003074-isleworth-mona-lisa2012年9月28日:イタリア・ルネサンス期の芸術家レオナルド・ダビンチ(Leonardo da Vinci:1452–1519)が描いた 世界で最も有名な絵画「モナリザ(Mona Lisa)」──その若かりし姿を描いたとされる 肖像画「アイルワースのモナリザ(Isleworth Mona Lisa)」について、スイス・チューリッヒ(Zurich)のモナリザ財団(Mona Lisa Foundation)は2012年9月27日、財団が40年の調査の結果、モナ・リザより先にダヴィンチが描いたもう1枚のモナ・リザである事がわかったと発表した。 このことは、制作年代的にはルーブル美術館にある有名な方がコピーとも言えるが、フィレンツェの裕福な絹の貿易商デル・ジョコンドの2番目の妻Lisa Gherardini(リザ・ゲラルディーニ、またはリザ・デル・ジョコンド Lisa del Giocondo)の若いときと、晩年を描いたダビンチの力作であることは事実のようだ。しかしまだ謎は多く、今後も多くの話題を投げかけるだろう。関連ブログ;2012年10月「モナリザ」の遺骨か?イタリア

161886045「アイルワースのモナリザ」は、19世紀末には英国貴族が英国アイルワースIsleworth の邸宅に所有している事が確認され、その後長らく1960年代に購入した米国人個人コレクターのヘンリー・ピュリツァー (Henry Pulitzer)氏が所有していたが、同氏の死後40年以上、スイスの銀行の金庫に 保管されていた。後の2008年に匿名の国際財団が、ピュリツァー氏の伴侶だった女性の 遺産から購入し、モナリザ財団に鑑定を依頼していた。モナ・リザ財団の調査では顔料が16世紀のイタリア・フィレンツェで使われていたもので、2つの構図を比べるとダ・ヴィンチが同じ構図で描いたものと判明したという。
2億4000万画素の超高画質で撮影出来るカメラを開発した工学技師のパスカル・コットPascal Cotteさんは、マルチスペクトル・カメラを用いてモナ・リザを撮影し、データを解析してニスが変色する前の姿を突き止め、分析では、ごく細い筆で、10年ほどもかけて細かな点描で、微細に輪郭がぼかして描かれたとされている。美術史家ジャック・フランク氏によれば、これはダビンチの、物には輪郭や線はないという考えを具現化していると説明されている。

img_1723006_36294574_0「アイルワースのモナリザ」と「モナリザ」の顔は驚くほど似ているが、「アイルワース」のほうはモデルの年齢が明らかに若い。また背景の風景は下絵のままで、両脇には柱が描かれている(写真下)。モナリザ財団によれば、こうした特徴は「未完のモナリザ」として歴史上登場する記述に よく似ている上、ダビンチと同じイタリアの巨匠ラファエロ・サンティ(Raffaello Santi)など他の画家が 当時描いた「モナリザ」の模写;写真右 (左側が最初の素描で、右側は Lady with a Unicorn(処女と一角獣)ラファエロ1505年頃の作品。)やスケッチの特徴と一致しているという。同時代の画家、ラファエロはモナ・リザに衝撃を受けて模写したとされ、その絵にはルーブルのモナ・リザにはない柱が描か れているが、アイルワースのモナ・リザには同じ柱が描かれている。 モナ・リザ財団の調査では、二つのモナリザの顔料が16世紀のイタリア・フィレンツェで使われていたもので、2つの構図を比べるとダ・ヴィンチが同じ構図で描いたものだった 事がわかったという。
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モナリザ財団がジュネーブ(Geneva)で開いた記者会見は、報道陣やテレビカメラで いっぱいになった。鑑定結果を証言するために、同財団によって会場に集められた専門家たちは、「アイルワースのモナリザ」はダビンチが「モナリザ:制作時期1503~1506年」の10年ほど前(別記事で11年~12年前)に描いた 未完の作品だと述べた。 その後、この絵の存在が確認されたのは18世紀末’(別記事で1800年代末とあるので19世紀末とも)になってからだった。参照記事 2011年5月日本語YOUTUBE  2012年9月英語版YOUTUBE映像
所有者の匿名財団を代表して出席した美術商のデビッド・フェルドマン(David Feldman)氏は推定価格を明かさず、個人に売却するよりも一般公開できる 状態のほうがふさわしいとの見解を述べた。すでに「モナリザ」を所有するルーブル美術館はコメントを拒否したといわれている。 参照記事 英文記事 

