

右派で欧州連合(EU)懐疑派のフィン人党Perussuomalaisetは38議席を獲得して第2党に躍進。一方の国民連合は37議席、社会民主党が34議席でこれに続いている。シピラ氏が最初に取り掛かるのは、連立相手の選定になる。従来通りならば、第1党から首相が指名され、議会で過半数を確保するため他の優勢の党と連立政権を樹立することになる。シピラ氏が連立政権を樹立するまでには数週間厳しい交渉が続けられる見通し。同氏はまだ、どの政党を連立相手に選ぶのかも発表していない。参照記事
シピラ氏は選挙戦で、自らのビジネス経験(主にIT関連)を強調し、これまで3年続いた不況と緊縮策、改革の失敗を経て、ユーロ圏内の同国の経済を回復させることを公約に掲げてきた。ストゥブ首相は4党からなる左右連立政権を率いてきたが、内部不和で機能不全に陥り実質的な政策転換を行うことができず、有権者の不満を買っていた。参照記事(c)AFP/Hugues HONORE
フィンランド経済を押し上げたのは、ノキアNOKIAに代表されるIT産業と実績の長い製紙業だが、一時はその安さと丈夫さで携帯電話の世界市場でシェア70%を占めたノキアは、韓国のサムスンの低価格に押されて、すでに携帯電話事業をマイクロソフトに54億4000万ユーロ(72億米ドル =8 592 億円)で売却し(2014年4月25日に買収手続きが完了)、現在はWindows Phone(ウィンドウズフォン)の開発に注力している。ノキアはしかし、携帯電話の通信設備では世界第2位で、日本でも使用されているはずだ(世界第1位はスウェーデンのエリクソン)。フィンランド製紙業の低迷が何年間も続いていて、主な原因として、eメールの普及、デジタルファイルの採用、雑誌や新聞など紙媒体の発行量の減少などが言われるが、主に高級紙を輸出するフィンランドの製紙業へのITの影響は少ないと思える。参照記事
2015年7月2日:フィンランドの主要政党は、2015年4月19日に行われた選挙直後から連立交渉に入った。5月29日にようやく誕生した新政権は、議席数を多く勝ち取った保守派の中央党、ポピュリスト(人民主義)のフィン人党(The Finns:Perussuomalaiset)そして穏健保守派の前政権与党だった国民連合党による3党から構成されることになった。フィンランド議会の定数200議席のうち、124議席を獲得した3党は過半数による優位を享受することになる。
新首相を務めるのは、中央党のユハ・シピラ党首(54)。2011年の選挙で初当選し、翌年に党首の座を任された。
成功を収めた実業家として知られ、政界に入る直前はIT大手のCEOだった。中央党は2011年選挙で敗北したものの、今回は35議席から49議席まで伸
ばし、与党に返り咲いた。過去18年間フィン人党党首を務め、今回の選挙で議席を第2党の39にまで伸ばしたティモ・ソイニTimo Soiniが外務大臣に就任した。第3党として連立入りしたのが国民連合党だ。前政権最大の政党だったが今回は敗北に終わり、7議席減らして37議席のみとなった。今年4月まで首相を務めていたアレクサンデル・ストゥブは財務大臣に「降格」した。
シピラ首相率いる新政権は、外交と防衛政策において現行維持を目指している。フィンランドは正式には「非同盟」の立場を貫く一方、将来的には北大西洋条約機構(NATO)加盟の可能性も残しておきたい意向だ。スウェーデンとの軍事協力は強化される。
隣国ロシアとは、良好関係維持を目指しながら、EUによる対ロシアの経済制裁も承認し続けている。一方、ウクライナ危機によってバルト海域の安全保障が弱 体化したというのが、専門家の見方だ。新政府の任期中に、現況についてより深く調査されることになる。新政府のプログラムによれば「フィンランドの安全保 障・防衛政策について報告書をまとめ、これに関連してフィンランドがNATOに加盟した場合の影響について評価する。また防衛力の維持・開発・行使に関す る防衛政策ガイドラインを定義した防衛報告書も用意する」ことが予定されている。
また新政府のプログラムには、EU政策に関連する3つの重要な声明が含まれている。
1) EUは最も重要な課題に焦点を絞らなくはならない。すべての政策において統合を深める必要はない。
2) 政府はユーロ危機に関して、フィンランドの負債を増やしかねない対処法には反対する。
3) EUはフィンランドにとって重要な安全保障共同体である。フィンランドはEUの共通安全保障防衛政策の強化と、安全保障戦略の改革を支持している。
フィンランドが連立交渉をしている真っ只中、欧州委員会から悪い知らせが舞い込んだ。ユーロ圏全体における来年度の経済成長率が1.9%と予測されているのに対し、フィンランドの経済成長率はたった1%だというのだ。フィンランドへの投資も、4年連続で減少している。
欧州委員会によれば、フィンランドは安定成長協定が定める基準を順守できない。年間財政赤字は3%を上回る見通しで、政府債務残高も国内総生産(GDP)の60%を間もなく越えそうだ。
新政府は公共部門の財務を強引に見直す予定だ。40億ユーロを捻出するための項目はすでに列挙され、防衛以外の公共部門すべてがコスト削減を強いられる。とくに社会保健サービス、教育、ビジネス助成の分野でのカットが想定される。政府の概算によれば、フィンランドの競争力は主要な競合国と比べて10~15%ほど下落した。再び競争力を高めるためには、労働組合との社会契約の見直しによる事実上の賃金カットなどが含まれるが、そう簡単にいきそうもない。新政府の船出は荒波にもまれそうだ。参照記事から抜粋 英文記事