米 ワシントンWashington州レークウッドLakewoodのカフェで29日朝、客として店内にいた警察官4人が、入ってきた男に射殺された。男はそ のまま逃走。店内にいた店員や他の客は無事で、警察は「明らかに警察官を標的にした犯行」として、犯人の追及に全力を挙げている。事件が起きたのは午前8 時15分ごろ。死亡したのは男性警察官3人と 女性警察官1人で、いずれも制服を着用し、店外にパトカーを止めて、カフェで夜勤明けのひとときを過ごしていた。事件後、3人の妻、9人の子供、一人の夫 が取り残された。 (右下事件のあったカフェ)
殺された警官の一人は犯人と格闘して銃を撃っているが、犯人に当ったかは不明。その後容疑者としてモーリス・クレモンズMaurice Clemmons, 37歳が浮かび上がり、日本時間の30日夕方6時現在、(現地の30日の早朝)自宅に隠れているとしてSWATに包囲され、投降の呼びかけが行われている。彼は現場から逃走直後、子供時代に面倒を見てくれ、一番信頼している叔母の Maurice Clemmonsさんに連絡をとり隠れ先と助けを求めたが、彼女は子供達を避難させた後密かに警察へ通報していた。叔母は、彼が殺人後興奮し、警察の事で落ち込み、おかしくなっていたfrustrated and sickと言い、(約1週間前の)出所後は被害妄想 paranoidを持っていたと語っている。(動機のはっきりしない事件だが、この辺が事件の真相かもしれない。出所直後から警官を憎悪し、「殺さなければだめだ」と言う強迫観念さえ持っていたのかもしれない。はっきり書かれていないが、SWATがシアトルの自宅を急襲したのは叔母の通報のようだ)
シアトルSeattleの民家でSWATに包囲されていた容疑者モーリス・クレモンズMaurice Clemmons,は怪我を負ったか、又は死亡して身柄が確保されたと、この記事を書いている間の日本時間20時25分頃情報が入った(現地は30日早朝 3時頃)。 写真上は亡くなった警官4人、右下容疑者。死亡または負傷。威嚇弾の使用もあったようだが、家屋内に発見できず?現場が早朝で発表が無く詳細は不明。その後(現地午前9時頃) の情報では、SWATの包囲の中、恐らくカフェで受けた銃弾を腹部に抱えたまま家から逃走した模様で、警察は複数の助けで一人で逃げていると見ている。逃走中に死んだ可能性もあるが警察は付近を封鎖し捜索し、容疑者についての情報には12万5千ドルの賞金がついている。
12月1日早朝2時40分頃(日本時間1日19時40分ころ)、逃走中のモーリス・クレモンズは盗難車捜索中の警官に発見され南シアトル郊外で射殺され、さらに逃亡を助けた容疑で6人が逮捕された。(Darcus D. Allen:刑務所仲間で警官襲撃時のドライバー、怪我を治療した女性2名、Eddie Lee Davis と Douglas Edward Davisの兄弟、クレモンズの腹違いの兄弟(half-brother)Rickey Hintonの6名、更に12月4日姉妹のLatanya Clemmonsが逮捕された)
パトロール警官 ベンジャミン・ケリー Benjamin L. Kelly, 39歳(4年半この部署に勤務、軍務経験がある。この時は一人で盗難車の捜査をしていた 右)がSouth Kenyon Streetでボンネットを上げ、エンジンのかかったままの不振な車両(写真左)を発見、ナンバーから2時間前に報告のあった月曜に盗まれた盗難車と確信 し、パトカー内で報告書を作成中に男が後部から運転ドア側に近づいてきた。それが手配中のクレモンズだと気づき、すば やくパトカーから降り、男に立ち止まって手を見せるように警告するが無視して逃げようとしたため、更に警告した上で数発発砲し身柄を確保した。その後クレ モンズの死亡が確認され、警官から奪った拳銃も発見された。容疑者には少なくても2発命中していた。彼は友人や家族(姉か妹)から傷の手当てや資金、携帯 電話、車などの助けを受け日曜以降逃走しており、すでに関係者6名が拘束された。殺人鬼に一 人で立ち向かった警官は、すでにヒーロー(英雄)と賞賛されている。