Martin-Kemp-a-donne-un-nom-a-la-Belle-Princesse_article_popin本物との鑑定に対し、オックスフォード大学の教授マーティン・ケンプMartin Kemp, an Oxford University professor氏は、直接この絵を鑑賞したことはないことを認めつつ、模写であると主張している。ケンプ氏によれば、アイルワースのモナ・リザは、女性のヴェールや髪の毛のほか、衣服をおおう透明な層、手の組み方といったオリジナルの繊細なディ テールを写し損ねており、また模作にありがちなことだが背景の大気と女性の表情にもとらえどころのない深みが欠けていること、さらにレオナルドが好んだ木 板ではなくカンバスに描かれていることなども模作であることを疑わせるとしている。 またケンプは赤外線反射光とX線による検査もこの絵の作者がレオナルドではないことを非常にはっきりと示していると述べており 'The infrared reflectography and X-ray points very strongly to its not being by Leonardo、モナ・リザが若くみえるのもあくまで模倣者がそのように描いたからではないかと語っている。参照記事 英文記事 

2013年5月11日放送 21:00 - 21:54 TBS 世界ふしぎ発見!「2枚目のモナリザ」
151211HiddenPortraitMonaLisa2015年12月9日:フランスの科学者で工学技師のパスカル・コットPascal Cotte氏は、多重スペクトルカメラでルーブルのモナリザの表面に強い光を当てて反射を測定(LAM技法:Layer Amplification Method)し、絵の具の層と層の間に描かれた内容を浮かび上がらせることに成功し、モナリザの微笑の下に3つの肖像画が隠されていたことが分かったと発表した。この女性は遠くに視線を向けていて、頭、鼻、手は大きめに、唇は小さめに描かれ。モナリザのような微笑は浮かべていない。コット氏はこれこそがジョコンドの真の姿だと確信したといい、この発見について「多くの神話を打ち砕き、ダビンチの名作に対する私たちの見方を一変させかねない」imagesjjhと語ったとされる。右の画像が、同氏がLAMで復元したというモナリザの下に“隠された”ポートレイトで、彼は、ダビンチが描いた別な女性ともいっているようだが、これには懐疑的な意見もあるという。この復元した絵には、しっかり眉毛も描かれている。 参照記事 参照記事 参照記事

nappi11 at 00:14│Comments(2) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

コメント

1. Posted by よりばば   2012年09月29日 23:59
 最初に「アイルワースのモナリザ」を見た時は、違和感を感じましたが、
長時間検索して見比べた後、この「アイルワースのモナリザ」を改めて見ると、美しく気品も感じました。
 「アイルワースのモナリザ」が10年近く古いとなると、有名な「モナリザ」の方が、それを元にして落ち着いた人妻として後年描いたという事でしょうか?
という事は、よく言われている彼女の「高脂血症」は、家系的だった?
 弟子も同席させて「モナリザ」を同時に描かせたそうで、スペインには弟子の描いたサイズも同じ「プラドのモナリザ」があります。
 当時は着衣の肖像画と同時に、裸像画も製作するのが流行で、ダビンチ作の「裸のモナリザ」も見つけました。
以外やベールに隠れた髪はクルクルで可愛いです。愛弟子のサライも裸像を描いていますが、ダビンチの方が髪が短くて健康的です。
「ダビンチ 裸のモナリザ」で検索するとあります。
2. Posted by よりばば   2012年09月30日 09:29
 昨夜、偶然観たNHKの深夜番組「追跡プロファイラー」が、なんと「ダ・ビンチ」がテーマでした。
 完成した作品は10点ほどしかなく、未完のままの作品が多いそうで、有名な「モナリザ」も彼の目には納得できず、他の2作品とともに最期まで手を加え続けたそうです。(モデル当時既婚の24歳のモナリザが、彼の美意識に叶うオトナの女性に変化した?)
 線でなく点で描く技法は彼の名づけで、「スフマート」だそうです。

 再放送があるなら、又観たいです。

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