以下は、ピーター・シモンズ:Peter Symonds という社会主義者の視点からのフクシマと、その背景の分析だ。当然のように、左翼的なまとめ方で、「資本主義」とその取り巻きが原因とされているが、左翼の視点で日本の原子力政策の問題点の一部を指摘していて、一部は日本の左翼的といわれる表現とも共通している。文中の「監督官庁と電力業界 の間の近親相姦的な関係」などは内政的な問題で、今後の政治の在り方で多少の改善もするだろうが、配管の損傷などハード面の問題による海水流入などは、国内の原発が同じような耐用年数を迎えている今、フクシマに限った問題とも思えない。このような未解決な問題を据え置いたままの安全宣言、原発再開こそが大きな問題ではないか? 国会に出された報告書では、あいまいで言いなりになる「日本人の国民性」が指摘されたが、以下の文章では、問題は「公衆の安全よりも、巨大電力企業の利益を優先した支配階級にある」「企業の国民いじめ」とされている。以下の翻訳元記事は「福島: 資本主義によってもたらされた大災害

nn20110513a1b2012年7月10日:「福島: 資本主義によってもたらされた大災害

独立の国会事故調査委員会による手厳しい報告は、昨年の福島原発災害を引き起こした安全対策の欠如を列挙した。3月11日の地震と津波によって解き放たれた自然の力は制御不能ではあったが、その壊滅的影響は予測可能で、大幅に抑えることができたはずだった。

福島第一原発を運営していた巨大企業東京電力は、原子炉を必要な耐震基準に合致するように補強しなかった。監督機関、原子力安全・保安院は、耐震規 準を施行する何の対策も打たなかった。東電も監督機関も、原発が津波を受けやすいことは承知していたが、何の対策もとらなかった。原発、東京電力本社、原 子力安全・保安院と首相官邸のあらゆるレベルで、災害対策は不十分であるか、存在しなかった。

その結果が、地震と津波が襲った際の大混乱だった。原発は全ての電源を失い、予備電源が故障した。これだけの規模の災害に対処するよう訓練されてい ない技術者と作業員達は、不十分な装置とマニュアルで状況を鎮めようと苦闘した。一連の水素爆発は原子炉建屋を酷く破壊した。第1、第2、および第3号炉 は部分的にメルトダウンし、高いレベルの放射能が海と大気中に放出された。原子炉を鎮めるのに何ヶ月もかかったが、損傷の全貌は不明のままだ。原発を解体 し、周囲の地域を清掃するには、何十年も要しよう。

政府、原子力安全・保安院と東京電力による計画的対応の欠如が事故を悪化させ、報告書が慎重にも“更に恐ろしいシナリオ”と表現したものが起きる恐 れがあった。現地住民の避難は混乱していた。何万人もの人々が十分に情報を与えられず、再三移動させられた、放射能の強い地域への移動も含め、避難地域 は、次々と拡大されたため。人々の健康や環境に対する事故の長期的な影響は不明だ。

1986年のウクライナにおけるチェルノブイリ・メルトダウン以来最悪の核惨事は、何十年にもわたる、政府、原子力規制官庁と原発業界の癒着の産物 だった。報告書は、原子力安全・保安院、原子力安全委員会 (NSC)と原発業界の関係を表わすのに“規制の虜”という言葉を使っている。言い換えれば、原子力安全・保安院とNSCは、公衆の安全ではなく、東京電 力等の企業の権益を守るように機能していたのだ。

先週公表された国会東京電力福島原子力発電事故調査委員会 (NAIIC)報告書は珍しく率直だ。報告書は明らかに、国民の広範囲に及ぶ原子力産業に対する疑念、不信、反対を一掃することを狙っていた。委員会は、 災害は“人災”だった、つまり怠慢と基本的な安全基準の意図的な軽視の産物だと結論したものの、誰一人、責任を問うていない。個人や東京電力を含めた団体 に対し訴訟を起こすことを提案しておらず、勧告を規制改革の為の一般的な提案に限定している。

NAIICの黒川清委員長は、災害の責任を日本国民全員に負わせようとしている。報告書の前書きで彼はこう宣言している。“事故の根本的な原因は、 日本文化の慣習に根ざすものの中にある。つまり、反射的な従順さ。権威を疑問視したがらないこと。‘計画を守り通そう’とする姿勢。集団主義。そして、島 国根性”

この発言には現実の甚だしい歪曲がある。日本の専門家達は地震と津波の起こりやすい地域に置かれた原子炉の危険性を長年警告し、監督官庁と電力業界 の間の近親相姦的な関係を明らかにしてきていた。彼らは、自分達の利益を守ることを狙う、強力で資金潤沢な原発村の圧力団体と対決しなければならなかった のだ。東京電力や他の電力会社内で、労働者を沈黙させているのは“集団主義”ではなく、いじめと脅しの経営体質だ。

