2009年10月26日:白亜紀と第三紀の境(K-T 境界)におこった大量絶滅に深く関連するとされる衝突構造として、メキシコ・ユカタン半島のチチュルブ(チクシュルーブ、Chicxulub) クレーターcrater➀が知られてきたが、新たにインド半島西海岸のシバ(Shiva)クレーター④も同時期のものであることがわかった。シバクレーターの位置は、6500 万年前に分裂が始まったインドとセイシェル島の結合部にあたり、全体の形は直径は600km×450km の長円形で、深さは12km ある。その形の特徴と放出物の非対称分布からみて、衝突天体は南西から北東方向に斜めに突
入したと考えられる。
インド洋のクレーターはすでに12~13年以上前に確認されているが、メキシコのクレーターと合わせ、その巨大さから、この二つの隕石の衝突が恐竜の絶滅の原因ではないかという学説が改めて出ている。年代が近いと言っても今のところ30万年の開きがあるが、インド洋のものが地球に大規模な異変を起し、これが恐竜絶滅のとどめになったと学説が公表された。
地球には無数のクレーター(隕石孔crater)があるが、主だったものを載せた地図を編集保存。それにしても直系40kmとは、隕石と言うより小さな惑星の規模のものが激突とは、良くぞ地球が割れなかったものだ。どんなに地球の文明が発達しても、この巨大な惑星の衝突は避けられない。
2010年3月5日:恐竜など白亜紀末期の生物大量絶滅は、現在のメキシコ付近への1回の小惑星衝突が原因とする学説を、日本など12カ国の国際チームが世界各地の地層などの最新データを解析し直し、論文を5日の米科学誌「サイエンス」に発表した。その結果、チチュルブ・クレーター形成と大量絶滅の時期は一致▽他の天体が前後に衝突した痕跡はない▽6550万年前ごろは火山活動が活発ではなかったと判明。
クレーター形成による環境変化は、大量絶滅に十分だったとした。 チームによると、衝突した天体は直径10~15キロの小惑星、衝突速度は秒速約20キロ、衝突時のエネルギーは広島型原爆の約10億倍、衝突地点付近の地震の規模は マグニチュード11以上、津波は高さ約300メートルと推定された。チームに参加した後藤和久・東北大助教(地質学)は「チチュルブへの衝突によって生物の大量絶滅が起きたという説が揺らぐことは、もはやないだろう」と話している。 巨大隕石参考資料 National Geographic News この記事は nappi10 が 2009年10月26日 12:14 AM に投稿し、史実 カテゴリーに分類されています。
2016年11月18日:東北大学:
白亜紀末の巨大衝突クレーターの形成過程を解明 英文記事:Chicxulub 'dinosaur crater' investigation begins in earnest
国際深海科学掘削計画(IODP)の第364次研究航海"チチュルブ・クレーター掘削計画"により、地下約618 mの深度から衝突起源の堆積物が、748
mの深度からは基盤岩(花崗岩)が発見されました。今回、この結果と数値計算を組み合わせることにより、チチュルブ・クレーターのピークリングの形成過程
の解明に成功しました。日本からは、日本地球掘削科学コンソーシアムの支援を受けた後藤和久(東北大学)、佐藤峰南(海洋研究開発機構、以下
「JAMSTEC」)、富岡尚敬(JAMSTEC)、山口耕生(東邦大学)の4名が研究に参画しています。今回の発見により、衝突の規模や放出エネルギー等を詳細に計算できるようになります。そして、衝突に伴う環境変動の影響を高い精度で推定できるようになり、恐竜をはじめとする生物の大量絶滅を引き起こすメカニズムの解明につながると期待されます。
2022年10月10日:6600万年前、巨大な小惑星が地球に衝突し、恐竜を含む生物の75%を絶滅に追いやった。この時、高さ1.5キロの巨大津波が発生し、たった48時間で地球上のほぼすべての海岸に到達しただろうことが明らかになった。この事実は、ユカタン半島の「
チクシュルーブ・クレーター」を作り出した小惑星の衝突をシミュレーションし、さらに世界中100か所以上から採取された地質データを分析した結果、明らかになったことだ。それによると、そのとき生じた津波の威力は、地球の裏側にある海盆の堆積物を撹乱・侵食するほどに強力だったそうだ。
6600万年前、恐竜を絶滅させた小惑星の威力:今回の研究はミシガン大学のモリー・レンジ
Molly M. Range氏の修士論文で、『
AGU Advances』(2022年10月4日付)にも掲載されている。6600万年前、現在のメキシコ湾とカリブ海との間にある、
ユカタン半島に衝突した小惑星は、当時地球に存在した動植物の約4分の3を一掃。当時地上を支配していた恐竜は、空を飛ぶもの以外はすべて
絶滅し、現在まで生き残ったのは、恐竜の子孫である鳥だけだ。

