Nawaz-Jinping-Re2015年4月21日:中国の習近平(シーチンピンXi Jinping国家主席が2015年4月20日、就任後初めてパキスタンを訪問した。中国とアラビア海を結ぶ輸送路の整備など5兆円規模のパキスタン国内への巨額投資・融資案件の文書に両政府が署名した。中国は、パキスタンへの、中国として前例のない、これまでで最大規模の経済支援をテコに南アジアへの関与を強化する。米国の影響力低下をにらみ、同地域での主導権をうかがう狙いもあるようだ。写真は2015年4月20日、パキスタン首相 ナワーズ・シャリーフ氏Pakistani Prime Minister Nawaz Sharifと習近平(シーチンピンXi Jinping)中国国家主席

8837316382427322080069e8fbd 中国の最高指導者がパキスタンを訪問したのは9年ぶり。シャリフ首相との首脳会談の目玉は、アラビア海沿岸のグワダル港Gwadarから中国新疆ウイグル自治区Xinjiang Uyghur Autonomous Regioカシュガル(喀什市Qeshqer,Kashugar)に至る「経済回廊」計画の本格始動だった。輸送路の整備や、周辺の発電所、産業インフラの建設を含み、パキスタン側の説明では、総事業費は約450億ドル(約5兆3千億円)で、中国側は投資や低利融資で支援する。まず、約280億ドル(約3兆3千億円)分について着手する方針だ。中国は以前、グダワル港から中国新疆地区に至る石油、天然ガスパイプラインの計画にも言及している。これら、将来的な大がかりな計画を見据えた上での、今回の大型インフラ投資と見てとれる。同時にこのことは、中国製武器による、パキスタンの軍事力強化も暗示している。 過去ブログ:2011年11月進む中国のインド洋支配 パキスタンに軍港

p2_img3045645-031またすでに公開された中国側のパキスタンでの事業投資には、石炭などの資源開発、火力、水力、太陽光、風力発電の発電所建設、鉄道、道路整備などの大型投資が計画されている。この計画では、パキスタンからヒマラヤ山脈を抜ける道路整備が必要になり、すでに環境破壊が懸念されている。急速な経済発展で、とくに国全体で67%台の電力供給率は深刻な問題で、一部で天然ガスは産出するがパキスタンは資源輸入国で、インダス川を利用した水力発電の充実が期待されている。現在インダス川 Indus River(インダス川本流の93%はパキスタン領内であり、5%がインド、2%が中国領を流れる)上流のガジ・バロータ水力発電所は日本の国際協力のもと、約349億円の円借款で1994年に着工、2005年から稼働しているが、パキスタンの電力供給の63%を火力発電に依存しており、巨大な投資と時間のかかる水力発電は3割に留まっている。この視点で見れば、中国はかなりアジア圏での日本の経済支援を意識していることが見えてくる。また、2009年以来の米国のパキスタンへの経済援助は50億ドル規模で、今後中国のパキスタンへの影響力が増大するだろう。参照記事 参照記事

c3fa31f3 回廊の起点となるグワダル港はペルシャ湾の出口ホルムズ海峡に近い。南アジア各国のインド洋沿岸で中国が開発を進めるシーレーン上の拠点「真珠の首飾り」の一つとされ、中国の融資で2002年から建設が始まり、13年に管理権が中国側に移管された。港と回廊をつなぐことで、米国の影響下にあるマラッカ海峡を迂回(うかい)してペルシャ湾に至る新たなルートを確保する狙いがあるとみられる。参照記事 過去ブログ:2015年4月イエメンでアルカイダ系受刑者300人脱獄と中国の進出 2011年11月進む中国のインド洋支配 パキスタンに軍港

2015042101002416パキスタンを訪問している中国の習近平国家主席は4月21日、イスラマバードISLAMABADの上下両院合同議会で演説し「両国の運命共同体としての中身を充実させ、アジア運命共同体の構築に向けたモデルにしよう」と呼び掛け、パキスタンが「テロとの戦い」で「目覚ましい貢献」をしてきたと称賛、テロ対策で連携を深めていく考えを強調した。参照記事 英文記事 

インド紙は、インド洋のアラビア海に面するグワダルGwadar portから、パキスタン占領地カシミールPakistan-occupied Kashmir (PoK)を抜けて中国に達する「3000キロの(経済)回廊The 3,000-km corridor建設」は、道路、鉄道、エネルギー計画、パイプライン、投資地区の規模に於いて壮大なプロジェクトと紹介しながらも、インドと領土紛争継続中のカシミール地域を抜けるこの中パの計画を決して歓迎はしていないようだ。

5e15f05ef6b3c85f実はこの計画、図のような実に複雑な領土問題を抱える地域を横断する。鉄道は、停戦ラインの北側(右図のグレー色 インドの言うパキスタン占領地)を通って中国、新疆ウィグル地区に抜ける構想になっている。習近平国家主席が演説でテロ対策に触れているが、これは今後の、中国新疆地区でのテロの取り締まり強化を暗示し、国際的な同意を求めているようにも取れる。しかし、中国が新疆地区のイスラム教徒を弾圧すれば、アフガン国境沿いで活動するタリバンなどイスラム過激派が反応する可能性も高い。そんな懸念から習近平国家主席はパキスタンのテロ対策を称賛し連携すると発言したのだろう。中国が今後、パキスタン軍のイスラムテロに対する武器支援などを行えば、イスラム過激派が、この計画を妨害する可能性もあるだろう。この「経済回廊」計画には、イスラムの宗派対立や国境問題、新疆ウィグルの民族弾圧が影を落とかねない様に思われ、さらに憂慮すべきは、中国もパキスタンも汚職大国であり、先行きは決して安泰には見えない。過去に国境問題でパキスタンと対立したアフガンは、インド寄りの国家政策であるが、中国は資源開発でアフガンにも触手を伸ばしている。 b67805f7

インド側英文記事 過去ブログ:2015年4月アフガンでIS系が初の自爆テロ 36人死亡、負傷者多数 2014年12月ウイグル族8人へ死刑求刑 中国 2014年8月新疆ウィグル地区での宗教指導者殺害 2014年5月新疆ウイグル自治区へ過去最大の警備、弾圧開始 中国 2013年7月インド、北東部で対中国軍備増強、北部で宗教対 2013年4月中国、アフガンの原油採掘に目途 アフガン北部 2012年10月インド パキスタン、カシミールで砲撃戦3人死亡 2012年3月インドもイランも覇権主義ではない 2011年7月インドで爆破テロ 再発 ムンバイ 2009年9月インド 2009年~ 国境問題まとめ



nappi11 at 00:57│Comments(0)TrackBack(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

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