福島災害の責任は一般の日本人にあるのではなく、公衆の安全よりも、巨大電力企業の利益を優先した支配階級にある。原子力産業の拡大は、日本帝国主 義にとって、日本のガスと石油輸入への依存を低めるのみならず、必要とあらば核兵器を迅速に製造する手だてを用意するための戦略的課題でもあった。

大企業、政府と業界間の癒着は、決して日本だけに限られない。あらゆる国において、職場や地域社会における労働者の健康と安全は、当たり前のよう に、利益の後回しにされてきた。更に過去三十年間の市場再編により、かつて存在していたわずかな規制も、計画的に浸食されてしまった。多くの場合、監督官 庁は削減されたり、企業の“自主規制”によって置き換えられた。

福島は、資本主義の犯罪的な性格を露呈した大災害の一つに過ぎない。一年前、メキシコ湾でBPが運営していた石油掘削装置ディープウォーター・ホラ イゾンの爆発で、11人の作業員が死亡し、アメリカ史上最悪の環境災害をもたらした。ブッシュとオバマの政権はプロジェクトを促進させ、大衆の懸念と反対 にもかかわらず、環境影響調査無しに進めていた。原油漏洩直後、オバマ政権は、巨大エネルギー企業が経済的・政治的な悪影響を最小限にするのを助け、事実 上のBP弁護士として機能した。ホワイト・ハウスは発端から、事故は、BPによるものを含め、今後の海底油田プロジェクトを妨げないことを明らかにしてい た。

最初は菅直人首相の下、現在は野田佳彦首相の下で、日本政府は、それと同様なサービスを、東京電力に対して行ってきた。東電には莫大な緊急援助を与 え、事故で生活に打撃を受けた中小企業や個人に対する支払いは制限した。先月、野田首相は、極めて限定されたいかなるチェックも無しに、一つの原子炉に再 稼働の許可を与えた。NAICC報告書が発表されたまさに同じ日に、きわめて地震の起きやすい位置にある大飯原子力発電所の第3号原子炉が操業を開始し た。

報告書による暴露から引き出されるべき本当の教訓は、資本主義と、健康と安全な環境に対する人間の最も基本的なニーズは両立しないということだ。福 島災害のような悲劇を防ぐ唯一の方法は、世界中のな労働者階級による利潤制度の廃止と、世界的に計画された社会主義経済の樹立にある。 ピーター・シモンズ

記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2012/jul2012/pers-j10.shtml ピーター・シモンズのその他の記事 発行元の、「the International Committee of the Fourth International (ICFI)」第四インターナショナルとは、レフ・トロツキーの呼びかけによって1938年に結成された国際共産主義組織を意味し、13ヶ国語によるオンライン組織「World Socialist Web Site」を媒体にしている。このサイトは企業や広告収入に頼らず、2008年から寄付で運営され、世界各国に支部もあると説明されている。米国での団体名は「Socialist Equality Party:SEP」



nappi11 at 04:23│Comments(3) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

コメント

1. Posted by 河馬親爺   2012年07月28日 09:01
最後の結論の一節は社会主義者としての観点からのモノだが、書かれている内容はまったくその通りであり、氏の指摘には我々が考えるべき多くの教訓を含んでいる。 起こった悲劇を繰り返さないため我々は今後どうすべきか、真剣に考えるときは当に今この時点なのだと痛切に感じる。
2. Posted by     2012年07月28日 09:35
資本主義なら東電が潰れてる。日本は社会主義だから東電と政府がなあなあになって事故が起こった。
資本主義のアメリカならスリーマイル島ぐらいの事故ですむが、共産主義のソ連ならチェルノブイリになる。真ん中の日本なら福島。社会主義度とちゃんと比例している。
3. Posted by よりばば   2012年08月01日 08:34
社会主義、資本主義で原発事故を分析?そんなに単純じゃないと思います。
 《人間》の判断ミス、想定ミス。そもそも建設段階からの手抜きや、設計書どうりでない施工などによるものが、誤操作や天災の際に露呈したのだと思います。
 愚かな人類が、踏み込むべきでない核の操作に踏み込んでしまった事、
一旦踏み込んだら撤退するのも困難。核の寿命は100万年単位も・・・。
未来までの禍根を残してしまいました。
 チェルノブイリでは命令で、防御服無しで多くの人々が作業に従事し、
メルトダウンの確認に炉の下部に一人入った軍人さえいます。
社会主義の利点?でしょうか。

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