イラク、アフガン、パキスタンの近況 2010年4月~

Ci100425090256Baghdadi_Masri_Kill_709248a イラクのヌーリ・マリキ(Nuri al-Maliki:上右)首相は4月19日、イラク情報機関と駐留米軍の合同作戦で国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)幹部2人を殺害したと発表し、持っている写真には幹部の生前と死後の顔が写っている。米政府も死亡を確認。殺害されたのは、アルカイダの指導者オサマ・ビンラディン(Osama bin Laden)容疑者と直接のつながりを持つとされるトップクラスの司令官アブオマル・バグダディ(Abu Omar al-Baghdadi:上左 ISI の最高指導者)容疑者とアブアイユーブ・マスリ(Abu Ayub al-Masri:上中央)容疑者。イラク米合同軍がバグダッド北方のティクリート(Tikrit)近郊で18日早朝に行った掃討作戦のミサイル攻撃で死 亡した。そこは彼らにとって最も安全な「Safe house」と呼ばれるアジトだった。

個人的には数年前にオサマ・ビンラディンはパキスタン山中で病死していると思っているが、アルカイーダは組織維持の為、米軍は作戦続行の大義名分の為に死亡していたとしても公表しないだろう。

パキスタン、アフガンでの相次ぐタリバン幹部の拘束、ミサイルによる幹部死亡、イラク内でのアルカイーダ幹部の相次ぐ死亡でイラク首相の言う「アルカイーダの弱体化」は間違いない事実だろうが、アルカイーダに関しては国際組織だと言う事を忘れてはならない。アルカイーダを含むスンニ派は世界のイスラム教徒の85%を占めると言われ、アフガンタリバン、パキスタンタリバンTTPの様なローカルな反政府組織とは大きな違いがある。

全体的には米軍、国際軍の作戦が功を奏しているが、その反面3月から4月にかけてイスラム系の爆弾テロも猛烈さを極めている。以下にその後ここ1週間前後のアフガン、パキスタン、イラク内での大きな出来事を書き出しておく。米軍はすでにこの3カ国内ならどこでもピンポイントでヘリコプターでのミサイル攻撃、無人探査機によるミサイルを撃ち込める体制を確立し、各国も情報支援体制を継続している。ハイテク技術がテロ組織を追い詰めた21世紀型の戦争だ。

ci1004251041495b55d4月15日:依然としてアフガニスタン東部で勢力を温存しているタリバン系ハッカーニネットワーク Haqqani NetworkのリーダーSiraj Haqqani(写真右シラジュディン・ハッカニSirajuddin Haqqaniとも書く )はインタビューで「アルカイーダメンバーの参加を歓迎する」と公表。実態は壊滅的な打撃を受けていると思われる。彼はこのグループの2代目のリーダーで、最近の写真では随分と老け込んでいる。
4月17日:パキスタン北西部Kohatで爆弾テロにより42人が死亡。自称Lashkar-i-Jhangvi al Alamiが犯行声明を出した。このグループは南ワジリスタンをベースにするタリバン、アルカイーダの混成組織と言われる。

4月18~19日:イラク軍はイラク北部Mosul近郊Tikritでアルカイーダ司令官クラスの2名を殺害したと公表。米軍、イラク軍によるThar Thar regionタルタル地区での共同軍事作戦の最大の成果だった。

 4月19日:アフガン東部、パキスタンに近いクナール県Kunar provinceのクレンガル渓谷Korengal Valleyの補給基地から米軍が撤退。昨年末、米軍は同じ地域のヌーリスタンNuristan 補給基地からも撤退している。タリバンは撤退後の基地に乗り込み、多くの弾薬食料、燃料を残して撤退した米軍の劣勢をビデオでプロパガンダしたが、米軍は 補給が困難になったための作戦的な撤退で、弾薬箱は空で兵器は破壊してあり、燃料、食料は地元民の為に放置したと苦しい言い訳をしている。

4月19日:パキスタン北西部ペシャワールPeshawar、他の地域Kohat 、Quettaで16日以降連続の自爆テロが発生し、民間人、軍人23人が死亡。各犯行はアルカイーダとタリバンの共同犯行と見られ、パキスタン軍のパキスタン北西部、南北ワジリスタン周辺への軍事行動、最近のタリバン逮捕に反発したテロと思われる。

habibullah-kunduz-thumb5b95d4月23日:パキスタンの北ワジリスタンBoya村付近でパキスタン軍の車列がロケット砲と銃による待ち伏せ攻撃に会い、8人が死亡、16人が負傷した。タリバンはパキスタン軍により子供らが死亡したことへの報復と犯行声明を出した。

4月23日Tikritでのアルカイーダ幹部殺害後に、イラクのバクダッド、その近郊アンバルBaghdad 、 Anbarで少なくても13箇所で連続爆弾テロが発生し72人が死亡した。下は爆弾テロの惨状、道路は血の海になっている。すでに昨年末から シーア派、スンニ派、アルカイーダの抗争、復讐が激化している。 今回は18日の幹部殺害に対する報復テロと言われている。

 4月24日:パキスタン内北ワジリスタンのタリバン、アルカイーダの基地があると言われるMiramshahに8日間に渡るこの周辺への初めての空爆でタリバン7人を殺害

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5月18日: ア フガンの首都カブールKabulで 国会に近い場所の国軍の兵役センターが自爆か自動車爆弾で襲われ少なくても18人が死亡負傷者47人以上。同日その少し前にはNATO軍の車列が自爆テロ に襲われ民間人20名ほどが負傷した。最近2カ月ほどは首都でのテロは起きていなかった。タリバンが犯行声明を出している。既に9年になるアフガン駐留で の米軍死者は992人とペンタゴンが公表。

5月19日:アフガンの首都カブール北東部にある米軍、NATO軍が使用するバグラム飛行場Bagram air baseがタリバンの襲撃を受け、タリバン7名が死亡、アフガン側にも負傷者が出た模様。

5月28日:パキスタンのラホールLahoreにあるモスク(礼拝堂)2か所が銃と手榴弾で武装したテロリストの襲撃され、一部が人質に取られ警官と交戦、テロリスト3人が着こんだ爆弾で自爆を敢行。人質を含む約82人が死亡した。この寺院は預言者ムハンマドを信仰していない「アフマディ Ahmadi または Ahmadiyya」 と呼ばれる信者たちの礼拝兼集会所で、過去にもイスラム教の解釈の違いからスンニ派から攻撃を受けたことがある。アフマディはイスラム主流からは異端者と 見られている。襲撃が組織的だった事からも、恐らくスンニ派系イスラム原理主義者タリバンの犯行ではないのだろうか?攻撃対象が軍や警察、行政施設でない ことで、既にパキスタン国内の市民戦争が危惧されている。その後、パキスタンタリバン TTPの犯行声明が確認され、逮捕者の供述から北ワジリスタンで訓練を受けた集団で、一部は逃走した。その後の経過

1件のコメント

  1. よりばば
    投稿日時: 2010年4月26日 2:24 AM | パーマリンク | 返信 | 編集

    組織はトップが弱体化すると、かえって、下部メンバーの暴走が始まるのでは?統制がとれなくなり、先も読まずに動き出す。末期状態の時が一番怖いですね。



nappi11 at 09:42│Comments(0)TrackBack(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

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