⑮さて、これからが問題だメキシコ湾原油流出 図解 最終章
とりあえず48時間以上バルブを閉めても装置が安全なことは確認できたようだ。今回の成功は海底深部から海底まで高圧で吹きあげている原油の海中への流出(漏出を)止めるのが目的で、今後は2本のパイプで海上の2隻Helix producer 、 Q4000 の原油回収専用タンカーと海上基地(Rig)へ海底まで上昇した原油100%が海上へ送り出される予定。
根本的な解決は、海底からの高圧な上昇原油を、横漏れの危険の無い、6000m付近の深いところで止めることBottom Killで、BPの正念場はこれからだろう。
今回の作業の図解(上の図)
この図には見えないが、破損した油井の上部パイプを切り取り、その上に1段目の装置を乗せた。(図の直結部分)、それから2段目として上の装置を乗せバルブを閉めた。装置の頂上に有る排出口から原油の出ないのを確かめてキャップ(黄色いふた)をかぶせたという風に解釈している。バルブを閉めても頂上から原油が出る場合は洋上からのパイプを差し込んでつなぎ全量回収する準備がされていた。今後は一定の期間、装置が高圧に耐えることが分かったので、恐らく2段目の辺から2本のパイプで海上へ原油を送り出す作業に入る。つまり、ハリケーンなどで洋上の作業が中断してもバルブさえ閉めれば回収を中断しても海中への原油漏出は起きないと想定されている。
2010年7月18日:(日本時間日曜)既定の圧力試験期間48時間は過ぎたが、BPは引きつづきバルブを閉めたまま更に24時間圧力試験の監視を続行すると発表。海底下で、管の破損によって原油の横漏れがないかチェックする。やはり原油が海底の他の場所から噴き出すことを相当懸念しているようだ。装置内部の圧力は徐々に上昇して居るが、当初の予測よりも圧力が低い説明として、どこかへ漏れ出ているか、地下の原油が相当量を噴出した為ではないかと説明している。オバマ大統領は金曜日に成功を喜ぶ談話と共に、「我々にはするべきことがまだ相当残っている」と安心はまだ早いと警戒している。
2010年7月19日:BPのエンジニアとしては今の洋上への回収もせずバルブで原油が止まった状態で8月の最終工程、深部での予備抗からのセメント注入に突入するのが理想だが、学者の中から破損した油井近くの海底から別なメタンガスと原油の噴出を確認したと非公式な情報が出ている。また油井自体からの漏れも発見されたようだ。BP側はこれに対しコメントを避けているが、地下のパイプの破損場所から海底に漏出の可能性を否定していない。これが事実なら、漏出を少しでも防ぐために、洋上へ右下図のようにバルブを開いて原油の送り出しを再開する可能性があり、これには米国側の許可が必要になる。その際、作業上3日ほど原油が海水中に噴出することが起きると言われている。今の圧力テス ト後の洋上への原油送り出しは当初の計画の範囲内なので、現在もリグ(回収基地)とタンカーは洋上で待機している。連邦漏出監視機関 federal oil-spill response はBpに対し現地18日日曜日夕方、21時までに海底を観察した正確な報告と漏出に対してバルブを開く用意をする事への返答を求めた。この通達には政府側のBpに対する厳重な監視体制と調査報告の遅れに対する不満が込められ、通達には返答を4時間以上待っている余裕はないと書かれている。装置の異常についての報告も求めているが、どんな異常なのかは明記されていない。
2010年7月20日:政府側の事故監視機関のタド・アレン氏National Incident Commander Thad Allenによれば見つかった異常は重大なものではないと断定したコメントがあり、科学者から油井から1,9~3,2km離れた海底で見つかった海底の割れ目からのガス(メタン)の漏出は以前からの天然もので、油は目で確認が難しいほどの粒子で以前からみられる自然現象であり油井からは遠く破損油井とは無関係と説明、またBPは海底の油井本体で確認された5か所の泡については、一つは海底からの天然の窒素ガスで、ほかも装置から浸み出している程度で重大な問題にはならないと結論した。次の作業は未確定だが、恐らく装置内のバルブを開き海上への原油送り出し(右下の図)が開始されるだろうと言われている。
また、別案として現在の装置に特殊な泥を注入し原油を下方に押し戻すことも検討されている。一度失敗しているが、当時より原油の圧力が低いので成功の可能性が高いと科学者の分析。
2010年7月21日:現地20日の連邦原油監視機関によれば、事故現場付近には3,2km以内に2か所の油井があり、一つは原油を生産していない、もうひとつも放置油井abandoned wellで、ここで海底からの浸み出しが確認されたが、不安を感じる必要の無い程度のものだ。メキシコ湾海底全体には27000程の放置された油井があるが個々にはチェックされていない状態だ。現在は期間を延長し海底部の大型キャップに装備のバルブで原油を抑え込み(テスト)、装置内圧力の推移を監視しながら7月下旬か8月上旬には海底深部での予備抗からの泥とセメントの注入にこぎつけたい意向だ。前後してバルブを閉めたままで海底の大型キャップに泥を注入する案Static killを米国側に打診している。
2010年7月22日:現在バハマ諸島付近にある暴風雨が発達して熱帯性低気圧ハリケーンとなって北上し、今週日曜くらいにはルイジアナ沖まで到達の見込みで、原油流出地域直撃の可能性が高い。現地21日午後の段階で海底の油井にはバルブを閉めたまま泥を注入するStatic killを行うと決定した。予備抗の掘削は22日(現地21日午後時点)で続行しているが洋上基地の引き上げの用意に入っている、洋上のすべてがまだ避難はしていないが清掃作業の一部の漁船は引きあげている。作業の遅れは最大で10日から14日程になる。
2010年7月25日:ハリケーンの為に中断し引き上げた作業は、暴風雨が衰えたため24~48時間で再開の予定で、3~5日で海底の油井に泥とセメントを注入するStatic killを行う予定。説明からすると海上から油井の両サイドへ細いパイプで流し込むようだ。右の下から2番目の図でいけば原油を送り出す2本のパイプの部分からと思われる。右の下の図は泥やセメントの流れで、パイプを横断している3か所が開閉バルブだろう。現在はすべてのバルブが閉まっている状態。
2010年8月3日:海底の油井のバルブは閉めたままで右下図のように破損油井に泥とセメントを注入する作業が始まった。油井の封鎖作業は2段階に分かれ、第1段階として今回着手したのは、泥の大量注入で原油を貯留層まで押し戻すもので、33~61時間を要するという。海底深部予備抗への注入は8月中旬以降の予定。
2010年8月4日:泥、セメントを注入するStatic killは成功したとBPが公表。約100日間、500万バレルほどを海中に放出した海底油井の破壊漏出事故は一応の終焉を迎えたようだが、米国側は喜ぶにはまだ早いと慎重で、モニターでの監視を続行し、予備坑道での注入成功に全てをかけているようだ。しかし長かった。このブログも最初に書いた①から⑮までの連さいになり、エンジニアたちの苦闘の記録となった。海上での原油の除去も75%が除去されたと言う。
2010年9月20日:米国は20日、原油漏れを起したマコンダ252油井Macondo 252 wellへのセメント注入も終わり、その後の調査から流出油井は完全制圧されたと公表した。これで490万バレル(206 million gallons .780 million litres) の原油を放出した今世紀最大の原油流出は幕を閉じた。 以前の経過⑭ ついに原油漏出止まる!? 参考ブログ:①ルイジアナ州沖の石油基地爆発炎 海底から噴出続く
その後のまとめ 参考:アラスカ沖の全原油流出量は日本の1日分石油消費量!