一人っ子政策は人口の爆発的増大を抑制するために70年代末に始められた。都市部に住む夫婦が二人以上の子どもを持つことを禁止するものだ。農村部 の夫婦については、一人目が女児だった場合に限り二人目を持つことが認められた。違反に対しては高額の罰金が科せられたほか、公職からの追放や党籍剥奪な どの厳罰が下された。 時代を経て、制限が一部弱められた。夫婦ともに一人っ子なら二人目の子どもを持つことが許された。しかし2014年、中国人夫婦100万組弱が、二人目の子どもを持ちたい旨の申請を行った。予測の半分に過ぎない数字だ。社会調査によれば、都市部の家族では、財政上の理由から、夫婦は依然として一人しか子を持たず、その養育費に集中するという傾向が見られた。
一人っ子政策は社会に深刻なゆがみをもたらし、不満の声が高まっていた。これまで 中国の人口成長は急速に鈍化し、一人の子どもが両親とそのそれぞれの父母を養う「1-6」モデルが一般化した。 もうひとつが性別の偏向である。15歳以下の世代では、女子100人に対して男子が118人もいる。これが将来的に深刻な社会不安定要因になるかも知れな い。参照記事 英文記事 参考記事:中国1300万人の無戸籍児、一人っ子政策の「負の遺産」
この、1990年代に毛沢東 Mao Zedong、鄧小平Deng Xiaopingが残した悪しき遺産をいまさら見直しても、中国が抱える高齢化問題Aging Crisisの解決にはならないといわれている。あくまでも見直しで、国家が二人の子どもに制限する国家統制は残ったままだ。
統計上、中国は2020年に人口のピークを迎え、2050年には労働人口が今より6千万人減少し、この規模では高齢化社会、増えきった国民を維持できないといわれている。年金を含む福祉政策がとくに農村部では整備されていないからだ。中国は雇用を創出し、食料を含む資源を調達すれば国は繁栄すると思っているかのようだが、生活苦に直面するだろう高齢者が激増する現実には目立った政策もなく、日本も抱える労働力不足には打つ手がないようだ。さらに現在無産階級化する労働力は、高齢化も伴い中国の農業がより衰退することを暗示させる。かつて、資本家や地主ら有産階級を追い出し、農村の繁栄を夢見たのが毛沢東だった。
中国政府は2013年から「夫婦のどちらかが一人っ子の場合、2人目の出産を認める」という緩和策を打ち出し、対象となる全国1100万組の夫婦から毎年 200万人が生まれると見込んだが、実際のところ、2人目の出産申請は今年5月までに13%台にとどまっているとされる。その背景には「産みたくても、子 育て費用が高すぎるから諦めてしまう」などの現状がある。米通信社ブルームバーグによると、中国で子ども1人あたり18歳までの平均年間生活費は2万3千 元(約43万円)で、世帯平均年収が5万3千元(約100万円)の家庭にとって経済的負担が重すぎるとしている。参照記事