
米国防総省は2013年9月22日の声明で、シリア領内で過激派「イスラム国 IS、ISIL」に対する空爆を友好国部隊と共同で始めたと発表した。現地では23日早朝から空爆が続行している。2014年8月に開始したイラク北部での空爆に続く実力行使で、戦闘機、爆撃機の空爆のほか、巡航ミサイルトマホークミサイルbomber and Tomahawk land attack missilesによる攻撃。
トマホークはペルシャ湾北部と紅海の米艦から発射された。使用したトマホークは計47発。攻撃の第1波は約90分で終わり、14回にわたって波状攻撃を繰り返した。ペルシャ湾に展開中の空母「ジョージ・H・W・ブッシュ」からはF18戦闘機が飛び立ち、陸上から発進した戦略爆撃機B1や無人機プレデター、F16戦闘機などがシリア上空で攻撃に参加した。米メディアによると、少なくともヨルダンは軍用機を投入。米ABCテレビはF22ステルス戦闘機も投入されたと報じた。

攻撃地の詳しい説明は無いが、ISの主力基地は、シリアのラッカやデリゾール県Raqqa、Deir al-Zor provinceにあるとされ、すでにISは付近から一時的に姿を消したとも言われるが、空爆は長期にわたる見込み。空爆はその他、ヌスラ戦線Al-Nusra Frontの拠点、および
ホラサン集団 Khorasan Groupと称するアルカイダ系(爆破テロや爆弾製造、兵員募集や養成に特化した組織と言われる)の拠点も攻撃したとされ、右のCNN地図からは、米軍の空爆地が、ヌスラ戦線や
ホラサン集団 の居るとされるアレッポ西部に集中している。初のシリア空爆は、シリア東部4地域の14か所で、少なくても300人を殺害したとされ。精密な誘導によるとされるが、シリアの人権団体は、子供を含む市民の犠牲者が出ていると非難している。

当初参加国名は報じられていないが、米国は、ヨルダンJordan、バーレーンBahrain、アラブ首長国連邦(UAE:
United Arab Emirates)、サウジアラビアSaudi Arabia、カタールQatarなど複数のアラブ諸国が攻撃に参加したとして、米国単独の戦争でないことを強調。先週イラクの空爆に参加したフランスのシリア空爆参加については不明。フランスは事前に、シリア空爆には不参加を表明していた。写真左は、空爆を受けるラッカにあるISILの指令本部 右地図では、シリアでの主な空爆地点 イラクへの補給路や石油施設の多い地域がかなり攻撃されている。
参照記事 参照記事 参照記事 参照記事 参照記事 映像記録 映像記録ISはビデオで、参加国の市民に対して報復を行うようにと発信している。イスラム国の報道官を務めるアドナニ氏は声明で、有志連合による介入は「十字軍の最後の軍事作戦」になるとし、「これまでの作戦が破壊され敗れたように、今回もそうなる」と述べた。
参照記事 参照記事 過去ブログ:2014年9月
シリア北部でのIS侵攻にクルド側攻撃激化する シリア 米国主導でIS攻撃の準備進む
イスラム国 Islamic State (IS) の発言に影響されたイスラム過激派「イスラム国」の分派で、アルジェリアで活動する「カリフの兵士: Caliphate Soldiers(Jund al-Khilafa)」を名乗る聖戦組織 Algerian jihadistが拘束していたフランス人観光客で山岳ガイドの男性Herve Gourdel氏 55歳の首を切り殺害したとする映像を公開したと9月24日報じられた。ビデオには「フランス政府への血のメッセージ "Message of blood for the French government".」のタイトルが付いていた。彼はNice出身で、映像には斬首の様子は写っていないが、この写真の後、兵士が彼の頭部を掲げる様子が映っていた。
参照記事 参照記事
シリア北部コバーネKobane(Kobani)で戦闘状態にあるクルド防衛隊YPG:写真右 は、200~300名のISメンバーを殺害し、戦車4輛を含む装甲車多数を捕獲し、ここ2日間で、戦況は防衛から攻撃へと転じたと9月23日報じている。依然として、シリアからトルコへは多数の避難民が脱出していて、10万人以上に達するといわれている。
参照記事コバーネの東部にTal Abyadがあるが、クルド側の攻撃でこの地域からISISが撤退したと報じられている。ここは過去にもイスラム勢力がトルコ経由で傭兵や武器弾薬の補給路として使用していた地点で、記事のISISが、イスラム組織内部で対立する「イスラム国IS」を意味するとは思えない。名前からくる混乱は他にも、トルコがISに戦車や武器支援していると思わせる記事もあるが、これは、現在のシリアでの反政府軍の主力、イスラム穏健派ISIS(現在、穏健派にはヌスラ戦線Al-Nusra Frontを含まない シリアのアルカイダ本部は穏健派を支援)と混同しているように思われる(米国はISをISILと表記 これには、やはりイスラムの建国を目指すヌスラ戦線を含むと解釈している。)。反アサドのトルコが、FSAを含むイスラム勢力を支援しているのは明確な事実だが、トルコはISに対して米国に同調し、敵対視している。
参照記事 トルコがISISへ武器を送っているという記事:
参照記事 過去ブログ:2014年9月
「イスラム国:IS」の表記と指導者の変遷 2014年9月24日:日本の岸田外相は23日、ニューヨークで行われた「
グローバルテロ対策フォーラム(GCTF:Global Counterterrorism Forum)」の外相級会合でイスラム国について、「国際秩序を揺るがしかねない深刻な脅威」と強調。日本として、テロ資金対策や出入国管理などを厳重に行うとした上で、中東地域の難民対策などとして、関係国に約2550万ドル(約28億円)の追加支援を行うと表明し、拠出済みの780万ドルを含む合計3330万ドル(約36億円)を拠出すると表明した。
参照記事 参照記事BBC
9月24日もイスラム過激派組織「イスラム国」に対してサウジアラビアやUAE=アラブ首長国連邦の軍と共に戦闘機や無人機で空爆を13回行ったと発表され、空爆は、シリア東部にある「イスラム国」が支配する石油精製施設12か所を狙ったもので、アメリカ軍は「空爆の成果は調査中だが、成功したとみている」としている。「イ
スラム国」は、イラクとシリアで油田や石油精製施設を占拠して石油を密売することで、小さな国家並の豊富な資金を保有しているとみられ、アメリカ軍は今
回、攻撃した施設で、「イスラム国」が1日に最大でおよそ200万ドル(日本円でおよそ2億2000万円)の資金を得ていたと推定している。地図はシリアの油田地帯とパイプライン
参照記事 過

去ブログ:2013年11月
反政府側、シリアの油田地帯を制圧か シリア2014年9月25日:シリア東部原油精製施設の空爆実施が報告され、デリゾールやハサカDeir al-Zour 、 HassakehなどでのIS兵員14人、民間人5人の死亡が言われている。攻撃は続行されるが、ほとんどの目標は破壊したとされる。
左は、BBC記事に掲載の空爆地域。米国は、有志連合は40カ国に及ぶとし、フランスはシリア空爆にはまだ参加していない。英国はシリアへの攻撃を準備中で、オランダが空爆参加を表明した。
参照記事