめておく。結論を書けば、トランプ氏の発言とは反対に、米国防省ペンタゴンは、シリア、イラクへの影響力を強化はしても削減する方向には無いようだ。
アメリカは関与を縮小しつつあるわけではない。逆にシリアにおいても、イラクにおいても、アメリカは軍事駐留を急速に強化しつつあり、例えトランプ政権がCIAの「穏健な反体制派」への教練プログラムを止めたとしても、米国防省ペンタゴンの方針に変化はないだろう。
現状について7月17日、トルコのアナドル通信は、軍施設のありかの詳細、場合によっては、そこに駐留する米特殊作戦部隊の人数まで含む記事を報じた。コバニKobani、マンビジManbijとハサカ県のルメイランRmeilan、Hasakahなどにある二カ所の飛行場と、8カ所の前哨基地が、クルド民主党
(PYD)とその武装部門、クルド人民防衛隊(YPG)を支援するために使用され、ラッカ県北部の町アイン・イッサAyn Issaの前哨基地は、約200人のアメリカ兵と、75人のフランス人特殊部隊兵士を擁している。
7月27日時点で、ラッカRaqqahの50%を制圧したクルド軍民主防衛隊SDF支援で、最近トルコ国境にある北東シリアの都市、カーミシュリーQamishlo(Qamishli)地域に駐留する部隊が、MRAP、M-ATVや装甲を強化したブルドーザーを含むアメリカ製車両で強化された。参照記事
これらは、米国防省の2018年度のシリアの提携部隊を訓練する予算要求にも含まれている。6月、米軍の高機動ロケット砲システムHIMARSがシリア・イラク間の三つの国境検問所の一つ、シリア南東部、ヨルダン国境に近いアルタンフAl Tanf基地に移動され、戦車とヘリコプターを持ったアメリカ、イギリスと、ヨルダンの軍が、シリア南部のヨルダン国境からわずか数百メートルの農村地域テル・シャハブから、アル・ナシブ国境検問所 Nassib Border-Crossingやヒルベト・アワド村などの長い帯状の地域に駐留していると報じられている。そして、シリアに進入する重武装アメリカ戦闘車輛移動の写真は、特にシリアで、アメリカが軍事駐留をいっそう強化していることを実証しているようだとされている。
2017年3月のAP報道によれば、アメリカ合州国は、これまで115億ドル以上をシリア介入に費やしている。数百人のアメリカ特殊作戦部隊員がクルド民兵戦士を訓練するという口実でシリアに派兵されているが、広範囲なシリアでの米軍駐留と最近のミサイルを含む装備強化は、アサド政権軍や親イランのヒズボラ、イラン民兵などを寄せ付けない為と解釈されている。
シリアはこれまで、アメリカ合州国を攻撃していない為、米国の2001年の軍事力行使のための権限(AUMF)は、9/11のテロ行為と何の関係もないシリアに入るいかなる権限も与えていないし、国連憲章は報復や制裁や懲罰のための軍事力の行使を禁じている。しかし米国の現政権は議会に、イラクとシリア内に新たな“一時的”施設を構築する権限を認めるよう要求しているし、トランプ大統領は議会に、施設の“修理修復”だけを対象にしている既存の権限を、“一時的な中間部隊集結地、弾薬補給所や十分に軍隊を保護できる兵站基地”も対象にするよう拡張させたがっている。
米軍司令官であるステファン・タウンセンド中将は、イラク軍がモスルを奪還した後、作戦をユーフラテス川流域に拡張する予定だと述べ、ハイダル・アル=アバーディイラク首相は、イラク国内でのISに対する戦いが終わった後、イラク内で、アメリカ軍を維持することをトランプ政権との交渉している。右は、モースル攻撃を支援する、イラクの駐留米軍。現在米軍はイラクに約7,000人の兵士を駐留させている。
アメリカ合州国が、地域で戦争準備を強化している複数の兆しは誰の目にもあきらかだ。任務の一つは、イランとの間で起こりうる紛争に備えること。もう一つは、シリア国内の緊張緩和地帯について、そして、ジュネーブでの危機管理に関する交渉で交渉上の立場を強化することだ。
一方外交的には、ロシアとアメリカが率直な会話の出来る今の関係は、シリア、イラクで最悪の事態が起きるのを防ぐ上で役に立つだち、モスクワは、アスタナ・グループ(シリア問題を協議するカザフスタンの首都アスタナでのアスタナ会議:左 に参加したトルコ、ロシア、イランなど)とアメリカが率いる連合との間の仲裁者として機能できるだろうと言われている。
シリア、イラクの紛争は、宣戦布告の無いまま戦争規模にまで拡大したが、今後時間はかかるが、恐らく明確な収束宣言の無いまま沈静化していくのかもしれない。一時言われた、世界大戦の危機は脱したかに見える。だが米国は安堵してはいられない。アフガンの状況は危機的でさえあるからだ。また、軍事的に強大になったレバノンのシーア派組織ヒズボラの問題も浮上しており、トランプ米大統領は7月25日、レバノンのハリリ首相と会談し、米国がレバノン政府の政権維持を軍事的に支援する事を表明している。

2017年7月28日の記事によれば、ハウィジャHawijaに終結するISとキルクークkirukuk南西35キロAbbassi regionのISの組織が内部対立の末内戦になり、内部で相当数の死傷者を出したと言われている。原因は、生存が不確かなリーダー Abu Bakr al-Baghdadiとの関係と言われ、ハウィジャの組織は独自に新リーダーをカリフとして擁立し、他の組織にも従属を要求していた。またTal Afarでは、狙撃手上がりの女性が新たな指揮官として選出されたとの報道があり、この地域では、逃亡を図ったり、怖気づいた仲間のISを処刑したり、耳をそいだりしているとされる。参照記事

