2014年6月22日:地図は、2014年6月16日、BBCの記事に掲載されたISISの地図を、筆者が自分の解釈で修正したもの。
黄色は16日時点でISISが制圧した地域で、その後紛争地となった地域などを修正し、新しく判明した紛争地などを書き加えてある。
上の地図で行くと、イスラム系の進出、支配地域はすべて同じ黄色で表示され、イラクのISISがシリア方面の地域まで制圧しているように見えるが、シリア
内では、反政府主流FSA(自由シリア軍)と、同じイスラム原理主義でもイラク側ISISと対立しFSAと共闘するアルカイダ系イスラム原理主義ヌスラ戦線やほかのイスラム組織(
サラフィー・ジハード主義武装集団:Salafist jihadism Movement)が制圧している地域もあり、イスラム系の内部で、いずれはその取り合いになる可能性がある。
*追記:6月27日の「ロシアの声」は、シリアのヌスラ戦線がISIS(ISIL)に忠誠を誓ったと書いている。資金的な問題からか、軍事的なことからかなどは不明。
参照記事

6月10日のISISの侵攻以降、6月16日よりスンニ派に制圧されている北部タルアファルTal Afarでは現在、巻き返しに出たイラク軍とISISが戦闘状態にあったが、イラク軍は19日、タルアファルの一部を奪回したと報じた。
タルアファルは。米軍がイラク駐留中の2005年、スンニ派反政府組織と米軍、イラク合同軍との激しい戦闘があった地域。
参照記事ティクリート北部バイジ Baiji、その他アンバル県のシリアに近い Rawa 、Anahと国境沿いのカイムQaim(Al-Qaim)、シリア南部に抜けるal-Walid(al-Waleed)、ヨルダン(反アサド国家)東部に抜ける
Ar-Rutbah(Rutba,Rutbal)やTuraibil(Trebil)、
など、ISISは広範囲に戦略的に重要な地域をここ数日で制圧していると22日から23日にかけて報じられている。すでにアンバル県
province of Anbarの約90~70%がISISの制圧下とも言われる。現在イラク軍は、アンバル県
(Al- Anbar)のユーフラテス川
Euphrates River沿いのハディーサ Haditha(Al- Haditha)にある、首都バグダッドの電力や給水に重要なダムを守るため約2000名の兵士を派遣したとされる。地図の赤い丸は、今までに当ブログ記事内に出た地名を指し、赤いラインは主要道路、緑色は石油パイプラインを指している。
参照記事 参照記事

