刑務所から殺人に出かけ、刑務所に戻る??
メキシコ北部トレオンTorreonで7月18日、武装グループが誕生パーティーの会場で銃を乱射して17人が死亡した事件は、検察の捜査で、北部ドゥランゴ州ゴメスパラシオ近くにあるゴメスパラシオ刑務所Gomez Palacio prison のマルガリータ・ロハスMargarita Rojas Rodriguez所長や看守ら4人から受刑者約20人が自動小銃や5台のSUV車を借り受けて18日未明現場に向かい、集団殺戮事件を起こした可能性が高いと判明した。その後彼らは元の刑務所に戻っている。メキシコの検察は、7月25日、この事件に関して記者会見を開き、今年2月1日と5月15日にも同様の 殺人事件が刑務所付近で起き、あわせて18人が殺害されたが、使われたライフルが同じ事から、この事件につい ても同じ刑務所の受刑者がかかわった疑いがあると見解を出した。
もうなんでもありのメキシコだが、読んでいて読み間違いかと思うほどの、想像を超えた犯罪国家メキシコ。刑務所の囚人が刑務所から出張して殺人をしているとは、、何と26日にはこの刑務所の囚人が屋上に上がったりしてデモをしたが、要求は拘束された刑務所長や看守の職場復帰と刑務所に乗り込んできた軍隊の退去だという!
この事実の発覚は、この地域でガルフカルテルと抗争するセタスからの投稿ビデオからのようだ。25日公開されたビデオには自称25歳のこの地域で拉致された警官Rodolfo Majera が 、刑務所の職員の協力で囚人が外部の対立メンバーの暗殺を行っている事を具体的に告白させられている。恐らくこのYOUTUBEでの公開が25日の急な警察発表となったのだろう。左の写真はビデオからのもので、相当に拷問を受けたようで最後は背後から射殺されている。ビデオの内容から写っている武装した男はセタスの構成員と思われ、襲った囚人は恐らく対立しているガルフカルテルからの指示でセタス関係者を殺害したということになる。(ビデオの最後には射殺場面があるので閲覧する際は注意してください)過激麻薬組織セタスの掟から推測すれば、手を貸した所長も看守も長くは生きていられないだろう。 26日にはこの地域のTVクルー、レポーター4人が先の刑務所の取材後誘拐され、誘拐犯の要求はこのビデオをTV放送しろと言うものだった。現地TVニュースではすでにビデオの一部を放送しているが、TVスタッフは29日現在依然行方不明。2010年だけですでに7人のジャーナリストが麻薬組織に殺害されている。
2010年7月27日:上の事件の舞台になった地域のドゥランゴ市Durangoで、8人の切断された首と遺体各部が市の郊外3~4箇所の路上で正体不明な通報で発見された。実行組織の特定はまだだが、手口はセタスの過去の犯行に酷似し、一連の事件のカルテル間の報復と見られる。米国紙の一部にシナロアとガルフカルテルの抗争と書いたものがあるが、破綻していなければシナロアとガルフは春頃からセタス対策で同盟関係にあり、ガルフ、シナロア連合とセタスの抗争と見ていいだろう。地理的にはシナロア支配地域になる。
20101年7月30日:フアレスカルテルのリーダークラスロヘリオ・セゴビア・エルナンデスRogelio Segovia Hernandez, 通称"El Royser,"左下がチワワ州で大量のクラックコカインと粉末コカイン、武器の所持で27日逮捕された。他に誘拐、殺人、恐喝の容疑、およびフアレスカルテル傘下の暗殺集団「La Lineaラ・リネア」を率いていた。麻薬組織の脅威から、フアレス市内の米国領事館の閉鎖が決定され、再開の時期は未定。
29日にはシナロアカルテルのNo,3 Ignacio "Nacho" Coronel右下がGuadalajara市で軍隊と交戦の末射殺された。シナロアはno,1の2001年刑務所から洗濯物集配車で脱走し逃亡中のホアキン・エル・チャポ・グスマンJoaquin "El Chapo" Guzman、no,2のIsmael "El Mayo" Zambadaが太平洋側ルートで麻薬密輸を行っているので有名。彼はメキシコ内の秘密工場で大量の合成麻薬メタンフェタミンmethamphetamineを作っていたと見られている。高級住宅街Colina de San Javierの自宅からは武器、宝石、現金7百万ドル約6億円も見つかっている。
2010年7月31日:誘拐されたジャーナリスト4人の内3名が救出され、新聞記者Oscar Solis氏が依然行方不明 警察は誘拐にシナロアカルテルが関係していると見ている。