タリバンとの和平をぶち壊したパキスタン
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軍人の協調性の無さ、視野の狭さが状況をぶち壊すと言ういい例だろう。すでに任務から退任した国連の代理で去年春から秘密裏にタリバン幹部と和平交渉を続けていたKai Eide氏(左上)はパキスタンに不満を述べた。
今年に入って多くのタリバン幹部がパキスタン軍に拘束されたが、その中にはNo,2のMullah Abdul Ghani Barader(右)を含む重要な3人の上位者が含まれ、国連側は彼らと中東のドバイや他で顔をつき合わせて交渉の最中だった。
そこに突然のパキスタン軍による逮捕が発生し、「パキスタンは自分のすべき役割を認識せず、全てをぶち壊した」と強 い表現で非難している。また、パキスタン軍はこれら逮捕されたタリバン幹部の役割も十分知っていたはずだと強調し、国連の意向に反する行動だと非難してい る。同時にタリバンと和平を進めていたアフガンのカルザイ大統領もこれを知って激怒したと伝わっている。
これはある程度予想できた事で、パキスタンには表面上内閣も議会もあるが、長年軍事政権が続いたために権力構造が政府と軍部と言う二重構造になっており、
時には政府決定さえも軍部は無視する傾向にある。政治家が軍部に不満を残せば暗殺されるような国柄だ。単純にこの戦争で手柄でも立てたかったのか、全てを
知った上での軍の逮捕なら、何らかの思惑があってのことだろう。国連はこれに対しパキスタン向けの国際支援などの見直しを含めて圧力をかけるだろう。軍部
がでしゃばる国と言うのは何時もこのような問題を起す。
強行な軍事制圧と民間容疑者の逮捕(これはイコール拷問を意味する)に反発したタリバンは、3000人の自爆要員の用意があると表明する中、Lahore
などで刑務所や市場を狙った自爆テロ(8日12人死亡、12日45人死亡、13日北西部ミンゴラで13人死亡)を頻発させている。検問には爆弾を積んだ3
輪車が、軍の施設には600キロの爆弾を積んだ車が襲い掛かっている。散発的とは言えパキスタン側の被害は甚大で、このままではパキスタン国民の中から軍
部批判が出てくるだろう。それがタリバンの狙いとも思える。すでにTTP(パキスタンタリバン)は一部の犯行声明を出している
左下は12日の連続自爆テロの現場写真。右下はラホールでの犯人手配ポスター。