独立の是非を問う住民投票(referendum)は2014年9月18日に迫っている。もし独立を達成すれば、1707年にイングランドに合併されて以来、300年ぶりとなる。なぜスコットランドScotlandで独立論が浮上しているのか追ってみた。
スコットランドは右記のイギリス地図の青い部分。グレートブリテン島北部の3分の1を占める面積約8万平方kmの国土に、イギリス全体の約1割にあたる525万人(有権者は16歳以上のスコットランド在住者約400万人)が住む。日本の北海道の面積・人口とほぼ同じだ。イングランド、ウェールズ、北アイルランドと共に連合王国であるイギリスを構成している。中世には独立した王国として南隣のイングランドと攻防を繰り返したが、17世紀に同じ王を抱く同君連合が結ばれて、1707年に統一された。か つてのスコットランドの主要産業は石炭だった。イギリスの産業革命を支え、グラスゴーの造船業・機械工業は大英帝国の栄光をもたらす原動力となった。さら に1960年代に北海油田が開発されると、石油基地として大きな発展をとげたが、油田の主要海域を抱えているのに英国政府に財源を管理されることへの経済 的な不満が膨れあがっていった。
MSN産経ニュースでは、イギリスからの独立を掲げるスコットランド民族党の主張を、次のように伝えている。「独立を目指す背景には、1960年代に発見された北海油田の存在が色濃い。欧州最大の埋蔵量とされる石油・ガス資源を支配下に置くことで、独立すれば1人当たりの所得が年1000ポンド(約17万円)増えると主張している。」こうして独立派は支持を増やし、1997年の住民投票の結果、1999年にスコットランド議会と自治政府が設立された。
独立派のスコットランド民族党(Scottish National Party、SNP=スコットランド国民党 正確には、スコットランドの国民党National Party of Scotlandとスコットランド党Scottish Partyが合併し、スコットランド民族党Scottish National Partyが創設された。民族主義を重んじる社会民主主義で1934年創立。この背景から、また、過去の国民党との区別から、ここでは民族党と表記 しかし、21世紀に入り党としての性格を大幅に変え、今では手厚い社会福祉、反核兵器、再生可能なエネルギーなどを推進する中道左派寄りの政党として生まれ変わったとされる。したがって、民族主義的ナショナリズム、右派を連想させる「スコットランド民族党」をSNPの訳語として使うのはふさわしくないともいわれるが、日本のメディアは多くが民族党を使用 参照記事)は、 2011年5月の議会選挙で過半数を獲得。アレックス・サモンド(Alex Salmond)党首;写真右 がスコットランド自治政府の首相に就任した。こうして、独立の是非を問う住民投票が実施さ れることになった。
2013年11月、サモンド首相が、スコットランド独立の基本理念をまとめた白書を発表している。独立する日は2016年3月24日、EUに加盟し、通貨は英ポンドを維持。核ミサイルを搭載した潜水艦は、スコットランドから移動させるという。こうした中、2014年1月、イギリスのオズボーンGeorge Osborne英国財務大臣はポンドの使用を認めない方針を公表、独立論を押さえ込むのに必死だった。キャメロン首相(David Cameron)は2014年2月7日、独立せずにイギリスに留まるように訴え、7日、ロンドンで演説し、英国からの独立の是非を問う住民投票を年内に行うスコットランドに対し、英国に留まるよう呼び掛けた。首相は、スコットランドの独立は英国の世界的な影響力を低下させ、英国の金融および政治的な安定を脅かすと述べ、「われわれは英国として統一している方が、政治、軍事、外交および文化の面で間違いなく意味がある」とし、「スコットランドを失い、英国(の形)が変われば、われわれの名声は台無しになる」と訴えている。