隕石の威力は凄まじく、猛烈な火災で動物を焼き殺したり、硫黄を含んだ岩石を粉々にして危険な酸性雨を降らせたり、地球を長期に渡り寒冷化させたりしたことが知られている。衝突で発生した巨大な津波を探るために、幅14キロの小惑星が時速43,500キロ(音速の35倍の速さ)で地球に衝突したと想定して、当時の状況をシミュレーションした。
この分析によると、衝突によって発生した津波の初期エネルギーは、23万人以上の死者を出した2004年12月のスマトラ島沖地震津波のそれの3万倍と膨大なものだった。小惑星が地球に衝突すると、直径100キロのクレーターが生じ、その衝撃で大気中に高密度の塵と煤の雲が巻き上がった。
衝突のわずか2分半後、放出された物質のカーテンが海水を外側へと押し出し、波の高さは一時的に4.5キロにもなって、再び地表へ降り注いだ。10分後、衝突地点から約220キロ離れた湾内を、高さ1.5キロの津波が縦横無尽に駆け巡った。さらに1時間が経過すると、津波はメキシコ湾から離れ北大西洋に進出。
4時間後、津波は「中央アメリカ海路」(当時、北米と南米を隔てていた海路)を抜けて、太平洋にまで到達した。小惑星の衝突から丸一日が経過した頃には、太平洋と大西洋の大部分を横断し、インド洋には東西から津波が押し寄せた。そして48時間後、津波は地球のほとんどの海岸線に到達した。

津波は主に東と北東に広がり、北大西洋へ到達。また中央アメリカ海路を経て、南西に流れ込み、南太平洋にも広がっている。こうした地域では水の流れが速く、時速0.6キロを超えていたと推定されている。これは海底の細かい堆積物を侵食する速度だ。一方、南大西洋・北太平洋・インド洋・現在の地中海など、津波の影響をほとんど受けなかっただろう地域もある。シミュレーションによると、これらの地域の水流は時速0.64キロ以下だった。

さらに、「
チクシュルーブ・クレーター」から12,000キロ以上離れたニュージーランドNew Zealand東部の島々でも、衝突の痕跡が見つかっている。それは「
露頭: outcrop, exposure」と呼ばれる岩石が露出したものだ。これまでこうした露頭は局地的な地殻変動によるものだと考えられてきたが、年代と津波のルートにあるという事実から、小惑星の巨大な波が残したものであることが判明した。レンジ氏は、「これらの堆積物は、衝突による津波の影響を記録したものだと感じています。おそらく、この出来事が世界に与えた大きな影響を確認できるもっとも有力な証拠でしょう」と述べている。
上記の報告に先立ち、英ヘリオット・ワット大学(Heriot-Watt University)はこのほど、西アフリカのギニアGuinea海岸沖に、直径10キロほどのクレーターcrater(Nadir crater)を発見したと発表した。
しかも、このクレーターの年代は、チクシュルーブと同じ白亜紀末の約6600万年であることが判明。
同じタイミングで、もう1発の隕石が地球に衝突していた可能性が浮上した。
この点から、チームは「2つの隕石の間には、非常に深い関係があるのではないか」と考えている。
現時点でチームが挙げているのは、主に2つの仮説で、
1つ目は、2つの隕石が母体となる小惑星から分裂してできた姉妹であり、大きい方がチクシュルーブ:Chicxulub(姉)、小さい方がナディール: Nadir(妹)という説です。
チームはこれを「小さな姉妹仮説(little sister hypothesis)」と呼んでいる。
今回示されたナディールの衝突年代は、完全に正確なものではなく、チクシュルーブとは最大で100万年程度の誤差が考えられると指摘されている。
となると、両者が同じ小惑星の片割れであるとは考えられません。
しかし、小惑星帯から飛来する隕石群であれば、100万年というスパンの中で、隕石が複数回にわたり地球にぶつかることもあり得る。
研究の詳細は、2022年8月17日付で科学雑誌『Science Advances』に掲載されている。参照記事 英文記事