4人の警官殺害の際に、運転手として容疑者の逃亡を手伝ったDarcus D. Allen(写真左中:彼には名前が二つあり、Randy Hueyまたは Darcus Allen,)も逮捕されたが、彼は容疑者とは刑務所仲間で、彼もまた1990年の2名の殺人で25年の刑を受けていたが2004年に保釈されていた。ま た、射殺されながらもモーリス・クレモンズに銃で反撃して怪我を負わせたのは、殉職した警官Greg Richards(写真右端:42歳、妻と3人の子供を残した)と判明した。(ベ ンジャミン・ケリー Benjamin L. Kellyはその後2010年4月に表彰された。右の犯人の下が彼の写真。 アメリカ人に言っても鼻で笑って理解できないだろうが、幾ら 相手が凶悪犯人であろうが、射殺した警官がヒーロー扱いされる社会と言うのも異常ではないか?いろんな証言からは容疑者が精神的に問題のあったことが分か る。刑務所が更正施設の役割を果たさない限り犯罪が犯罪を生む悪循環は永遠に続くだろう。容疑者を弁護する気はないが、彼の目が余りにも寂しい。全てに絶 望したような目をしているのが妙に気になった。また、今のところ容疑者が警官に向けて撃ったと言う事実は出てこないし、現場で銃が見つかったとは言うが、 銃を所持していたかもはっきりしない。夜中に近づいてきた黒人がはっきりモーリスだと確認できたのか?警察の発表は余りにもきれいに警官に有利過ぎる気が する。警官たちに逮捕せずに殺せと言う心理が在ったとしても不思議ではない)
また凶悪事件かと思いながら、この容疑者の犯罪歴を読みながら愕然とする。少し前に書いたジェイシーさん誘拐監禁事件の犯人、フィリップ・ガリド、そして最近のクリーブランドの連続殺人犯で 11人殺害のアンソニー・ソーウェルと良く似ているからだ。この警官殺しの犯人も長い事犯罪を繰り返しては刑務所を保釈で出ることを繰り返している。犯行 はアメリカ西部が中心で、アーカンソー州Arkansasで5つ、ワシントン州Washingtonで8つの犯罪の容疑者で逮捕され、精神的な疾患も指摘 されているが、そのつど保釈されている。1989年17歳の時強盗、他の罪状で108年の服役刑を受けるが、若く将来があると9年前の2000年に当時の アーカンソー州知事Mike Huckabeeが刑期を減刑して服役11年で釈放。Huckabee氏は当時の保釈委員会の判断によるものだと答えている。Huckabee氏は去年の 共和党の大統領候補になりかけた人で、今回の事件には「悲惨で痛ましい出来事だ」とコメントしている。
彼を知るものは「もし今回の警官殺害が彼の犯行なら、彼に対する二つの州の彼への処罰に対するミスで司法の欠陥だ」とコメントし、暗にアーカンソー州の保 釈審理のミスを指摘している。彼は出所後2004年には結婚し、順調に造園の仕事をしていたが、今年5月幼児への性的暴行、その際に警官を殴り、ワシント ン州ピアース郡Pierce Countyで数ヶ月間未決囚で拘留中だったが、彼がまだワシントン州での7つの犯罪の容疑者であるにもかかわらず、今回の事件の6日前に保釈されてい る。右下が2004年夏に結婚したときの写真で、真ん中が妻、左は判事
この5月の事件の際には心理テストを受けているが、彼の受け答えは平常で、裁判の手続きも理解し問題無しと判定され、彼は今まで心理治療を受けたことも無 く、事件前後もアルコールや麻薬を使用したことはないと発言している。しかし記録には判定員達へ(evaluators)、自分は幻覚を見ることがあり、 その中では「人々が人間の血を飲み、赤ん坊を食べている」と言い、3週間ほど続いたその間は食べる事も寝ることも出来なかったと記録に残している。さらに 「自分でカウンセラーを尋ねそれらは収まった。 カウンセラーは自分を精神障害Psychotic Disorderだと診察した」とまで聴取の過程で言っているが、司法はなぜか聞き流している。誰かを傷つけようと思ったことはとの問いに「時々、そうい う事を考えます。…誰も、警察は嘘をつくことができないと思います。Sometimes I think about it. … Everybody thinks the police can’t lie.」と少し意味不明な答えをし、さらに問いただすが、彼は特定の攻撃目標を示さなかった。結果的には彼への判定は「ストレス」以上のものでは無かったが、過去の強盗事犯などから、「将来に於いて危険な行為をする(人物)」という判断に及んでいる。