キルクークKirkukから南25kmのところにあるTaza khormatoでは、以前紹介したトルクメン人民兵組織 イラク・トルクメン戦線Iraqi Turkmen Front (ITF)が5000名の義勇兵を終結し、クルド人民兵組織「ペシュメルガ:Peshmerga;フセイン政権時代にゲリラ戦で抵抗し、その後一部はイラク軍に再編された」と共にISISと戦闘状態と言われている。写真は6月
17日、Taza Khormatoでのクルド兵士;左 とトルクメン人兵士:右 この紛争でクルド自治政府はイラクと縁を切り、独立国家を目指すのではと言われている。クルド族からは、イラク・マリキ政権はスンニ派自治政権を認めるべきだとの発言がすでに出ている。
参照記事 過去ブログ:2014年6月
イラク軍、シーア派義勇軍反撃 米軍空母派遣 虐殺も確認 イラク全土に戒厳令 過激派北進は石油施設狙い?ここでは分かりやすく「イラクのISIS」と書いているが、ISISには海外からの兵員が多く、特にアフリカ北部のチュニジア人が多いとされ、外国人が多いのはシリアのヌスラ戦線も同じと思われる。
シリアで、反アサド支援の名分でスンニ派組織を経済支援しているといわれるサウジアラビアが、現在イラクのISISにも支援しているのかは不明だ。イラクのマリキ政権は支援していると断定し、サウジを非難し、サウジは、スンニ派に対しての支援を根本的に否定している。スンニ派の資金源としては、過去にシリアのデリゾールdir al zurの石油を闇でシリア政府に売りさばいたとも言われており、また、ISISはイラクでモスルMosulの銀行を襲撃したり、誘拐からの身代金、窃盗等で資金を確保し、さらに古代遺跡からの盗掘品の売買、盗掘業者への課税などで利益を得ていると言われる。
参照記事 参照記事最近、シリア政府側の傭兵だったシーア派イラク人が、イラクでスンニ派との戦闘に参加するとして大量に帰国しているが、今後彼らはシーア国家イランの傭兵になるのだろうか?リビアの紛争では、多くのチュニジア人がカダフィ側の傭兵だった。
民族、宗派の思惑が重なり、イラクの状況は限りなく複雑になっていく。米国が、イラクの内戦には加担しないと割り切るのも無理はないが、いずれ米国は自ら
戦火に飛び込むだろう。それが米国のDNAだ。その時日本にまで火の粉が及ばないことを願うしかない。日本のDNA、それは、国から出て戦えば、いずれ負
けるのである。
2014年6月23日:ケリー米国務長官は6月22日、エジプト・カイロを訪問し、同国のシシ大統領、シュクリ外相とそれぞれ会談し、会談後の記者会見で、イラクで勢力を拡大している
イスラム過激派組織「イラク・シリアのイスラム国」(ISIS)について、「イラクだけでなく、(中東)地域全体への脅威だ」と指摘。中東諸国に対し、
「違法な福祉団体や裏ルート」を通じ、「避難民支援を装った資金」がISISに流れないように協力を呼びかけた。BBCが23日掲載したイラクの紛争地域の分布図では、北部でISISが制圧地点(赤)を増やし、首都周辺に戦闘(緑)が多発しているのが確認できる。英文
参照記事ISISは急ピッチでバグダッドに北と西から急進しており、バグダッドの西32キロにある
、フセイン政権が残虐を繰り返したアブグレイブ刑務所Abu Ghraib prisonで有名なアブグレイブAbu Ghraibでも戦闘状態にある。首都から95キロ南の シーア派住民の多いHillahもISISからの砲撃を受けている。すでにISISに占拠されている北部のモスルMosulでは22日、ISISが市内にシャーリア法による裁判所Islamic Sharia courtsを設けると広報していると言われ、市内のキリスト教会からマリア像が撤去されたとの目撃情報がある。イラク政府は現在、300人からなる米国派遣のアドバイザーの到着を待っている。
参照記事 過去ブログ:2012年3月
イラク・イスラム国(ISI)の犯行 イラク連続爆破 2011年12月
米軍撤収後、自爆テロ激発 宗派人口分布図 イラク 2010年8月
米軍はイラクから撤退できるのか?
2014年6月24日:争奪戦が繰り返されていたバイジBaijiを完全制圧したとISIS側が宣言した。ここには、イラク最大規模の製油所があり、戦略的に重要な地域。ISISは今後、バイジの製油所の運営は、地元のスンニ派部族に移行すると発言している。バイジの制圧は、今後反政府側が、すでに制圧している北部の大都市モスルMosulへの石油供給も管理することを意味し、反政府側制圧地以外では石油不足の可能性もあり、非常に重要な出来事とBBCは書いている。イラクのガソリン

40%がバイジで精製される。この地域には、イラク北部からトルコへの油送パイプも通っている。24日のBBC記事の地図の赤がISIS制圧地点、緑は戦闘中、黄色はISIS 制圧地域 グレー色は、アンバルAnbar県(県都ラマディRamadi) 水色はクルド自治政府地域 映像:23日、
バイジ近くを空爆するイラク軍 映像記事 参照記事ISISは首都へ


