デニー・ロイ博士 もう少し別な見方が必要では?
2009年3月19日、米イースト・ウェスト・センター、シニアフェローのデニー・ロイ博士は東京で「中国の台頭と地域安全保障への影響」と題する講演を行った。中国は平和的な発展を主張しており、世界の脅威にはならないとの見方を示した。20日、環球時報が伝えた。
日本をはじめとする諸国で中国の経済と軍事費の急成長への警戒心が高まっているが、共同通信によると、ロイ博士は「中国は大国となり将来指導力を発揮することを目指しているが、ただし平和的な発展を主張しており世界の脅威にはならない」との見方を示した 。 (過去に 別な場面で博士は、 中国が近年、台湾に照準を定めた弾道ミサイルの数を1100発にまで増やしたことを挙げ、台湾を「米中戦争が起こり得る唯一の場所」と発言している。それから今は相当見方を変えたようだ)
日本では米中が世界を主導することとの関連で、日米同盟の今後に不安がささやかれているが、ロイ博士は中国が国際ルールに従い自己の責任を果たす限り、米国は中国の発展を歓迎すると述べた。また日米同盟の影響力はいくぶんか減少するといえども、日本にとっての不利ではないとも発言している。
ニュースの断片だけで異論を言うのもどうかと思うが、博士の経歴 (主に戦略と防衛の研究)やその他の発言から思う事がある。結論から言うと軍事戦略と防衛の側面からみた、かなり楽観的過ぎる見方ではないか?中国の問題は、この高名な博士が自分で述べているように「中国が国際ルールに従い自己の責任を果たす限り、、、」 の部分である。一番のルール違反は武器輸出だ。すでに国連の意向にも反してアフリカなどへ資源開発の見返りに武器、軍備の輸出を行い、今後は南米への過剰 な武器輸出が懸念されている。直接中国軍が他国と対峙することは無いと想像しても、豊富な中国の軍事援助を後ろ盾に戦争を仕掛ける国が出る可能性は高い。 更に中国の体質的なことも問題があり、それがイタズラに緊張を生み、無意味に相手の軍備強化につながってしまう。これは単にものの言い方を知らない失礼で 乱暴な国だと言う事だ。たとえば台湾に対し、インドに対し、何かあれば「軍事力を使ってでも、、。」という現代にはなじまない威圧的発言をする。中国軍部 首脳が尊大だと言えばそれまでだが、その言動によって相手国に緊張を生み、軍備増強を招いてしまう。自分の国が大国だと認識し、他国に対しては控え目に対 応することを学ぶべきだろう。そのためには中共内部の軍部へのシビリアンコントロール(文民統制、国民主導型軍事管理)をもっと進めなければならづ、その ためには中国での情報の公開、発言の自由、人権が今より数段確保された国にならなければならない。それが今の中共でシステム的に無理ならば、近代世界の形 成に中共の体質全ては容認できず、危険な組織と言わざるをえない。博士、あなたの考えはあまりに近視眼で、楽観的過ぎるのでは無いだろうか?アジアの人権 まで研究した博士が、その点に触れないのは何か意図的なものさえ感じる。一例を上げれば、 チベット亡命政府の発表によると、2008年3月10日から2009年1月31日の間、5,600人以上のチベット人が逮捕され、拘束された。うち、 220人が死亡し、290人が刑罰に処され、1000人が行方不明だという。実数はもっと多いだろうが、こういう、米国ならば当然知っているはずの中共の 闇の部分に目をつぶり、経済的な理由から中国との関係を密にするための中共擁護の論陣を張りに日本に来たのなら、あなたは魂を売った学者ではないのか?