深刻な中国都市部の水不足を補う「南水北調」計画はその後どうなっているのか、最近の記事から抜粋 過去ブログ:2013年6月「南水北調計画」は飲める水を送れるか?中国 

d332377f結論から言えば、「南水北調」は「汚水を北上させるプロジェクト」とさえ言われ、この計画の有効性に疑問が出ている。東線、中央線、西線の三つに分かれる南水北調プロジェクトは、大流域を最も多く跨いだ世界最大規模の水移動で、プロジェクトは、黄海に出る長江、淮河(わいが)と、渤海にでる黄河、海河の主要流域をカバーしている。

中国の南水北調プロジェクトが一連の問題を引き起こしており、明確な解決方法のないまま進行し続けている。例えば、中央ルートは漢江の丹江口ダムを利用して、北京と途中の各地に水を供給するが、漢江流域は水汚染が深刻なため、流域には多くのガン村が発生している。
また、長江の三峡ダムプロ ジェクトによって、長江の持つ千年来の自然な水量調節機能が破壊された。中国政府の公式サイトの発表によると、南水北調プロジェクトは三峡ダム建設費 用の三倍を超える見込みで、国際世論の注目を集めている。過去ブログ:2012年8月世界一の「三峡ダム」は巨大な汚水の肥えだめ 中国  2011年6月すでに手遅れか 三峡ダム問題 すでに老朽化進む 中国

ドイツ在住の水利専門家、王維洛さんはメディアに対し、南水北調プロジェクトが環境に与え るダメージは、三峡プロジェクトよりも更に深刻であると伝え、このプロジェクトの代償はかなり重く、華北地区の水不足問題を解決することは 出来ないとの見方をし、「華北の水不足の原因は、華北が干ばつ地域だからではありません。北京の水が足りないのは、北京自身が水資源を破壊したからで、南部から水を引いても問題は解決できません」と語る。

2013年11月、中国国務院南水北調プロジェクト建設委員会弁公室の鄂竟平(がく きょうへい)主任は「中国経済週刊」の取材に応じた際、南水北調プロジェクトは基本的な作業がしっかり行われていないことを認め、北方でどれくらい水が不足しているのか、なぜ水不足が起きたのか、水源である長江、漢江にはどれくらいの水があるのか、北方に送る余分な水はあるのか、水源地の汚染状況はどうか、水汚染はいつ改善できるのかなど、生態環境に及ぼす影響についての基礎データの収集と分析が不十分とされている。例えば、中央ルートでは漢江の丹江口ダムを水源としているが、漢江には北方に提供できる水がどれくらいあるのかについては、中央線の工事終了直前の今でも、まだはっきりせづ、取水が多すぎれば漢江の生態系を破壊するとの指摘もある。しかし、それ以前に、河川に工場排水や生活排水、ごみがそのまま流されている事が問題で、世界規模のダムは巨大な汚水枡と化している。

2014年年1月6日、BBC中国語サイトの中国評論欄にドルトムント大学水資源専門家、王偉洛氏 の文章『南水北調、北へ流れる汚水』が発表され、文章は、南水北調の東線の工事はすでに完成し、中央ルートの工事は今年中に完成するが、その後に多く の手におえない問題が続くと指摘している。
また、東ルートは淮河(わいが)と平面交差していますが、淮河は30年も汚染処理をやっていても未だに水質が改善していないため、東ルートの水質を保証する事は難しく、天津はあえて南水北調の水を使わないで、廉価で質の良い海水を淡水化した方がましだと言われる。
漢江流域の水汚染は予想をはるかに超えており、淮河流域はガン村が最も集中している地区であると述べ、漢江流域にもガン村の存在が確認されている。汚染された川の水を北へ送ることは、北京にガン村を発生させるかもしれないと警告しています。

canser政府データによると、すでに南水北調の東線と中央線の沿線には多くの癌発症率が高い地区が存在しているが、プロジェクトの建設によって更に無数の「ガン村Cancer Village」が発生しているとされる。右図、ガン村分布2013年資料 参照記事
事実、2013年6月2日、南水北調プロジェクトの山東省東平県八里湾ステーションで送水テスト が行われたが、北上してきた大量の汚水を東平湖に入れた事によって湖の魚が全て死んでしまい、漁民たちが泣き崩れた。このように有毒な 水が2014年から北京や天津などの都市に供給され始める事に対し、香港「アップルデイリー」は、南水北調プロジェクトは世界最大の「ガン誘発プロ ジェクト」になると予言している。過去ブログ:2014年1月深刻度を増す中国の公害問題と食料自給率の低下

この壮大な、巨額な日本のODAも投入された「南水北調」プロジェクトは結局、壮大な「汚水北送プロジェクト」でしかなく、その対策も、科学的指摘も無視されたまま完成に向かっている。その他、ルート地域での地震誘発や上流での極度の水不足、北京のスモッグ、黄砂問題の南下も指摘され、光化学スモッグの南下は植物の光合成を困難にし、農業への悪影響が予想されている。中共政権は資源を略奪し、森林を破壊し、野生生物、植物、生物および人々の居住環境を破壊した。人文環境と自然環境が徹底的に破壊された影響は間違いなく近隣諸国、特に日本へも今後一層悪影響を及ぼすだろう。参照記事 参照記事
中国国家環保局(環保部の前身)の初代局長・曲格平氏は、中国の今の深刻な環境汚染はこの40年間、すべてを犠牲にし、経済発展のみを追及してきた結果だと言い切り、先進国の教訓や、1987年にはすでに存在し た「持続可能な開発 Sustainable Development, SD」の概念を無視したツケだと批判した。問題の根本は、中国は「人治」社会で、政策決定者の権利はいかなる制約も受けないことにあると悔やんだとあるが、全ては遅しである。参照記事 

中国の首都北京市は現在、過度な地下水の利用から水位の下がりに合わせて地盤が下がり、2650平方キロメートルの巨大なすり鉢上の上に位置しているようなもので、建築物、道路、配水管網などの基礎インフラも沈下の影響を受け、破損事故が頻繁に起きているとされる。さらにスモッグは2013年1月、世界保健機関WHOの定めた基準値の40倍に達し国土面積の9分の1に当たる108万平方キロメートルがスモッグの影響を受けており、全国58の都市のPM2.5指数は、WHOが定めた基準値の10倍以上とされる。北京の内部情報によると、スモッグの影響で、北京では毎日1000人が合併症をなどで死亡しており、発覚を恐れた当局が未だに事実を隠ぺいしていると言われている。大気汚染を原因とする死亡者は、2010年には123万人を超えたと推計されている。これは死亡原因全体の約15%を占め、飲食習慣、高血圧、喫煙に次いでリスクが高いという。健康を気にする富裕層が逃げ出したくなるのも当然といえよう。参照記事 参照記事



nappi11 at 11:27│Comments(0)TrackBack(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

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