

シリアで市民紛争が激化し、現アサド大統領の父親(ハーフィズ・アル=アサドHāfiz al-Asad前大統領以来のアサド政権の弾圧、拷問、処刑が顕著になった2011年10月4日、国連安全保障理事会にシリア制裁決議案が提出されたが、中国とロシアが拒否権を行使したため、否決された。このことが紛争の長期化を招き、今に至る40万人近い犠牲者を生む一因になったと筆者は思っている。
ロシアが中東のイラン、イラク、シリア、トルコで権益を拡大するのは、イスラム過激派の台頭が、ロシアのコーカサス地域で長引く民族問題にも影響するからだけでなく、特にシリアに関しては、NATO、米軍の影響力を警戒するロシアにとって地理的、軍事的な重要性から同盟関係に固執していると見られている。過去ブログ:2016年8月イランでIS組織がテロ計画、ロシアがイランの基地使用公表ロシア紙は2016年8月20日、中国国防部外事弁公室の関友飛主任がシリアの首都ダマスカスで、同国のファハド・ジャセム・フレイジ国防相と会談し、「両国がスタッフの研修プログラムの拡大で合意し、「中国軍はシリアに人道支援を提案した」と報じている。参照記事
中国国防部の人道支援とはあまりに意味不明だが、習近平中国共産党中央委員会総書記・国家主席・中央軍事委員会主席が2016年8月17日、北京の人民大会堂で「一帯一路(シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード)」建設事業の推進を強調したことにも関係しているのだろう。彼は「我々は経済の持続的かつ健全的な発展を維持するためには、グローバルな視野を確立し、国内と国際の二つの大局をより自発的に統一して案配し、全方位的な対外開放大戦略を全面的に策定し、より積極的かつアクティブな姿勢で世界に向かわなくてはいけない」と強調している。 参照記事

それがロシアが耕した庭先であろうと、隙を見ては種を植え、せっせとその実を刈り取ろうとする中国が透けて見えてくる。中国は、その庭下に、地主の手でいかに多くの市民が埋められていようと、それもまた肥やしになるほどにしか思っていないのだろう。日本政府は現在、ロシアとの経済関係強化の前提として、ロシアとの平和条約締結に向け協議をしているが、その締結が、日本がロシアの庭先にならない配慮はされているのか、非常に気になるところで、この視点からの識者の評論や議論が見受けられないのは残念なことである。 過去ブログ:2016年4月シリア紛争、5年で40万人が犠牲に 2014年7月アフリカのテロの影に中国 2012年12月シリア軍は「凶悪なギャング集団」 シリア 4月ならば、アサドは狂っている シリア 2012年2月和平協議翌日からの猛攻撃 非常事態のシリア 2012年2月同盟は血よりも濃いのか>世界60カ国が中露非難 2012年1月大統領の私兵シャビハの市民狩りの実態 シリア 2011年12月緊張高まる中近東 シリア孤立>内戦か? 12月シリアにいらだつアラブ諸国、トルコ