の攻撃を続行すると宣言しているが、首都に近いバークバBaqubaではシーア派民兵が優勢とも言われる。 左下は、ISISの目指す領土図(緑色)とイラクの各宗派分布図 一見広大な地域へ侵攻しているISISだが、その地域のスンニ派部族民兵を吸収し、シーア派イラク政府の施設を部族へ引き渡す作業が進行しているようだ。また、現マリキ政権に反発する、かつてフセイン政権をささえた旧バース党Baath Party員もISISに参加しているといわれる。
参照記事 BBCは国連の報告として、イラクで2014年6月5日から22日の間に、1000人以上が紛争で死亡し、そのほとんどが民間人だったと報じている。筆者は、未確認のISISの処刑情報も加えれば、その倍以上の死亡者ではと思っている。今後どうなるのか、世界のどのメディアも予想すらつかないと書くが、はっきりしているのは、中東全体が巻き込まれつつあるということだ。
参照記事 過去ブログ:2014年6月
首都バグダッドにせまるISIL 石油施設も破壊 イラク スンニ派首都バグダッドへ侵攻か 北部は無政府状態 イラク 2014年6月
イラク全土に戒厳令 過激派北進は石油施設狙い? 
アメリカのケリー国務長官John Kerry, US secretary of stateは、バグダッドでマリキ首相 Iraq's prime minister, Nouri al-Malikiと会談したのに続いて
2014年6月24日には北部のクルド人自治区のエルビルErbilを訪れ、自治政府のバルザニ議長Massoud Barzani, president of the Kurdistan Regional Governmentと会談した。会談でケリー長官は「統一されたイラクこそが強いイラクだ」と述べ、挙国一致の政権づくりに向けて少数民族のクルド人の協力が欠かせないという考えを伝えたという。米国はイラクでシーア派政権を支援し、シリアではFSA及びスンニ派反政府組織を支援するという、非常に複雑な立場になりつつある。
参照記事 英文記事
議長は会談に際し、「我々は、新たな現実と新国家イラク(の建国)に直面している"We are facing a new reality and a new Iraq,"」と言った発言の意味は深い。イラクの分裂を懸念する米国がどんなイラクの未来図を描こうが、クルド人が自分たちの国家を樹立したい夢は捨てないはずだ。過去のクルド人の発言から彼らの本音は、クルド人の国家に干渉さえしなければ、スンニ派国家がイラクに誕生してもいいと思っているのではと、個人的に思っている。クルド人もスンニ派教徒と分類される。しかし、スンニ派ISISの内部に、旧バース党残党がいることは容認しないだろう。ケリー長官が裏で何をクルド人に約束し、約束させたのかは、当分メディアには漏れてこないと思われる半面、いろんな事が想像できる国務長官のクルド訪問だ。長年クルドは、赤い線までの自治国拡大を主張しているが、この区域に油田地帯があるため、現イラク政府は容認していない。また彼らは、キルクークが本来歴史的にクルドの首都だと主張している。
2014年6月25日:25日に行われたテレビ演説でイラクのマリキ首相は、「“臨時救国政権”をつくれという提案は、民意と憲法を無視するものだ」と述べた。イスラム過激派などが攻勢を強めているイラクのマリキ首相が、挙国一致の臨時政権をつくるべきだとの各勢力からの呼びかけを拒否したものだが、紛争の原因は、イスラム教シーア派のマリキ首相の政権が、スンニ派や少数派クルド人を冷遇したことが背景にあると批判されていて、シーア派勢力からも辞任と臨時政権の樹立を求める声があがっている。
参照記事
2014年6月26日:頑なに政権維持を表明するマリキイラク首相 the prime minister Nouri al-Maliki,;写真左 に対し、不気味な存在が浮上してきた。イラクのシーア派の聖職者サドル師Muqtada al-Sadr;写真右 で、イラク政権内で「イラク国民同盟」という政党を維持し、米国のイラク介入時には独自の民兵組織マフディ軍 Mahdi army
(Jaish al-Mahdi ;JAM)で武力で反米闘争を行った過去を持っている。過去ブログ
:2010年4月2010年4月のイラクのシーア、スンニ勢力図
サドル師はこのイラクの非常時に、スンニ派穏健派 moderate Sunnis (クルド人を含むスンニ派を指すと思われる)も取り込み、臨時政府で派閥を超えて勢力を結集し、イスラム過激組織ISISをイラクから排除しようと訴え、暗にマリキ首相の退陣を要求しているようだ。彼はシーア派国家イランに身を隠していた時期もあり、親イランで、イランから支援を得ていると見ていいだろう。
写真は、バグダッド近郊のサドル・シティーSadr Cityを行進するサドル師派シーア派民兵組織マフディ軍
Mahdi Army
。 米国を呼び込んだマリキ政権とは一線を画する組織とみてよく、イラクは、またさらに複雑になってきた。 参照記事
26日、イラク側のシリア国境に近い QaimのISISをシリア空軍が空爆したことで、シリアとイラクの状況に国境が無くなりつつあるように見える。世界は、マリキ政権がこれを容認し、あるいは要請したと見ている。最近のBBCが、シリアとイラクを合わせた戦況図を載せているのもこのことを意識しているようだ。状況は「ISIS対シリア・イラク紛争」と書いてもいいような雰囲気になりつつある。

イラク国内の不安定化はイランにも飛び火していて、イラン西部のクルド人と武力衝突が確認されている。(上にあるクルド人居住地域図を参照)この地域では、差別されているクルド人が反イラン政府活動を長年行い、イランからの分離を主張している。この機に、クルド人がイラク側、イラン側への領土拡大、独立国家建国をもくろんだとしても不思議はないだろう。右の紛争状況図は2014年6月26日のBBC記事から この前の戦況図と比較すると、イラク軍がイラク西部などでISIS占拠地域を奪還しているようだ。北部の水色は、クルド人自治政府地域 赤がISIS占拠地、緑は戦闘中地域
英文参照記事
シリアではイラン後援のシーア派政府軍をやっつけねばならぬし。w
イラクではイランと組んでスンニ派過激派をやっつけねばならぬ。w
グズグズ口だけ介入を繰り返すうちに・・・・もうなにがなんだか・・・。w
オバカなんだから人の意見を聞けばいいのに、我が強いので独断独走独爆を繰り返す。このままでは史上最低のメリケン大統領確定ズラ。w