イギリスにしてみると、スコットランドに独立されるのは大きな痛手だ。同じく連合王国を構成する北アイルランドやウェールズにも独立運動が飛び火しかねな い懸念があるからだ。そうなれば、旧ユーゴスラビアと同様に、国家が解体されてしまう。そうでなくても、スペインのバスク地方など、周辺国の過激な分離独 立運動を刺激し、欧州全体で民族紛争が活発化することも考えられる。NHKニュースによると、9月13日に発表された世論調査では、独立に賛成が54%、反対が46%と賛成派がリードしている。ただし、逆に反対派が上回っているという別の調査結果も伝えられており、依然として接戦が続いている状態だ。独立すれば北欧諸国の一員になるともいわれ、さらに、多くの企業、金融機関が英国に移ると表明される中、国民保険や教育、通貨、税収、国防など問題は大きく複雑だ。数十年で枯渇するといわれる油田を原資に、早急な北欧型社会主義国建国が理想なのが読み取れるが、現実はそう簡単ではないというのが反対意見の多い所以(ゆえん)だろう。所で、英国の現在の国旗ユニオンジャック(Union Jack)は、3つが重なっている。スコットランドが抜けると国旗は?さらに詳細は参照記事 ついでながら、北海油田には日本の企業も参加している。
このようなスコットランドの動向には、最近の英国経済の衰退と不安定が要因の一つだろう。UE加盟後、各国の人と物の移動が自由になった半面、移民問題が各国の経済を圧迫している。特にブルガリアとルーマニアがEU加盟した2007年ころから、EUの要請で移民を受け入れた英国では移民が経済難民化し、社会保障費、ホームレス、犯罪の急増は英国経済を圧迫し、同じことはドイツや北欧諸国でも起き、英国ではEU脱退論まで浮上している。このような時期には、保守や民族主義政党が台頭するのが常で、スコットランドの政治にも大きな影響を与えたと個人的に思っている。映像:日本への警鐘 ⇒ 「移民」を受け入れた英国が、大変な事に 植民地の逆襲 旧植民地の移民に埋め尽くされるフランス
2014年9月19日:英国北部のスコットランドの独立を問う住民投票が18日夜(日本時間19日朝)締め切られ、各地で開票作業が進んだ。BBCなど英主要メディアは19日未 明(同日午後)、反対票が過半数となる見通しで、独立否決が確実になったと報じた。スコットランドの独立は回避され連合王国の一部として残留する見通しと なった。登録有権者は約430万人。英BBCによると32地区のうち最大都市グラスゴーなど25地区で開票を終えた時点で独立反対は135万2635票(54.33%)、賛成は113万7190票(45.67%)となっている。参照記事 現地19日午前6時18分、独立推進派を率いた、SNP(スコットランド民族党)党首で、現スコットランド自治政府の第一首相、アレックス・サモンド氏は敗北を「受け入れる」ことを宣言。これからも「ひとつの国として」前進していくことを誓った。投票率は85%近くにものぼった。
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コメント
石油の期限以外の点で置き換えてみると、お互いに有って無い物が見えてくるので、それをスコットランドはどうするのかで色々見えてくる。
前略
そこで皇帝ハドリアヌスが長城の建設を命じ、122年に工事が開始される。完成には10年の歳月がかかった。作業者は、ローマ帝国の支配地から動員された。領土拡張を続けていたローマ帝国が、拡張政策を続けることを断念した政策転換点としても象徴的な建造物の一つである。
以下略 ウイキペディア 「ハドリアヌスの壁」より
スコットランドとイングランドとの国境「ハドリアヌスウォール」はローマ時代からであり、昔は文明の終着点で、以北はバーバリアンの支配地だった。w
スコットランドの元々の人種はケルト系とかバイキングとか色々言われているが、併合されて約三百年無意識に無念の思いが脈々と流れているのかも。w
問題はこのドタバタが、世界経済や国際情勢に与える影響が心配される。露助や支那畜が喜びそうな情勢になるような気がしてならない。願わくば寝た子を起こしたような収拾のつかない事にならぬよう、私は希望したい。w
なめきって、投票実施まで時間は十分にあるのに
独立阻止対策を真面目にやらないまま、
最新の世論調査結果を見て真っ青になって慌てだした
キャメロン首相の大失態という印象が拭いきれないです。
キャメロン首相は「独立しても首相を辞任しない」と言っていますが
独立反対が過半数で残留決定となっても、支持率暴落か
来年の総選挙で大敗するかで辞めざるを得ないと思います。
もし、独立が成立したら国として形を整えるまでの隙を狙って
不穏分子が入り込む危険があるのでは?イギリス軍は直ぐには手出しは出来ないし・・・。
地球儀は当分買わない方がいいかも?
手厚い社会福祉、反核兵器、再生可能なエネルギーなどを推進する独立志向の中道左派政党って、どう考えても、悪い予感しかしないのですけど
具体的な予算政策案がどこぞの国の民主党がいった埋蔵金発言並みに胡散臭いし