この地域のISは、キルクーク南東部、サラフディン県Saladin Provinceのトゥーズ・フールマートゥーTuz Khurmatu地域(キルクークから約75キロ。テュルク系民族トルクメン人Turkmenが多く住む:左分布図)のペシュメルガPeshmergaの陣地にも度々攻撃を行なっており、2017年7月29日夕方にも30人ほどのISが攻撃を行い、ペシュメルガPeshmerga側がISを撃退したとクルド側が報じている。クルド側はTuz Khurmatuの西側に43キロに及ぶ塹壕や監視塔を設け、ISの動きを警戒している。参照記事 参照記事
2017年7月31日:31日の報道では、Tal Afarから西のシリア国境に近いTal Sufouqへイラク軍の空爆が行われ、IS兵士20人と車輌6台を殲滅したとある。シリア側からTal Afarへの補給路確保を狙ったのか?参照記事
と、翻訳記事は書いている。結論からいえば、どうやらトランプ氏のいつもの軽口を、WP紙が大きく報じたのが真相のようだ。この状況をウォール・ストリート・ジャーナル紙は、「トランプは支離滅裂だ:Trump is losing its coherence」と書いている。 米国防省の流れや今後の米国の対シリアの出方などが英文記事で書かれているが、文章の構成が複雑で、結果的に翻訳文を読んでも分かりづらい。以下に筆者が引用、編集し直した内容を下記に書きとめておく。結論を書けば、トランプ氏の発言とは反対に、米国防省ペンタゴンは、シリア、イラクへの影響力を強化はしても削減する方向には無いようだ。
アメリカは関与を縮小しつつあるわけではない。逆にシリアにおいても、イラクにおいても、アメリカは軍事駐留を急速に強化しつつあり、例えトランプ政権がCIAの「穏健な反体制派」への教練プログラムを止めたとしても、米国防省ペンタゴンの方針に変化はないだろう。


これらは、米国防省の2018年度のシリアの提携部隊を訓練する予算要求にも含まれている。6月、米軍の高機動ロケット砲システムHIMARSがシリア・イラク間の三つの国境検問所の一つ、シリア南東部、ヨルダン国境に近いアルタンフAl Tanf基地に移動され、戦車とヘリコプターを持ったアメリカ、イギリスと、ヨルダンの軍が、シリア南部のヨルダン国境からわずか数百メートルの農村地域テル・シャハブから、アル・ナシブ国境検問所 Nassib Border-Crossingやヒルベト・アワド村などの長い帯状の地域に駐留していると報じられている。そして、シリアに進入する重武装アメリカ戦闘車輛移動の写真は、特にシリアで、アメリカが軍事駐留をいっそう強化していることを実証しているようだとされている。
2017年3月のAP報道によれば、アメリカ合州国は、これまで115億ドル以上をシリア介入に費やしている。数百人のアメリカ特殊作戦部隊員がクルド民兵戦士を訓練するという口実でシリアに派兵されているが、広範囲なシリアでの米軍駐留と最近のミサイルを含む装備強化は、アサド政権軍や親イランのヒズボラ、イラン民兵などを寄せ付けない為と解釈されている。
シリアはこれまで、アメリカ合州国を攻撃していない為、米国の2001年の軍事力行使のための権限(AUMF)は、9/11のテロ行為と何の関係もないシリアに入るいかなる権限も与えていないし、国連憲章は報復や制裁や懲罰のための軍事力の行使を禁じている。しかし米国の現政権は議会に、イラクとシリア内に新たな“一時的”施設を構築する権限を認めるよう要求しているし、トランプ大統領は議会に、施設の“修理修復”だけを対象にしている既存の権限を、“一時的な中間部隊集結地、弾薬補給所や十分に軍隊を保護できる兵站基地”も対象にするよう拡張させたがっている。

アメリカ合州国が、地域で戦争準備を強化している複数の兆しは誰の目にもあきらかだ。任務の一つは、イランとの間で起こりうる紛争に備えること。もう一つは、シリア国内の緊張緩和地帯について、そして、ジュネーブでの危機管理に関する交渉で交渉上の立場を強化することだ。

シリア、イラクの紛争は、宣戦布告の無いまま戦争規模にまで拡大したが、今後時間はかかるが、恐らく明確な収束宣言の無いまま沈静化していくのかもしれない。一時言われた、世界大戦の危機は脱したかに見える。だが米国は安堵してはいられない。アフガンの状況は危機的でさえあるからだ。また、軍事的に強大になったレバノンのシーア派組織ヒズボラの問題も浮上しており、トランプ米大統領は7月25日、レバノンのハリリ首相と会談し、米国がレバノン政府の政権維持を軍事的に支援する事を表明している。




2017年7月31日:31日の報道では、Tal Afarから西のシリア国境に近いTal Sufouqへイラク軍の空爆が行われ、IS兵士20人と車輌6台を殲滅したとある。シリア側からTal Afarへの補給路確保を狙ったのか?参照記事
イラク・トルクメン戦線が掲げている物で、実情に合っていない大風呂敷です。
ただ、ふっと最近思います。第1次大戦開始前までは、オスマンに忠誠を尽くす人達が、スンニ派アラブとクルドを分断するような形で数百万人いたのかもしれないと。
遠い昔、中央アジア方面から来た本当のトルコマンだけでなく、南北コーカサスの人、ひょっとするとクリミアタタール人も・・・テュルクとは言いがたい人も含めて。
第1次大戦でモスル州までイギリスに取られたときに、大量にトルコに引き揚げたか。
エルドアンの本心でもあるのでしょう。でも、実情は余りに違うので、さすがのエルドアンも大声を出せない・・・