米軍はイラクから撤退できるのか?

イラクでは相変わらず、爆弾テロが続いている。8月末の米軍の戦闘任務終了と、戦闘部隊の撤退について、オバマ大統領は8月始めに「予定通り実施」と宣言した。米軍は、イラクの治安は相対的に安定し、死傷者はひくいレベルにあるという認識に基づいているが、現実はそれとは程遠く、イラク政府は前回の総選挙以降5ヶ月たってもいまだに政権が樹立できず、不安定な状態が続いている。複雑な民族とイスラム教宗派の思惑が全てを困難にし、現政権が復讐と派閥意識から旧フセイン時代のベテラン政府職員を排除した事が更に政務の遂行を難しくしている。

2010817162756385580_8 米軍は7月の民間人の死者を「222人」としているが、イラクの民間人の死者を集計している米欧の市民組織「イラクボディーカウント(IBC)」の今年7 月の結果では過去最悪の1ヶ月469人(右図)で、これでも集計は最小値と言われ、イラク政府は535人と公表し米軍の数値が異常に低いのが歴然としてい る。8月はすでに15日時点で326人が犠牲になり以下の被害を加算すれば18日で大よそすでに400人が犠牲になっている。

2010年8月15日:イラクの首都バグダッドなどで15日、爆発や銃撃が相次ぎ、合わせて少なくとも9人が死亡、20人が負傷した。

201081835414436580_5 Ci100818231648 2010年8月17日:イラクの首都バグダッドにある兵隊を募集する旧イラク国防省跡リクルートセンターで自爆テロが発生し61人が死亡、125人以上が負傷した。 この日はイラク第11大隊の兵員募集最終日で、建物の外に若い男性が多数集まっていた。そこに軍人に変装した自爆犯が現れ、希望者の名前をチェックをする と自分の周りに100人以上を集め、その直後に着込んでいた自爆ベストを爆破させ、一瞬にして例のないほどの多数が死亡した。アルカイーダの攻撃集団イラ ク・イスラム国(ISI)The Islamic State of Iraq (ISI), al-Qaeda’s front in Iraqがウェブサイトに犯行声明を出し、彼らの攻撃目標は「イラク内のシーア派Shias、及び金の為にスンニ派Sunniを攻撃する道具と化した背教徒達だ」としている。左の現場写真では流れた流血が地面の色を変えている。

首都バクダッドでアルカイーダの犯行によるタンクローリーの爆発で8人が死亡、44人が負傷した。バグダッドの北東 ラビヤー村でvillage of Rabiyah, northeast of Baghdad、アルカイーダを名乗るマスクをした武装集団が村を襲い、3軒からシーア派Shiite農夫3人を外に連れ出し銃殺した。米軍、イラク政府 に協力するものへの見せしめだという警告書が残されていた。村の関係者に寄れば、3人は農夫で政府にも米軍にも関係していないと明言している。

2010年8月18日:バグダッド北部Tikritでは午前7時半、裁判所前で 道路の地雷で警備兵2人死亡、民間人3人が負傷した。ここは処刑されたサダム・フセインの出身地。バヅダッド西部では出勤途中の住宅復興省の職員が射殺さ れた。東部では石油省の職員、2名のボディーガード、通行人が道路爆弾で負傷。

2010年8月18日:18日夜(日本時間19日午前)、イラク駐留米軍の最後の戦闘部隊が南部クウェート国境を越え、撤退を完了 したと伝えた。フセイン政権を崩壊させた米軍の「イラクの自由」作戦は、2003年3月20日のイラク攻撃開始以来、計4400人以上の米兵死者を出し、 約7年5カ月で終了した。8月末としていたが、10日以上早まった。オバマ大統領は18日、「イラク戦争の中で画期的な出来事だ。米軍はイラクからの撤退 を続ける」との声明を出した。最大時の2007年に168000人に膨れ上がったイラク駐留米軍は、同大統領が就任した昨年1月には約144000人。今後は5万人規模でイラク治安部隊(約665000人)の支援・訓練に当たり、来年2011年末に完全撤退の予定。

2010年8月24日:8月24日時点でイラク残留米軍は49700人で、この人数は来年夏まで維持される予定。米軍が削減となった直後からアルカーダと見られる爆弾テロがイラク全土で続発し、ある集計では7月の犠牲者は1ヶ月で535人とも言われている。ここ最近は首都バグダッドの中心部の爆弾テロが目立っている。



nappi11 at 10:09│Comments(0)TrackBack(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

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