彼の別な記録には、警官の顔を殴った暴行歴や、自分の妻や若い身内を裸にして「日曜日には最低5分は裸になれ」と言 い、全員に自分を信じると言えと強要し「やがて世界の終わりがくる。私はイエスだ」と言ったなどの奇行が記録されている。幼女への暴行の取調べの際、彼の 妹は「彼は正常ではありません。彼は法の執行に対しどう対処して良いかさえ分かっていません」と答え、彼は「やがて秘密警察が来る。自分が大統領に手紙を 書いたからだ、、」といったとも妹が後述している。これだけでも彼がまともでないのは分かる話だが、この事件では数ヶ月で保釈になり、1週間もしないで警 官4人を殺害した。事件の前日、彼は友人に自分は警官を殺しに行くと言っていた。
過去の減刑が無ければ彼はまだ刑務所の中で、今回の事件は起きなかっただろうと Mike Huckabee氏 (写真左)に非難が集まっている。ハッカビー氏はどうやら人種差別撤廃論者らしく、減刑の際にTVで「彼がもし中流の白人の子供なら弁護士を雇う事も出来 るが、黒人で貧しいが為に17歳で108年の刑を受けたんですよ!」と弁護していた。知事が減刑するまでの11年間の服役期間中、彼にはなんら精神治療ら しきことはされていなかったことが判明している。ワシントン州は1993年から死刑制度を 再開している。写真左上:市内を捜索中のシアトル警察11月30日午後(日本時間12月1日午前)。過去の凶悪事件と共通するのは、あいまいな基準で凶悪 犯罪者を早期に保釈している事で、米国内で基準や審査のあり方が大きな社会問題になるだろう。特筆すべきは、事件後翌日には多額な賞金が設定され、今回も 多くの有益な情報を警察が収集した。この迅速さは日本も見習うべきだろう。
2009年12月2日:ワシントン州のグレゴア州知事が、自州の住民の安全の為 「より良い送還システムが保証されるまで、アーカンソー州からの仮出所者を受け入れない」と述べた。アーカンソー州で減刑の上仮釈放されたモーリス・クレ モンズ被告が、ワシントン州で警察官4人を射殺する事件が起きたことから、同被告の監督についてワシントン州とアーカンソー州の両政府の論争に火がつい た。今年5月にワシントン州で同被告が警官に対する暴行と幼い少女のレイプの容疑でワシントン州ピアス郡警察が同被告を逮捕したが、以前に仮釈放を認めた アーカンソー州は仮釈放の条件に違反したとして令状を発行。ピアス郡は同被告を刑務所に一時拘留したが、アーカンソー州から送還手続きの担当官が到着せ ず、この令状は取り消され、同被告はワシントン州の拘置所から保釈金を支払い仮保釈で出所し、その6日後にワシントン州で警官4人を殺害し射殺された。今この事が議論になっている。断片的な事実を読んで「なぜ?」の多い経過である。
2009年12月3日:何故か射殺直後の写真がインターネットに流れ、警察が出元を捜査しているようです。写真はここで開きますが、モーリス容疑者の射殺死体写真 Maurice Clemmons’ dead bodyなので個人の判断で閲覧ください。
2009年12月7日:審理中のモーリスの34歳の妹Latanya Clemmons(写真右下)は、警官殺害後のモーリス、運転手のDarcus D. Allen(写真左、上から3番目)の二人を隠まい、逃走を幇助したとしてワシントン州Pierce County Superior courtは7日保釈金を$1.5 million 150万ドル(1億3000万円)と決定した。高額なのは捜査に非協力的だと言う判断による。現在事件の協力者は7名で、そのうちの一人で有罪になる見通しが高い。二人ともまだ起訴されていないが、妹は9日に起訴される見通しで、アーカンソー州の刑務所から保釈中だったDarcus D. Allenには保釈中の逃亡で保釈金は無く、このままワシントン州で審理を受け、アーカンソーへの身柄返還は無い模様。9日、妹のLatanya Clemmonsは、事件時の運転手Darcus D. Allenにホテルの部屋を用意し、州から逃げる為のバス料金を渡した事で起訴された。